日本語を一切使えない環境で、多くの壁を経験した井上麻衣子さんのバイリンガルストーリー | バイリンガルへの道

日本語を一切使えない環境で、多くの壁を経験した井上麻衣子さんのバイリンガルストーリー

日本語を一切使えない環境で、多くの壁を経験した井上麻衣子さんのバイリンガルストーリー

 

まず自己紹介をお願いします。

私はスペインのバルセロナで生まれ、父の仕事の関係で2回にわたり9年間スペインに住んでいました。
3歳からAmerican School of Barcelonaに在籍し、幼稚園の年中の時に、日本に帰国しました。
日本では、光塩女子学院幼稚園に編入して、初等科へ入学したのですが、小学4年の時にスペインに2度目の駐在をすることになります。
スペインでの学校は、1回目のときと同じAmerican School of Barcelonaの4年生に編入しました。中学2年生の2学期からもう一度日本に帰国することになり、公立の地元の中学校へ編入。その後国際基督教大学高校からそのまま国際基督教大学へ進学しました。
その他の留学経験としては、大学2年生の夏に、一ヶ月だけYale大学のサマーセッションに参加しました。Film Studiesという映画に関する学部の授業を取り、初めての寮生活も体験しました。

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どんな留学生活でしたか?カルチャーショックは?

2回目にスペインへ住んだときは、英語は少し話せたものの、
英語を書くことはほとんどできなかったです。
さらに、スペイン語は完全に知識がゼロでした。

先生の英語が速すぎて、初めの授業はほとんど理解する事ができず
とても苦労しました。

また、幼稚園の頃に同じアメリカンスクールに通っていたものの、
日本に一時帰国したこともあり、あまり覚えていなかったので、
異なるカルチャーに対応できませんでした。

日本の女子校から転校した私は、まず学校へ私服で行って良いこと、
休み時間や授業でディスカッションのクラスの時は、

・みんな床に座って食べたり話したりする事が普通なこと

・生徒の意見を多く求められること

・周りの外国人の生徒もとても積極的なこと

こういった日本とスペインの違いにショックの連続でした。

また、スペインでは、

・挨拶は両頬にキスをすること

・日本よりもスキンシップが多いこと

・シエスタと言ってお昼の13時〜16時頃までは
みんなお昼寝やブレイクを取るのが当たり前で、お店なども全て閉まってしまうこと

など、文化的にも本当に様々な事がカルチャーショックでした。

しかし、最終的には英語とスペイン語を身につける事ができ、
一度仲間になったら

「アミーゴだ(友達)、ファミリアだ(家族)」

と言って人情深く接してくれるスペイン人社会になじむ事ができて、
たくさんの素敵な友達ができ今でも親しい交流が続いている事は一生の宝物です。

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現地での一番の思い出や、エピソードは?

私が通っていたアメリカンスクールでは、
小学校では毎学期ごとに、その学期で一番頑張った生徒を、
全体集会で学年から一人ずつ校長が表彰するというシステムがありました。

小学4年生で転校し、初めはとても苦労していたものの、
粘り強く勉強した結果、転校した学期とその次の学期と2回連続で
その賞をもらう事ができました!

理由を聞いたところ、
1学期目は、学校で唯一の日本人で言葉が完璧でないにも関わらず、
授業に頑張って取り組み、周りの友達ともすぐに仲良くなって
明るく頑張っていたからという事でした。

私にとっては初めて努力が実った実感を感じる事ができ、
なにより全体集会で全生徒の前でそのように評価してもらえた事が
心から嬉しかった瞬間でした!

転校してすぐは、スペイン人の女の子のグループから仲間はずれにされたり、
幼いながらにも色々葛藤がありましたが、
それをきっかけにその友達も努力を認めてくれたのか、
仲間として認めてくれるようになり、転校して半年程でなじむ事ができました。

人生で初めて日本語を一切使えない環境に放り込まれ、
外国人とのコミュニケーションの難しさの壁にぶちあたり、
カルチャーショックを受けたりしました。

最終的には、評価してもらえたことで
自分に自信を持つ事ができるきっかけとなったのです。

英語を一番勉強した時代はいつですか?どんな努力で克服しましたか?

