知らないと損!国際バカロレア(IB)とは?超名門大学への入学資格になるって本当? | バイリンガルへの道

知らないと損!国際バカロレア(IB)とは?超名門大学への入学資格になるって本当?

知らないと損!国際バカロレア(IB)とは?超名門大学への入学資格になるって本当?

英語に力を入れている学校のなかには、国際バカロレア(IB)の認定校があります。国際バカロレアの資格を取得したい場合は認定校で学ぶ必要があるため、早めの準備が必要になります。そこで、この記事では国際バカロレアについてご説明します。

また、国際バカロレアの中でもオススメしたいディプロプログラムについての解説や、実体験による国際バカロレアの教育によって得られるスキルなどについてまとめていきます。

国際バカロレアの歴史と概要

国際バカロレア(International Baccalaureate、通称IB)は1968年、スイスのジュネーブにおいて設立されたIB機構が提供する国際的なプログラムであり、当初はスイスのインターナショナル・スクールにおいてのみ導入されていた。文部科学省によると、「チャレンジに満ちた総合的な教育プログラムとして、世界の複雑さを理解して、そのことに対処できる生徒を育成し、生徒に対し、未来へ責任ある行動をとるための態度とスキルを身に付けさせるとともに、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を与え、大学進学へのルートを確保することを目的」としている。現在、世界の4500校以上でディプロマプログラムが実施され、1800以上の大学でIBを使用した入学審査システムが導入されており、今後も導入校は増える傾向にある。

国際バカロレアの目的と活動

国際バカロレアとは、ジュネーブに本部を置く国際バカロレア機構が提供する教育プログラムで、1968年に設置されました。国際バカロレアは世界で通用する大学入学資格であり、大学進学への道を付与することを目的の一つとしています。
国際バカロレア機構は、認定校の共通カリキュラム作成や、国際バカロレア試験・資格授与などを行っています。国際バカロレアが定めるカリキュラムを履修して、試験に合格すると資格を取得できる仕組みになっています。

国際バカロレアの目的は、「異文化理解と尊重の精神を通じて、より良いより平和な世界の実現のために貢献する、探究心、知識、思いやりのある若者を育てること」なので、グローバルに活躍できる人材を育てることができるプログラムといえます。

国際バカロレアの内容

国際バカロレアは、プライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP)、ミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)、ディプロマ・プログラム(DP)、キャリア関連プログラム(CP)の4種類があります。
国際バカロレアは考えて発信し、自国文化と異文化を理解してアイデンティティを確立することを重視していて、英語力に加え、リーダーシップ、企画構想力、感性を兼ね備えた人材を育てるのに適したプログラムといえます。

年齢別に4種類のプログラムがある

国際バカロレアのプログラムは次の4種類で、それぞれ対象年齢や科目が定められています。

プログラム 年齢 科目 学校数
プライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP) 3~12歳 言語、社会、算数、芸術、理科、体育(身体・人格・社会性の発達)の6科目 1130校
ミドル・イヤーズ・プログラム(MYP) 11~16歳 言語A、言語B、人文科学、理科、数学、芸術、体育、テクノロジーの8科目を5年間で学び、学習と社会のつながりを学ぶ 1061校
ディプロマ・プログラム(DP) 16~19歳 6グループから6科目+コア3 2470校
キャリア関連プログラム(CP) 16~19歳 ①6グループ(DPと同じ)のうちから2科目
②コア
*学習方法(90時間以上)
批判的・倫理的思考、異文化理解、コミュニケーションスキルに焦点を当てた学習
*コミュニティと奉仕活動(約50時間)
*外国語学習(50時間以上)
*“振り返り”のプロジェクト(約40時間)
キャリア教育に関連した個人研究
③キャリア関連学習
63校

DPは1968年に最も早く始められ、PYPとMYPは1990年代から始まりました。PYPとMYPはどの言語でも実施できますが、DPとCPは実施できる言語が定められ、英語や日本語で実施されます。

