英語学習の早期化に伴い、お子様の英語にさらに磨きをかけようとお考えのお父さま、お母さまもいらっしゃるかと思います。しかし、どんなに早く学習を始めたからといって思うように英語が身につかないという悩みもよく耳にします。どうせなら効果的に英語を学ばせたいと誰もが思っているはずです。
そのためにはまず脳の働きと英語学習について考えてみましょう。脳の働きを理解すると、より効果的に英語を学習することができます。そしてその鍵は「集中」と「音読」です。今回はこの脳の仕組みと集中・音読の関係について考え、効果的な学習を提案したいと考えています。
大脳の働きと言語
まずは、少し脳の働きについて説明します。脳は、ひとつの大きなかたまりとして働くのではなく、異なる働きを持つ部分の集合体です。その中でも大脳は、図のように前、上、横、後ろの四つの大きな部分に分かれ、それぞれが別の働きをしています。
詳しい説明は省略しますが、言葉を使うことと関連のある3つの部分について簡単に説明したいと思います。
耳の横に位置する側頭葉にある聴覚野は、聞こえてきた音を認識する機能を持っています。また、側頭葉の後ろと頭頂葉が重なる部分にあるウェルニッケ野は、言葉の意味を理解するための働きをします。前頭葉の後ろ側になる運動野は体の動きをつかさどっています。
他にもたくさんの部分が関連して、人間は言葉を使っているのですが、説明を簡単にするために他は省略します。詳しく知りたい方 は、「自分の脳を自分で育てる(くもん出版)」などの専門書を参考にしてみてください。
口に出したものしか理解できない
この3つ部分の役割を知ると、英語学習の効率的な方法が見えてきます。まず、人間が耳で聞いた音は聴覚野に送られます。この時点では、その音は意味のある音であるのか、雑音であるのかを識別していません。そこで、耳から送られた信号(音)は、そのまま運動野に送られ、その「音」を口や舌、顎、声帯等の筋肉を担当する部署に「以前に口で作ったことがある音であるか」を照会します。
もし、過去に口で作ったことがある音であれば、それは言語として認識されるので、その情報がウェルニッケ野に送られ、意味の検索をし、その結果、意味を理解することができます。ここで言えることは、口で作ったことの無い音は言語としては認識しないが、一度口で作ったことがある音は言語として認識するということです。これを言語学では、言語認識における運動理論といいます。
脳の仕組みから英語の勉強法を考える
難しいことはさておき、口で一度出したものは言語として認識してくれるということがわかりました。同時に耳だけで聞いたものは、言語として認識されないということもわかりました。すなわち、聞いたものを口に出していけば、そのうち言葉として認識する音の数も増え、英語を習得することができるということになります。
非常に簡単なことのように感じますが、脳の仕組みから考えると非常に信憑性がある考え方だといえるでしょう。つまり、「音読」をすることが非常に有効な学習方法であるということが、脳の仕組みからも証明されたことになります。
10代で身につけたい集中力とは?
人間は、昆虫や他の動物と比べ、生存本能に劣った未熟な状態で生まれる生き物ですが、その分、他のどの動物よりも学習を通して成長します。生まれたばかりの人間の脳は白紙に近い状態で、生まれてから、お母さんやお父さんの顔を覚え、他人を観察し真似をすることで、脳が次々と新しいことを学ぶのです。
脳科学において人間の脳は、境遇や年齢に関係なく学習を繰り返すことで飛躍的な成長を遂げると言われていますが、脳の基礎ができあがるのは18才ごろだと言われているのも事実です。実際、発達段階にある10代の頃は、20代や30代と比べて、同じことを同じ時間やっても吸収力が違います。つまり小中高生のときにいかに物事に集中できるかが、脳の実力を最大限に伸ばすために重要だと言えます。
誰でも好きなことには集中できる
集中している状態とはつまり、のめりこんで我を忘れるほど没頭している状態です。では、集中力はどのようにしたら身につくのでしょう。集中力の基本は「好き」なことを持続させることです。誰でも好きなことをしているときは、ちょっとした苦労も辛いと思わなくなり、時間を忘れてしまうほど熱中します。ここで問題となるのが、ほとんどの子どもが「勉強嫌い」だということです。しかし、必ずしも勉強することが嫌いな子が、学習することが嫌いだとは限りません。
むしろ人間はほかのどの生物よりも学習する力を持っているのですから、本来、人間の脳は学ぶことに深い喜びを覚えるようにできています。学習の喜びとは、できなかったことが苦労の末できるようになったときや、無理だと思っていた目標を達成したときなど、誰もが感じる「嬉しい」「楽しい」「またしたい」気持ちです。勉強においても成功体験をすることで、「やらなければいけないこと(=勉 強)」と「またしたい楽しいこと(=学習)」が一致され、集中力は増し、学習効果を最大限に得ることができます。
英語学習の場合、英検に合格したり、教材のレベルがあがったり、発音が上手になったりすることが成功体験にあたります。つまらないと思ってやっていることにはいつまでたっても集中できませんが、小さなことでも、自分が前に進んでいるという感覚が得られることであれば、人間は自発的に行動し、集中するようになるのです。
瞬間的に集中する習慣をつける
「まずは勉強の計画を立てよう」「キリがいいから8時から始めよう」「部屋を片付けたらやろう」、と勉強に入る前に段取りをつけることがよくあります。すぐにでも勉強を始めなければいけないはずなのに、いつまでたっても勉強が手につかないような障壁を自分で設けてしまうのです。脳科学者の茂木健一郎先生は、この障壁を取り払った「瞬間集中法」をすすめています。
「瞬間集中法」では、いつも決まった手順を踏むことで集中力を高めます。例えば、本を読むときはいつも本を手に取ることから始まります。本を開くことを合図に、そこから毎回決まった時間、本を読み進めます。これを繰り返し行うことで、脳の中に「本を開いたら読み進める」という回路ができ、あとは体が勝手に動くようになります。
2、3分の細切れ時間に単語を一つ覚える
上の空のまま、だらだらと勉強を長時間続けるよりも、限られた時間で集中して脳をフル回転させた方が学習効果が高いのは明らかです。キリのいい時間まで数分ある場合、たいていの人は「3分後に始めよう」と考えますが、その限られた数分間を使って単語を一つ覚えましょう。単語を10回音読するのにかかる時間はおよそ1分です。短い時間に、周囲の雑音などを無視して単語を覚えることに没頭することを心がけましょう。限られた時間に集中してインプットされたものは凝縮されているので強く印象に残ります。
音読学習のポイント
正しい英語を聞き正しく発音をすること
正しい音を作り、それをウェルニッケ野に送らなければいけません。正しい英語に触れることができるように、CD付きのリーディングテキストを使うことをおすすめします。このCDを使って正しい英語を何度も聞き、それをまねして「音読」するようにしましょう。
繰り返し「音読」することで運動前野に正しい音を登録する
記憶を定着させるためにも「繰り返し」が学習において大切なキーワードになります。繰り返し英語を聞き、口に出すようにしてください。繰り返すことで、運動前野に正しい音を登録することができれば、その言葉を瞬時に検索できるようになります。
英語力UPに音読は万能!その効果と自宅でできる勉強法をご紹介しますまとめ
日頃の勉強で達成感を感じたり、成長が可視化されることによって自発的に行動するようになり、それが次第に習慣化されていきます。そのサイクルを形成することで、自然と集中できる体質になることができます。学習の効果を最大限に高めるために集中力を早いうちから定着させておくと、英語に限らずさまざまな場面で役に立ちます。ぜひ、みなさんも実践してみてください。