金井さんの海外歴と学校歴
0〜1歳 | 香港 |
1歳〜5歳 | 日本 |
5歳〜13歳 | Shanghai American School |
14歳~15歳 | Fudan International School |
15歳~18歳 | 慶應義塾湘南藤沢高等部 |
18歳~ | 慶應義塾大学商学部 |
英語の所持資格
英検1級・TOEIC 980点 |
アイデンティティクライシスで悩んだ
-なぜ日本人は嫌われてしまうのか
年長くらいの歳に突然、現地の56カ国もの生徒がいる大きな学校に通うことになりました。もちろん英語は話せなかったので、通学初日から帰りのバスがわかりませんでした。頼りの綱だった同級生にも帰り道に置いて行かれそうになったので必死でついていかなくてはなりませんでした。それからしばらくは学校でいたずらされることもあって、毎日泣いていたようです。
学年でもたった一人の日本人でしたので、長い間文化的ないじめや差別を受けたことはやはり辛かったです。今でも覚えているのは、小学1年生で初めて会った韓国人の生徒に「お前日本人か?それなら友達になりたくない」と言われ、衝撃的でした。私自身、誰とでも仲良くなりたい性分なので身振り手振りを交えて覚えたての英語を存分に使いながら話しかけたときに、そのようなことを言われたので困惑したのを覚えています。竹島問題など、歴史的な背景を全く教わっていなかった私としては、当時なぜ拒絶されたのかがすぐに理解できず、なぜ日本人はこれほど嫌われるのかと自問自答することもありました。
現地校の人たちには、日本人だと言われ、日本人学校の人たちには外国人だと言われ、どちらにも所属していない感じがありました。
現地校に入れるべきか?日本人学校に入れるべきか?
現地校やインターナショナルスクールに行くことはとてもいいことだと思います。両親にはその選択を感謝しているし、最初から日本人学校へ行っていたら全く違う自分がいたと思います。インターに通って得た大きなメリットは語学力です。覚えていないと話にならないので、ボディランゲージや覚えたての単語を駆使して会話を進めるので上達も早いし、サバイバル能力も磨かれます。そして、多様性のあるいろいろな国の友達ができました。他国の人と交流することで、逆に日本人としての自分を考えることができたと思います。
-現地校と日本人学校の違いとは?
アメリカンスクールにいた頃のほうが圧倒的に勉強していました。アメリカンスクールは宿題の量が多かったけれど、日本人学校は宿題もなく、テストもわりと適当でした。
部活に関しては、アメリカンスクールはシーズンでやることが変わるので、深く打ち込むことができなかったのですが、日本人学校は通年で行われるので、バスケットボールやブラスバンドに打ち込むことができました。
-人生を大きく変えた分岐点はなんですか?
意外にも人生を変えた大きな分岐点は、7年生を終え日本人学校へ編入したことです。小学6年生の頃から「日本人としての自分」、「国際社会の一員としての自分」について考え始めました。そして、「いっそのこと日本らしい環境に身を置いてみよう」と思い、ちょうど父の仕事で日本に帰る可能性があったので、何ヶ月も迷いましたが日本の教育を受けたいと編入を決めました。
初めて同じ国籍の生徒と触れ合うことで、アメリカンスクールの自分と日本の環境での自分の双方が理解でき、楽になりました。日本人学校で得た友達は今でも大切ですし、アメリカンスクールという多様性溢れる環境が、如何に恵まれていたかも改めて実感させられました。ただアメリカンスクールに通い続けていたら、私自身、自分のアイデンティティを見つけるのにさらに時間がかかったと思います。
(小学校の仲の良い友達と。左から2番目が金井さん。)
他のフィルターを通さずに言葉が理解できる
-バイリンガルでよかったと思えた瞬間とは?
海外の人と直接コミュニケーションがとれるときや英語を聞いてすんなり意味を理解できたときです。ニュースやインタビューにおいて、通訳の方が出した訳と外国の方が言っていたことが微妙に違い、言葉足らずな場面を何度も見てきました。プロの通訳者をもっても、オリジナルの意味が他言語のフィルターによって解釈が変わってしまうことに勿体なさを感じますし、自分の感性で何を言っているかを理解できることにバイリンガルであるありがたみを感じます。
また、一人でニューヨークに行った際に言語の不自由さを感じることなく、自由に自分の足で動ける部分も世界共通言語として英語を話せる恩恵の1つだと感じました。
勉強と遊びをリンクさせる
-毎日1冊、帰りのバスで友達と楽しく本を読んでいた
英語を勉強したという実感は正直私にはないのですが、小学1年生のときにたくさんの本を読んだり、英語に多く触れていたと思います。小学校に進学した頃から英語に触れる量が一気に増え、毎日学校から本を1冊借りて読むことが私のクラスのルールだったので、帰りのバスで友達と大声で楽しく読みあさっていました。読書で覚えた単語や言い回しを早速友達に使ってみたり、家でも説明したりと、自分で話せる新しい単語が日々増えていくことにワクワクしていました。英語塾キャタルで実践している方法と全く同じだったので、働き始めたときに懐かしさを覚えました。
音楽や映画で生きた英語を身につける
-日本に帰国後、どうやって英語力を維持していますか?