世界各国で採用されている資格

国際バカロレアは国際的な基準と資格であり、世界で同じ水準の教育を受けられることから、関心が高まっています。
地域別に導入校数を見ると、アメリカ、オーストラリア、イギリス、インド、スペインが多く、2014年3月現在のDP導入学校数は、順に801校、152校、149校、94校、72校となっていて、広い地域で普及しています。

また、日本の企業においても海外との取引が増え、英語力やディスカッション・プレゼンテーションのスキルをもち、国際問題について理解する人材のニーズが高まっています。そうした流れを受け、教育においても国際的な基準が求められているといえます。

フランスとのバカロレアとは関係ない

国際バカロレアに関する情報を検索していると、フランスのバカロレアの情報を目にすることがあるでしょう。ですが、フランスのバカロレアは、フランスの大学に進学するために必ず必要な資格で、国際バカロレアとは関係ない制度なのでご注意ください。

国際バカロレアの「ディプロマ・プログラム」

IB教育のうち、とくに「ディプロマプログラム」が着目されています。ここでは、IBのディプロマプログラムについて解説していきます。

国際バカロレアでは6つの科目群と3つの必修要件を用いて成績が評価される

ディプロマプログラム(DP)の概要

まず、IBのディプロマプログラム(DP)とは何でしょうか?DPとは、16歳から19歳の大学入学前の生徒を対象としたIBの2年間プログラムです。試験に合格すると、国際的な大学入学資格である「国際バカロレア資格」を取得できます。ディプロマ・プログラムは、原則として英語、フランス語、スペイン語のいずれかで行いますが、一部の科目については、2016年4月以降に日本語でも実施される予定です。

ディプロマ・プログラム(Diploma Program)は海外大学への入学資格であり、国内大学においても入試の受験資格などとして採用されていて、政府は2015年9月に「国際バカロレア認定のための手引き」を作成しました。そのため、特にディプロマ・プログラムに対する関心が高まり、認定校が増えると思われます。

ディプロマプログラム(DP)で学べる内容

DPではどのようなことを学べるのでしょうか?まず、<言語と文学・言語の習得・個人と社会・理科・数学・芸術>という6つのグループ(教科)があります。各分野から1科目ずつ(もしくは芸術の代わりに他の5グループからもう1科目)選ぶことができるので、合計6科目の授業を受けます。二年間これらを幅広く学び、最後に各科目で試験を受けます。この試験は大学レベルの問題も出され、自分の意見が求められるような筆記試験(エッセイ形式)が多く出されます。

ディプロマ・プログラムの科目

ディプロマ・プログラムでは、6グループからなる学際的な科目(下表)に加え、コアと呼ばれる3つの必須要件を履修します。

グループ 科目例
言語と文学(母語) 言語A:文学、言語A:言語と文学、文学と演劇
言語習得(外国語) 言語B、初級語学、古典語学
個人と社会 ビジネス、経済 、地理 、グローバル政治、歴史 、心理学、環境システム社会、情報テクノロジーとグローバル社会、哲学、社会・文化人類学、世界の宗教
理科 生物 、化学 、物理 、デザインテクノロジー、環境システムと社会、コンピュータ科学、スポーツ・運動・健康科学
数学 数学スタディーズ 、数学SL 、数学HL 、数学FHL
芸術 音楽 、美術 、演劇 、ダンス、フィルム、文学と演劇

6グループから1科目ずつ合計2年間で履修しますが、芸術グループの代わりに他のグループから履修しても構いません。3~4科目を上級レベル(各240時間)、その他を標準レベル(各150時間)で履修します。

座学だけではない!研究論文や課外活動も要件に

上記の6科目に加え、卒業要件には三つの「コア」と呼ばれる<①TOK ②課題論文 ③CAS>が含まれています。

コア 内容
課題論文(EE:Extended Essay) 履修科目に関連した個人研究を行い、4000語(日本語の場合は8000字)の論文を執筆します。
知の理論(TOK:Theory of Knowledge) 100時間以上学習し、知識の本質について考え、主張を分析し、知識の構築に関する問いを探究することにより、自分のものの見方を自覚し、批判的思考力を養います。
創造性・活動・奉仕(CAS:Creativity/Action/Service) 芸術、身体的活動、交流活動など、体験的な学習に150時間以上取り組みます。教室以外の広い社会で経験を積み、様々な人と共同作業をすることにより、協調性や思いやりの大切さを学びます。

