ギフテッド教育を受けた早稲田大・高橋さんが語る、型にはまらない自分の才能の伸ばし方 | バイリンガルへの道

ギフテッド教育を受けた早稲田大・高橋さんが語る、型にはまらない自分の才能の伸ばし方

ギフテッド教育を受けた 早稲田大・高橋さんが語る、自分の才能の伸ばし方

アメリカのCultural Paradeにて。それぞれの民族衣装を身につけパレードに参加。緑の浴衣が高橋さん

アメリカのCultural Paradeにて。それぞれの民族衣装を身につけパレードに参加。緑の浴衣が高橋さん

高橋さんの海外歴と学校歴

0歳〜4歳 日本
4歳〜12歳 アメリカ ワシントン州バンクーバー市
12歳〜18歳 日本
18歳〜 早稲田大学国際教養学部(1年間アメリカのGeorge Washington University に留学)

英語の所持資格

英検1級・TOEFL iBT 104点・TOEIC 990点

最初は全く英語ができず、トイレにも行けなかった

ー最初にアメリカに行った時のことを教えて下さい。

元々、私はアメリカに行くことを親から言われてなかったので、いきなりアメリカにいたという感じでした。初めてデイケアに行って、最初に感じたことが、人の見た目が違うということでした。話しても通じなかったので、最初はトイレに行きたくても行けなくて、泣いていました。

一つ覚えているのが、家でお母さんが大きな段ボールを使って、例えば「トイレ行きたい」「痛い」「楽しい」などの短い表現を英語と日本語でボードに書いてくれて。それが部屋に貼ってあったのは覚えています。

ーすごくクリエイティブなお母様ですね。では、アメリカではどのような教育を受けましたか?

小学校2年生の時、先生の推薦で「ギフテッド・クラス」に入りました。そこでは自分の伸ばしたい力をとことん伸ばしてくれる、各自の才能を伸ばしてくれる教育でした。日本ではこういう教育はあまりないと思います。みんな基本同じことをしなくてはいけない。でも、アメリカの教育は個人を尊重してくれるんだなと感じました。

アメリカで初めてできたお友達と当時は家でSleepoverをするのが日課だった。真ん中の子が今では17年の親友。一番右が高橋さん

アメリカで初めてできたお友達と当時は家でSleepoverをするのが日課だった。真ん中の子が今では17年の親友。一番右が高橋さん

自分の才能を伸ばしてくれる「ギフテッド教育」

ーギフテッドのクラスは、通常のクラスとどのように違っていたんですか?

例えば、ギフテッドの子達が集められ、創造力を身につけるようなアクティビティが多かったです。まず、みんな黒板を向いてという机の並び方ではなく、常にグループで座っていました。その中で、どんな授業でも話し合いながら答えを導きだしたり、パズルをやったり、サイエンスプロジェクトとして発明品をみんなで作ったり、それの売り込みみたいなプレゼンテーションをやったり…。とてもインタラクティブな教育でした。

今でも覚えているのは、小学校のExit Project(卒業プロジェクト)です。みんなで偉人になりきってプレゼン、ディスカッションをしました。親も見ている中だったのでとても緊張しました。

ー小学校2年生の時から貴重な教育を受けていましたね。日本の教育とは全く違う感じですか?

全然違いますね。スピーキングとか、ライティングとか、発言ができないとついていけなくなるので。おかげで英語と同時に積極性も身につけることができたと感じます。

日本語補習校の友人たちと。みな日本人でもミックス、アメリカ生まれ、世界各国を転々としている等、バックグラウンドは様々。後列一番左が高橋さん

日本語補習校の友人たちと。みな日本人でもミックス、アメリカ生まれ、世界各国を転々としている等、バックグラウンドは様々。後列一番左が高橋さん

一方、日本では英語にふれあう機会がとても少なかったと思います。特にライティングとスピーキング、つまりアウトプットの方ですね。高校と大学に進んでから気付いたんですが、中学校の時にライティングをやる機会が全くなかったので、エッセイを書く時は困りました。「どうやって書くんだろう?」と感じたりして。日本の英語教育では、アウトプットをする機会や、そこを伸ばす教育がされていなかったなと今では思います。

「カッコいいエッセイ」を書く力に必要なものとは

ーいつ頃からライティングを意識し始めましたか?

本格的に書き始めたのは大学からでしたが、高校のときに海外の大学に行きたいと思っていて、練習し始めました。

高校でもクリエイティブライティングの授業を取ったりしましたが、本当にひたすらトピックリストから選んでました。最初はエッセイライティングの基本的なルールを覚える為に型に当てはめて書くという練習から始めました。そこからひたすら書いて練習しました。あとは、どういうエッセイがカッコいいのかなと思って、高校1年ぐらいからNewsweek や New York Times とかを読み始めました。

ーカッコいいエッセイってどんなものですか?

私は、冒頭から読者にインパクトを与えられるようなイントロダクションが好きなので、そのトピックだけではなく、他の面白雑学などを入れているエッセイですかね。あと、クリエイティブな部分も大事ですが、段落の構成をしっかり踏まえている文章が、読みやすくてカッコ良く感じます。

ーどうやったらそのようにカッコ良く書けますか?

However, Although などの接続詞や、エッセイライティング独特の英語を身につけること、あとはボキャブラリーを増やすことですね。高度なボキャブラリーを入れることで文章自体も大人っぽくなりますし、接続詞を入れると本格的なエッセイとして形になっていくと思います。

ーアウトプットがないとボキャブラリーは身につかないと思うのですが、どのように定着させましたか?