私自身、音楽と映画が大好きなので、日々洋楽や洋画を鑑賞するようにしています。ラップやスラングから教科書では使わないような英語に触れて、今使われている英語を学ぶようにしています。まずは何もない状態で聴いて、その後、聞いた単語を字幕や歌詞で見返して、正しく聞きとれているかをチェックしたり、現地の人がどのように単語の発音や単語間のフローを発しているのかを注意して聞いていました。
高校選びの際も、英語力が低下しないような学校に行きたいと考え、英語教育に力を入れている慶應SFCを選んだため、週3回英語の授業がありました。そこでの授業で積極的に先生へ会話や質問を行い「英語の肌感覚」を損なわないように心がけていました。
-慶應大学に進学した理由と、その大学の魅力はなんですか?
内部進学だったのが大きな要因ですが、学生の間は家族と暮らしたいので海外の大学もやめて、日本に住んでいる間に日本人や日本社会、自分のルーツを探っていくことにフォーカスを当てようと思い、今の大学に進学を決めました。
大学の魅力は幾つかありますが、縦や横の繋がりの強さとバックグラウンドの多様性が大きな魅力だと私は考えています。
OB会を始め、高校の先輩も未だに仲良くしてくださいますし、一生をかけて付き合いたいと思える友人が多く在籍しています。属している人々も私のような帰国子女、海外からの留学生、地方からの学生等、さまざまなバックグラウンドの人が万遍なくいる環境です。日本の大学の中でも数少ない学校だと考えています。徴兵制から帰ってきた韓国人留学生が3人いて、彼らと交流できるのも魅力です。
就活中も、OB訪問など期待以上に応援をしてくれて、縦のつながりはありがたいと感じています。
楽しく、実用的な学習が学びへの関心を養う
-留学先(海外在住中)の授業で印象的なものはありますか?
6・7年生の頃に受けていたスペイン語の授業が印象的でした。当時の先生の授業は本当に楽しく、且つ実用的な教え方をしてくださっていました。日本で語学を受けると、文法のように堅苦しく入るのに、ここでは毎週いろいろな分野の単語を教えてくれ、伝統的なスペインの歌やビデオを通して、まずは私たち自身に覚えた単語を直ぐにその場で使う環境づくりを徹底してくれました。そのおかげで私自身どんどん使えることに喜びを感じ、さまざまな分野の単語を知りたいと熱心に勉強していきました。
海外での教育はアウトプットの量が違う
-日本の教育との大きな違いを感じたところは?
生徒に求める発言の数が一番違うと思います。日本の学校においては、先生が教科書に沿って授業を進め、ひたすら話していて、生徒に発言を求めても「○○ページを音読してください」程度です。それに比べて、海外のクラスにおいては、先生がある程度話してから1人の生徒に意見などを求め、それに対してクラスはどう思うか、どんどん話を展開していきます。ディスカッションに合わせて、先生が考えを言い、授業の進み具合が変わっていきます。圧倒的に授業でのアウトプットの量に差が出ていると思います。アメリカンスクールでは、唯一の正解を問うのではなく、多様な意見、回答を尊重するところが日本とは違いました。
また、授業内でトラブルがあった時に、アメリカンスクールでは直接先生と対話することで解決できたのが、日本人学校やSFCでは直接伝えても受け流されるか、逆に自分に対してどこが悪いからと指摘されて終わってしまい、対応の差は大きかったです。
-「日本人」として「国際人」としてのアイデンティティ
私のアイデンティティは「日本人」であり「国際人」であることです。1つに断定できないと感じています。あまり「日本人だからこう」という考えではなく、他の国の文化や考え方でよい面は取り入れて自分がカッコイイと思う人物像に近づければ良いと捉えています。
また、日本人の両親と日本のパスポートを持っているので、日本人としてのプライドはあります。アメリカンスクールでは長年、学年唯一の日本人だったので、外国人の友達が初めて会う日本人像が僕であったと思います。そのため、日本のことも好きだった私は、日本や日本人に対してネガティブなイメージを持たれるのが嫌でした。だからこそ日本人として恥ずかしくない振る舞いを心がけ、日本に対する理解を深めるようにしています。
-将来の夢はなんですか?
仕事を通して、「国と国の繋ぎ目」になれる存在になりたいと思っています。せっかく異文化の中で育ってきたので、海外に出て、日本に関係あるなしに関わらず国際社会における国の繋ぎ目に何らかの形で関わっていたいと考えています。
例えば、ウォシュレットは優れた技術なのに、海外の普及率が低いというように海外で認知されていない素晴らしい日本の技術をもっと輸出していけたら、世界もよりよくなっていくと思っています。
子どもの英語学習におすすめの洋書
Boy and Going Solo by Roald Dahl
小学生の時に読んだのですが、読みやすいし、話も面白いので、読書が好きになるきっかけになる本だと思います。この作家は他にも本を出していて、どれも面白く、読み手に優しい本ばかりです。なかなか面白い本が見当たらない人は手に取ってほしいです。
英語ができないことでやりたいことができなくなる前に
-英語を勉強している人たちにメッセージをお願いします
英語ができることで、旅行、仕事、いろんな面でできることが広がります。
もはや英語は日本語をしゃべるのと同じくらい必要な社会になりつつあります。全く違う言語の勉強は予想以上に大変であり、めげてしまうことも多いと思います。しかし、英語を話せる事によって見える世界は大分違います。
そして、自分のやりたいこと(Want)をできること(Can)にする最初のステップだと思っています。英語が話せることによって、できることの多さにワクワクしながら、今の小さな課題を少しずつクリアしていってください。
勉強が辛くなったときは、自分の好きなことと英語をつなげましょう。例えば、好きなサッカー選手と英語で話したい、そのために英語を勉強すると思えると気分も変わりますよ。頑張ってください、応援しています。