TOK(Theory of Knowledge)の日本語名は「知の理論」。授業、プレゼンテーション、そしてエッセイなどを通じて物事を多角的に捉えるクリティカル・シンキング(批判的思考)を身につけます。知識はどのように習得され、私たちがなにを「知」としてどのように判断しているか等、知識を得る過程について考える科目です。
課題論文では、自ら決めた研究課題についてリサーチし、英語で4000字(日本語で8000字)の論文にまとめて提出します。大学で出されるエッセイ課題でもこの半分の文字数だったりするので、高校生がこのような論文を書くと考えるとかなり負荷の高いことだと考えられます。
CASとは Creativity (創造性)、Action (身体的活動)、Service(奉仕)の3つの要素における活動を指しています。生徒はこれらの分野で課外活動をし、その時間数がCAS単位として認められます。

つまり、DPはアカデミックな学習と並行し、様々な課外活動も積極的に行うことを促してくれる教育プログラムになっているのです。

日本語ディプロマ・プログラム(DP)の内容

日本語DPの対象は、経済、歴史、生物、化学、数学、物理、課題論文、知の理論、創造性・活動・奉仕などです。日本語DPでも、2科目は英語で履修する必要があり、そのうちの1科目に言語習得(外国語)を含めることができます。
「日本語A:文学」と「日本語A:言語と文学」については、国際バカロレア機構が指定する「指定作家リストと指定翻訳作品リストの中から使用する教材を選択します。

ディプロマ・プログラムの試験

高校3年生の5月または11月に世界共通の試験が実施され、日本では11月が一般的です。試験は主に論述形式で出題されます。また、課題論文と知の理論は、A~EとNの6段階で評価されます。
6グループから選択した科目(各7点)に、必須要件の3科目(各1点)を加えた45点が満点で、24点以上をとるとディプロマの資格を取得できます。

ディプロマ・プログラムの評価は、7~8割が外部評価によって、2~3割が内部評価により行われます。外部評価は、世界で共通の一斉試験を実施し、5000人以上の外部評価員が行います。内部評価についても、課題と結果を外部評価員に提出し、必要に応じて調整することによって、評価の客観性と正確性を確保しています。
ディプロマ・プログラムの平均点は毎年30点前後で、取得率は毎年8割程度です。

ディプロマ・プログラムの費用

高校3年生のときに実施される試験の登録日は、1人あたり184SGD(シンガポールドル)です。そして受験料は、6グループから選択した科目については1科目あたり126SGD、課題論文97SGD、知の理論、創造性・活動・奉仕11SGDです。
6グループから6科目履修すると、合計1097SGDかかり、2015年10月20日現在、1シンガポールドルは約80円なので、受験料の合計は約9万4595円です。
ディプロマ・プログラムの教材は学校が選定しているので、教材費は学校によって異なります。

ポイント
ディプロマ・プログラムの自習や自主研究に時間がかかるため、履修していない学生より他の勉強をする時間が減るようです。DPの学習と従来どおりの受験勉強のどちらに時間をかけるかを検討してみてください。

年間受験者は増加している

2014年のディプロマ受験者は7万4290人で、取得者は5万9628人でした。そのうち日本人受験者は644人で、ディプロマ取得者は582人でした。2006年にはディプロマの受験者が3万5413人で取得者が2万8661人だったので、受験者と取得者は2倍ほどに増え、普及していることが分かります。
2015年8月10日では、国際バカロレア認定校は4267校あります。アメリカ合衆国では、1677校がIBプログラムを提供し、プログラム別に見ると、PY487校、MY598校、DP866校、CP72校となります。また、イギリスでは、132校がIB認定校で、126校がDPを実施しています。