小学校3年生からアメリカで Greek and Latin roots を学んでいたことがとてもためになりました。例えば「今日は “Luna”だよ」と言われ、lunaはラテン語、ギリシャ語で「月」という意味で、これが入っている単語を覚えていく。そうすると、”Lunatic”など Lunaが入った単語がリストに書き出されて、そこから単語カードを作っていきました。そうすると、徐々にわからない単語でも憶測をつけて読めるようになりました。難しい単語を見ても「これは、分けるとこのルーツとこのルーツが組合わさっているから、こういう意味なんだ」という風に関連づけて覚えられたので。

実際にライティングに使う際は、自分でそれらの単語から例文を作ってみたりしました。例えば、環境問題についてのエッセイを書く時、環境問題に関する単語リストを見て、「よし、これを使ってみよう!」と試したり。

再度アメリカに戻った時。補習校の親友たちと。真ん中が高橋さん

再度アメリカに戻った時。補習校の親友たちと。真ん中が高橋さん

ー帰国後、どのように英語力を維持しましたか?

帰国後もアメリカの友達と連絡を取り続けていたんですが、話している時に、時々言葉が思う様に出てこないことがあって、それがとても悔しかったです。このまま英語を忘れていっちゃうのは嫌だと思い、当時 YouTubeや Disney Channelをたくさん見ました。あと、音楽や映画ですね。日本にいて全然英語と触れ合う機会がないなと思いながらも、音楽や映画が海外の友達との話題づくりにもなり、繋がっていられる基となりました。さらに、英語の様々な表現も学べましたので、良かったですね。

子どもの英語学習におすすめの洋書

Amelia Bedelia シリーズ

全てその言葉通りに物事を認識してしまうAmeliaお姉さん。英語の親父ギャグみたいでおもしろい!

アメリカの友達の言葉から気付いた、自分のアイデンティティの定義

ー自分のアイデンティティは?

アメリカにずっと暮らしていて、帰ってきて、急に「日本人らしくしなさい」って言われた時に、すごく戸惑いました。帰国当時は教科書通りの日本語しか話せなかったので、不自然なことで周りの子にいじめられたり。あとは遠足とか、休み時間の遊び方ですごく小さなルールがあったり、自分の知らない遊びがあったり、ついていくのが大変でした。例えば、ドロケイというものが何か、日本語も得意ではなかったのでルールがわからず、周りに聞ける感じでもなかったのがつらかったのを覚えています。

私は日本人だけど、性格はアメリカ人寄りだし、完全な日本人ではない。でも、アメリカ国籍を持っている訳でもないし、アメリカ人でもないなって自分のアイデンティティについてすごく迷っていました。

そんな時、アメリカ留学中に出会った友達のある言葉に刺激を受けました。その子はアメリカ育ちでしたが、母が黒人で父がフィリピンやスペイン等いろんな血が混ざっている方で。その子は「あなたって何人?」と聞かれた時、「アメリカ人だけど、人種的には “I am the world”」と言っていました。実際に型にはまりたくないし、型にはまっていない。だから私は世界を代表しているんだ、と。自分の特性を生かして世界を飛び回りたいと言っていたのがすごくカッコいいと思ったので、私もそれを真似しちゃおうと思いました(笑)。その子と出会ってから、私は完全に日本人になれなくても、完全にアメリカ人になれなくても、良いんだなって思える様になりました。

実際、今の時代、グローバリゼーションでそういう人はたくさんいると思うんです。なので、それをコンプレックスにして引きずられるのではなく、それを武器にし、全面的に出して、世界を回っていけたらなと思います。

アメリカ留学中、他の留学生と一緒にNYに遊びに行ったときの写真。国籍はオーストラリア、フランス、ブラジル、シンガポール、トルコと様々。一番左が高橋さん

アメリカ留学中、他の留学生と一緒にNYに遊びに行ったときの写真。国籍はオーストラリア、フランス、ブラジル、シンガポール、トルコと様々。一番左が高橋さん

英語を通して人とつながり、世界をつなげる

ーバイリンガルで良かったと思えた瞬間とは?

音楽や映画が大好きなので、結構ライブや試写会に行くんですが、その時に海外のアーティストさん等に英語で話しかけてみると「英語できるんだね」って向こうも話に乗ってくれるんですね。実際仲良くなれるので、バイリンガルだとすごく有利で良かったなと思います。他のファンも横で「いいな、英語喋れるってそういうことがあるんだ」と言っているのを聞くと、特に思いますね(笑)。

外国人に対してためらいなく自分から話しかけられるようになったし、英語力だけじゃなく、積極性、フレンドリーな性格も身についたと思います。世界各国の方々とコミュニケーションが取れるので、人とのつながりが広がったと感じますね。

ー将来の夢は?

エンターテイメント関係の仕事をしたいです。音楽や映画こそ、世界をつなげるツールとして、一番気軽だけど一番影響力があるものだと思います。なので、エンターテイメントを将来もっと繁栄させられるようにお仕事をしていきたいです。

ー最後に、英語をこれから学習していく子どもたちへのメッセージをお願いします。

英語を話せると、世界中の人とのつながりができて、世界がすごく広く感じるので、是非がんばって頂きたいです!