一番勉強したのは、小学4年生の時ですね。

とにかく英語の授業についていくことに加えて、
スペイン語もゼロから学ばなくてはならず、
同時に2つの言語を習得しなくてはいけなかったので、
本当に毎日宿題を一生懸命取り組む日々でした。

特に、英語に関しては、ちょうど筆記体を習う時期でもあったので、
スピーキングや文法のみならず筆記体の練習もたくさんやりました。

スピーキングに関しては、毎日学校で8時間ほど
とにかくシャワーの様にネイティブの英語だけを聞いていたので、
その環境にいる事で自然とフレーズなどを覚えていったと思います。

分からない単語は家で辞典で引き、
ひたすら新しいボキャブラリーをインプットしていきました。

そして、journalといってその日の出来事を
ノートに1ページ書くと言うアクティビティも宿題で出ていたりして、
とにかくひたすら英語で書くという作業をしていました。

文法は間違えたら先生が提出した後に直してくれるので、
自分が思いついた事、起こった出来事などをとにかく文章にするように努力し、
英語で考え、英語でアウトプットするという事をひたすら繰り返していました。

時にはわからなすぎてイライラしてしまう事もありましたが、
母も宿題に毎日付き合ってくれて、そばで支えてくれました。

初めは日本語で覚えていた単語も、
知識がついていくうちにだんだん全てを英語で考える思考回路が身につきました。

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留学先で受けた英語の授業で印象的なものはありますか?

小学生4年生の時の授業で、毎週金曜日の午後1時間は、
好きな事について話すディスカッションの授業がありました。

週末前の最後の平日で、毎週そのフリートークタイムがある事で、
生徒全員が金曜日をとても楽しみにしていました。

内容としては、先生が椅子に座り、生徒は円になって床に座り、
その週に起こった事、楽しかった事、みんなとシェアしたいこと、
あるいは何か抱えている問題についてなど、様々な事について話すというものです。

これはスピーキングの練習だけでなく、自ら意見を発言したり、
積極的になるいい練習になったと思っています。

私はもともと引っ込み思案でシャイな性格だったので、
自分からなかなか言えない事も、

「みんなも発言しているから自分も言ってみようかな」

という風に思えたり、先生が名指しで質問をしてくれる事で
発言できるいいきっかけとなりました。

このような授業スタイルは日本にはほとんどないと思いますが、
何かに対して自分の意見を考えて発言したり、
他人の意見に対してコメントする事によって、
客観的・良い意味で批判的な見方も養えるとてもいい授業だったと思っています。

また、中学2年生では、Elective Classと言って、
3つの授業の選択肢の中から1つを選択して
決まった曜日に受けるシステムが導入され、
drama class, photography class, art classという、
芸術関係の教養にも触れられる機会がありました。

私はphotography classを取り、
一眼レフカメラで写真を撮る方法を学び、
様々な表現について学ぶ事ができ、とても楽しかったです。

他の分野の知識にも触れさせようというカリキュラムは、
生徒にとって刺激的で、とてもいいなと思いました。

リラックスしながら楽しく受けれる授業もあるからこそ、
他の勉強量の多い授業も楽しめたのではないかなと思います。

留学経験をした上で日本とアメリカの教育の違いは何だと思いますか?

(私はアメリカに住んでいたわけではないですが)アメリカの教育は、
やはりとにかく個人の意見を尊重し、それを周りともシェアしたり、
発言を求めたり、自分の意見を持つ大切さをとても強く教えるような教育ではないかと思います。

アメリカの授業では発言を多く求めたり、
ディスカッションのクラスがあったりすると思います。

一方、日本の教育では、先生が前に立ち、生徒は机に向かって話を聞く、
という一環したスタイルで、授業の中であまり他の人と意見交換をしたり、
お互いの意見についてコメントを交わしたりという機会が少なすぎると思います。

日本は文化的にも「協調」という概念を美徳とするところもあると思うので、
それも教育に影響していると思いますが、

「意見が違ってもいい、色んな考え方について考えるべきだ」

といった教育の特徴がアメリカにはあると思います。

また、日本は規律を厳しく重んじる学校も多いかと思いますが、
私が通ったアメリカンスクールは私立でしたが、
勉強は頑張らなくてはいけないが、その他はのびのびと自由でいい、
というモットーでした。

だから私服でもいい、授業中飲み物を飲んでもいい、校歌なども特にない、
とにかくそれぞれが自由に楽しみ、幅広い分野で学ばせる、
という事を尊重していた気がします。

そのような点で、アメリカは個人個人を尊重し、
日本の教育はやはりどちらかというと集団意識を高めようとする
教育なのではないかと個人的に感じました。

最後に、おすすめの洋書を教えてください。

小学生の時は、Barbara Park著のJunie B.Jonesシリーズが内容が楽しくて大好きでした。
BP1くらいのレベルの本で、6歳の女の子目線で書いた本なので、
表現なども比較的簡単で、英語を習い始める頃には少しチャレンジングかもしれませんが、
台詞などから様々な表現を覚える事ができていいと思います。

また、500ページほどでかなり難しいですが
個人的に好きなのはMarkus Zusak著のThe Book Thiefという本です。

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