日本でのIB導入状況

国際バカロレアの教育プログラムは、2015年10月1日現在、140ヶ国・地域以上の4344校で実施され、日本国内では35校で実施されています。そのうち1条校(学校教育法1条に規定されている学校)の国際バカロレア認定校は10数校で、DPのみ導入している学校が多い傾向にあります。MYPも取り入れている1条校は、玉川学園中学部・高等部(東京都)、東京学芸大学附属国際中等教育学校、加藤学園暁秀高等学校・中学校(静岡県)です。

1条校以外の認定校の多くは、PYPも導入しています。PYP、MYP、DPの3つとも導入している学校は、カナディアンアカデミー、ケイ・インターナショナルスクール東京、大阪インターナショナルスクール、横浜インターナショナルスクールです。

日本国内の国際バカロレア認定校のうち、日本語のプログラムを実施しているのは、東京学芸大学附属国際中等教育学校、関西国際学園、加藤学園暁秀高等学校・中学校、福岡インターナショナルスクール、沖縄インターナショナルスクールです。

2013年6月14日の閣議決定で、政府は2018年までに国際バカロレア認定校を200校に増やすことを目標として掲げました。そして、政府は2015年の9月に、高校や自治体向けの手引書を作成し、IB認定までの流れなどを解説しています。

国際バカロレアの認定校となると、教育水準を高め、将来グローバルに活躍したい生徒の関心が高まります。また、プログラムを提供すると、課題解決型の授業を多く行うことになるため、認定校となることは授業改革の目標にもなります。このような理由で、国際バカロレア認定校を目指す学校が増えると考えられます。

海外大学に進学させたいなら、国際バカロレアを受けるべき

単刀直入に言うと、子供を海外の大学へ進学させたいのなら、一流の社会人に育てたいのなら、国際バカロレアを受けさせるべきです。

 上の大胆とも思われるコメントには、れっきとした根拠があります。それは、国際バカロレアが価値を置いている10個の人間性というものが、一流の社会人に必要となる素質と同じであるからです。言い換えれば、国際バカロレアを修了することでこれらの素質が身につくようにカリキュラムを組んでいるので、一流の社会人を育成する準備段階として国際バカロレアの価値があると言えます。

具体的に国際バカロレアが価値を置く人間性とは以下の10項目であります。

  • 学習し続ける人
  • 知識のある人
  • 考える人
  • コミュニケーションができる人
  • 信念を持つ人
  • 様々な価値観を受け止められる人
  • 思いやりのある人
  • 挑戦する人
  • 人生のバランスが取れている人
  • 振り返りができる人

これらは世界どこへ行っても通用する素質であり、そのことを理解して50年前から理想像として掲げてきた国際バカロレアは素晴らしいディプロマだと言わざるを得ません。

キャタルのスタッフがイギリスに住んでいた時に国際バカロレアに出会い、国際的なディプロマであるから、海外の大学への進学にも役立つとのことで、履修を決めたそうです。その選択は自信を持って正解だったと言えるし、他人にも自信を持って受けることを勧められると言っていました。
また、子どもを海外の大学へ進学させたいと考えている親もいると思います。

探求、考える、コミュニケーションが重視される

現在、日本の学校教育・受験において考える力が重視される傾向にあり、思考、コミュニケーション、プレゼンテーションなどの力をつけるための授業が増えています。

国際バカロレアの学習者像には、「探究する人」、「考える人」、「コミュニケーションができる人」などが含まれていて、各プログラムでそうした力を育成するカリキュラムを実施します。
たとえば、ディプロマ・プログラムの指導と学習は、生徒が 探究する人・考える人として関わるようにするものでなければなりません。また、国際バカロレアの試験問題は、「~について論ぜよ」といった設問が多く、考える力を評価する仕組みになっています。

日本の大学入試における導入が増えている

2000年度には推薦入試が31.7%で、AO入試が1.4%であったものが、2014年度には推薦入試で34.4%、AO入試が8.6%と増加しています。東京大学や京都大学も、平成28年度入試からAO入試・推薦入試を実施する予定です。
さらに、2020年にセンター試験が廃止されて新しい学力評価テストが導入され、大学の個別試験では小論文、面接、記述式試験など、思考力や主体性を評価する仕組みになります。

そうした影響もあり、日本の大学入試において、国際バカロレアの資格を出願要件とする選抜方法や、国際バカロレアのスコアを合否判定に考慮する選抜方法が増えています。
たとえば、2015年春から、岡山大学や筑波大学がIB資格取得者を対象とする入試を実施しました。さらに、鹿児島大学が2016年春から、法文学部情報経済学科と教育学部を除き、IB資格の取得者限定入試を実施する予定です。そして、東京大学の教養学部と法学部では、2016年度の推薦入試から、推薦書類の一例としてIB資格が盛り込まれました。

この他、慶応義塾大学、早稲田大学、上智大学、大阪大学、国際基督教大学、東京外国語大学、横浜市立大学などが国際バカロレアを入試に取り入れています。
そして、今後導入を予定している大学は、他に東京医科歯科大学、東京工業大学、北海道大学、東北大学、千葉大学、明治大学、法政大学、お茶の水女子大学、名古屋大学、広島大学、九州大学などです。

海外大学の入試で広く活用されている

国際バカロレア資格は、有名な海外大学で入試の基準として採用されているほか、大学で単位認定される科目があることや、奨学金をもらいやすくなることもあります。ハーバード大学、コロンビア大学、カリフォルニア大学ロサンゼルス校では、HLで一定以上のスコアを修めていれば、単位を認定される制度があります。このようにして早く卒業できることもあります。

海外大学の入試で有利になるIBスコアは、学部やコースによって様々ですが、大学ランキング25位以上の大学ではスコア38以上が目安になり、42以上が望ましいとされています。
ハーバード大学やペンシルバニア州立大学では、国際バカロレアやアドバンストプレイスメントといった大学進学予備プログラムの習得を推奨しています。そして、ボストン大学やブラウン大学では、大学進学予備プログラムの成績が最重要とされています。

DP取得者は海外難関大学への進学率が高い

入試におけるIBスコア目安は、ケンブリッジ(Cambridge)大学40~42点で、オックスフォード(Oxford)大学38~40点、キングス・カレッジ・ロンドン36~38点と言われています。
ガーディアン大学ガイド2011によると、イギリスにおけるIB取得者の進学先はトップ20大学への進学割合が44.2%と、比較対象群の2倍以上という結果でした。

また、2011年の調査では、DP取得者の米国アイビー・リーグ合格率は、全体の合格率より3~13%高いという結果でした。DP取得者の合格率(括弧内は全体 の合格率)は、ハーバード大学10%(7%)、ブラウン大学18%(9%)、コーネル大学31%(18%)となっています。

ポイント
以上のように、国際バカロレアは、国内外での大学で評価され、学習過程において考える力をつけることができます。特に海外大学への進学や推薦入試・AO入試を視野に入れている方は、ディプロマ・プログラムに挑戦してみてみましょう。

実体験!国際バカロレア(IB)の授業内容を紹介

これまでの記事にて国際バカロレア(IB)そしてそのディプロマプログラム(DP)についてご説明しました。では、実際に国際バカロレアの教育を受ける生徒はどのように成長するのでしょうか?
中学〜高校時代に国際バカロレアの教育を英語で受けた、キャタルのスタッフから聞いた話をご紹介します。

突然ですが、次のテレビコマーシャルを見てください。IBの英語の授業で扱った資料の一つだそうです。

これは、2011年に公開された日産リーフのコマーシャルです。これを見て、あなたはどういう感想を抱きましたか?おそらく「ドラマチックなCMだ」とか「印象に残るな」などと思ったのではないでしょうか。これらの感想は間違っていないし、このCMをみるほとんどの人がそう思うでしょう。
しかし、これではIBの授業では不十分なのです。では、何が足りないのでしょうか?
IBでは、ひたすら「なんで?どのように?」と問い続ける必要があります。つまり、深く分析していく力が問われるのです。

例を挙げましょう。前述の2つの感想であれば、次のように書き換えられます。

「このCMはユーモアと誇張という二つの手法を用いている。CMが誇張表現の連続で構成されており、電子機器が全てガスで動くという現実ではあり得ない、幾分ユーモラスな状況を描くことでCMにドラマ性を与えている。同時に、日常生活の様々なシーンを映し出すことにより、視聴者が近親感を覚え、またその状況に一種の恐怖を覚えやすくなるので、このCMを印象に残りやすくすることに成功している。」

即興で作った文なので、あまりいい評論とは言えませんが、それでもだいぶ具体的になりましたね。そんなのなんとなく作れるよ、という人もいると思いますが、なんとなくではダメなのです。自分の意見に理由を付加し、例を使って論理的に説明できなくてはいけません。

深く分析していく力とは?

最初は難しいし、面倒な作業かもしれませんが、一度こう言う考え方を覚えることで、広告の見方が変わるし、「なんでそういう印象を受けるのか」という本質的な部分まで考えることができるようになります。このような、より深くまで踏み入った分析方法を先生やクラスメイトとのディスカッションで学び、極めていく。その過程で、考える力や違う価値観を受け入れる力などを養っていくのです。また、考えた内容をプレゼンで発表することにもなるので、度胸やプレゼン力が養われることにもなります。

もちろん、こういった応用的な英語の授業だけではなく、日本の国語の授業のように名著を読んで分析する、といったような授業も行われます。例えば、アーネスト・ヘミングウェイの「老人と海」という本がありますが、内容はキューバの老漁師が漁に出てカジキを釣り、帰ってくるまでにカジキをアオザメに食べられてしまう、という奇妙な話です。
しかし、ヘミングウェイの生きた時代を踏まえて細かく分析してみると、彼が伝えたかったメッセージがいろんな形で描写されており、非常に興味深い内容となっています。
このように、読解と分析を繰り返すことで理解が深まったり、新たな気づきがあったりするのです。また、最初読んだ時にはどういう意味があるのかわからなかった部分があったとしても、ディスカッションを通してああでもない、こうでもないと議論しているうちにふと理解できたりもする。
国際バカロレア(IB)に出会う前は、ディスカッションは互いの意見を否定するものだというネガティブなイメージを持っていたが、IBを通して、ディスカッションとは様々な意見をぶつけあって一つの結論にたどり着く、とても生産性の高いものなのだと認識を改めることができたそうです。

日本の通常カリキュラムとの大きな違い

一般的にIBの授業カリキュラムが日本の通常カリキュラムと大幅に異なるのが、「個性」と「積極性」が求められる、という点に総括されます。というのも、IBの授業では多くの授業で上に挙げたようなディスカッションがメインとなってくるからです。教授が板書した内容を学生がただひたすら書き写すという一方通行な授業ではなく、「なぜこの説が正しいのか」、「これに関してどう思うか」などと学生に意見を求め、発言を促す形式の授業が行われます。
すなわち、両方向の意見や知識の交換となるわけです。そのため、ディスカッションへの積極的な参加率は評価基準の一つとなってくるし、参加することで批判的な思考方法や物事の本質を考えるといったような、日本の義務教育では簡単に身に付かない貴重なスキルを身につけることができるといった利点もあります。

日本の高等教育とはだいぶ異なっているのが、おわかり頂けたでしょうか。ただし、難易度が日本に比べて大幅に上がっているというわけではなく、授業に対する意識やアプローチの仕方を変えるだけで十分に対応していけるでしょう。

国際バカロレア教育によって得られる3つのスキル

国際バカロレアの教育によって得られたものは多々あるそうですが、ここでは大きく3つのスキルに分けてご紹介していきましょう。

論述力ーエッセイを通じて論理的に意見を組み立てられるー

まず、国際バカロレアの教育では頻繁にエッセイの課題が出されます。エッセイとは、ある議題に対して自分の意見を論述するライティング課題です。毎週のように、どの科目も必ずエッセイの期日が決められていたので、かなりの頻度で書きます。さらに、エッセイは一度提出して終わりというわけにはいかず、毎回添削され、最終期日まで何度も提出し直していました。
このように、何度も書き直すことによって、正しい文法や表現はもちろん、より論理的な構成の仕方や意見の正当性を先生に問われるので、自分の主張そして理解度を深めることができます

キャタルスタッフの実体験

私が特に覚えているのは、歴史(History)の授業で出されたエッセイの課題です。
歴史の授業で出されたエッセイ課題では、自分の主張を述べ、それを裏付ける根拠と考えを結びつける因果関係(cause & effect) を整理しました。エッセイを考える際、まずはフローチャートを描いて構成をまとめてから書き始めていました。よって、歴史の授業で学んだ年号や登場人物などを単に暗記するのではなく、学んだ情報を自分で整理し、どのように主張へとつなげるかが主な勉強法でした。

ディスカッション力ー意見の正当性を主張し、反論するー

エッセイに加え、授業では必ずディスカッションの時間が設けられます。少人数のクラス(10〜15名程度)では、グループに分かれて話し合い、意見交換の結果をまとめ、最後に全員の前で発表します。その授業の科目に沿って出される議題も様々です。

キャタルスタッフの実体験

私がディスカッションで印象的だった授業は Theory Of Knowledge(知の理論)です。この授業はディプロマ・プログラムの生徒に必須の授業ですが、「知」について考えていく授業であり、様々な議題についてディスカッションする形式で構成されていました。とても個性的なクラスメイトが多かったので、かなり奇抜な考えもあり、毎回活発な議論を交わしました。
先生も上手にファシリテーションしてくれたため、議論が炎上することもなく、もし同じような意見が出てしまった場合は「では、こういう場合はどう?」というように、別の視点を提供してくれました。このような多くのディスカッションを通じて、主張の正当性を議論し、論理的に反論する力が鍛えられました。

クリティカル・シンキングー物事を多角的に考え、自分の軸となる価値観を築き上げるー

国際バカロレアの教育で多々出されるエッセイ課題やディスカッションの機会を通じて、最終的にクリティカル・シンキングが身につきます。クリティカル・シンキングとは、物事を多角的に捉え、情報を鵜呑みにしない思考力です。例えばエッセイを書く時には、自分とは異なる意見を持った人が読むことも想定しなければなりません。また、ディスカッションでは、自分が反論される時、どのようにして自分の主張を説明するのかを考えなければなりません。

キャタルスタッフの実体験

今となっては、例えば新聞記事を読んだりニュースを見たときは、必ずその情報源を確認して情報の正当性を判断したり、記事を読み比べながら事実確認をしたりするなど、一つの物の見方に固執しないようにしています。このアプローチは、国際バカロレアで受けた教育のおかげだと感じます。

とにかくハードだけど、充実した教育プログラム

国際バカロレアの教育プログラムでは、課題も非常に多く、ほとんどが自分の意見を述べる必要のあるもので、常に「考えさせられている」という感覚になるようです。時には明け方まで勉強をして、わずかな睡眠時間で登校した日もあったとか…!

最後に、スタッフからのメッセージをどうぞ。

この教育があったからこそ、現在の自分も知的好奇心を探求し続け、様々な社会問題に対して自分の意見を考えるようになりました。すべて国際バカロレアのおかげといっても過言ではありません。これから日本の多くの学校で国際バカロレアが取り入れられるようになります。ハードな教育プログラムですが、ぜひ挑戦してみてください。

世界共通の大学入試資格 「国際バカロレア教育」が日本の学校教育を変える世界共通の大学入試資格 「国際バカロレア教育」が日本の学校教育を変える

参照:
IBを審査システムに取り入れている海外の大学リスト
国際バカロレア日本アドバイザリー委員会 報告書 参考資料集
国際バカロレア認定のための手引き
Find an IB World School