ニューヨーク大卒の笹原さんは、現在もキャタルで活躍するバイリンガル!「想いを伝えること」を大切にしている、そんな笹原さんのバイリンガルストーリーをお届けします。
笹原さんの海外歴と学校歴
8歳〜16歳 | シンガポール ISSで6年間学び、転校してUnited World College東南アジア校へ |
16歳〜18歳 | 中国(上海)上海アメリカンスクール IB |
18歳〜22歳 | アメリカ(ニューヨーク)ニューヨーク大学 |
英語の所持資格
SAT 1920 |
自分の力を信じて前に進めた
-現地で苦労したこと、そのエピソードは?
シンガポールへ引っ越して、一番苦労したことは、初めは英語がまったく話せなかったことです。
道も聞けないし、ごはんも頼めないし、遊ぶこともできなくて辛かったです。
学校でも、友達とも話せないし、授業も全くわからず、ワークシートを渡されても理解できてないから隣の人のものを写していると注意されたり。
英語を話せない子を助けてあげる「バディ」というシステムがあっても、助けてもくれず、いじめられたりもして学校へ行きたくないと思う時も少なくありませんでした。
数ヶ月ぐらいはそんな時期が続いたのですが、私自身負けず嫌いなので、わからない、できないっていうことが嫌で、どうにかしてできるように、みんなが言っていることを分かるようにと、家でひたすら英語の本を読んで勉強を続けました。
でも、徐々に表情とかを読めるようになり、みんなの言っていることが分かり始めても自分の言いたいことが話せなくて、いつも笑って“YES”と言っていました。
友達からは「”YES”しか言えないの?」と言われたりして、言えるのに言えないもどかしさがありました。
-英語を積極的に話せるようになったきっかけは何でしたか?
ある時自分を試すチャンスが巡ってきました。クリスマスコンサートで数人だけが舞台に出てセリフを言う役があり、どうしてもその役が欲しくて、オーディションにでました。それまで英語は全く話せず、物静かだった私が、みんながビックリするほど大きな声でセリフが言えたので、投票をした結果、役をもらえました。
舞台に出て以来クラスの子達も話しかけてきてくれるようになって、家に呼んでくれるようになりましたね。
そこからは自信もつき、自分からも積極的にクラスの子達に話しかけて、遊びの輪に入っていけるようになりました。
-英語が話せない子どもに対してご両親はどうされていましたか?
両親は英語がしゃべれない私や姉を積極的にサポートしてくれて、わからないなりに宿題を手伝ったりしてくれたり、学校の様子や話を聞いてくれたりしました。自分からも親とちゃんとコミュニケーションをとって、嫌なことや心配を伝えるようになって、楽になりました。
本を読むことで英語も文化も学んでいった
-英語を一番勉強した時代はいつですか?
シンガポールに引っ越した、小学校2年生から3年生にかけてだと思います。
初めは学校のESL(第二言語として英語を学ぶ学生のクラス)にいましたが、半年でメインストリーム(ネイティブスピーカーとして英語を学ぶ学生のクラス)に昇級しました。そのときに、自分はもう大丈夫と自信が持てて、授業でも積極的に手を挙げるようになりました。
あとは、学習熱に火がついて、図書館やお友達から英語の本をできるだけ借りて読みました。本を読むことで、外国の文化を学ぶことができて、自分がいる環境に融合できると思えました。
IB(国際バカロレア)プログラムを選んだ理由
-上海ではなぜIB(国際バカロレア)プログラムに進んだのですか?
シンガポールではイギリス系のインターナショナルスクールに通っていたので、上海に引っ越しても自然と自分もIBプログラムをやるものだと思っていました。
*国際バカロレア(IB)プログラムは国際バカロレア機構が提供する国際的な教育プログラムで、もともとは世界各国から人が集まる国際的な機関や外交官の子供が母国での大学進学のために作られました。チャレンジに満ちた総合的な教育プログラムとして、世界の複雑さを理解して、そのことに対処できる生徒を育成し、生徒に対し、未来へ責任ある行動をとるための態度とスキルを身に付けさせるとともに、国際的に通用する大学入学資格を与え、大学進学へのルートを確保することを目的として設置されています。
-IBの科目はどうやって選択したのですか?
IBでは6科目の中から自分で学びたいものを選んで勉強していくので、英文学や環境学など自分が関心を持っていることやレベルから授業を選択しました。
2週間は猶予があって、授業に参加したあとで変更することも可能でした。
-IBの中で学んだことを教えてください。
膨大な宿題やエッセーをこなさなくてはならないのでプレッシャーは多かったです。その中でプレッシャーに負けずにがんがんやることが大事だと学びました。自分のためになっているし、自分がやりたいと思ったことをやっているので、深刻にならずに前進していくことです。
-エッセーに成績の重点が置かれていたようですが、エッセーをこなしていくうちに学び取ったことを教えてください。
なるべく自分の意見を明確で簡潔に伝えることが大切だということです。
人を引き付けるような文章を書くには、オープニングからフック(興味を引くもの)を入れるようにして新鮮さを取りいれてロジックを立てて書いていました。
つまらないエッセーは読んでももらえないので、スペルミスだけでなく、同じ言葉を繰り返していないか、長すぎる文章はないか提出する前に自分できちんと添削していました。
自分が流されずに自分の意志が大切
-NY大学に進んだ理由は?
子供の頃からニューヨークに住むこと夢に見ていました。父が若い頃、ニューヨークで働いた経験をしきりに話していたこともあり、影響を受けました。
世界中の人が集まっていて、音楽もアートも一流だと父に言われ、先生にも一度は暮らしてみたほうがいいと勧められたので決めました。
-実際にNYに行ってどうでしたか。
単身で行ったニューヨークは強烈で押しつぶされそうになって泣いたりしていました。寮生活だったので、いつも知らない人に囲まれている生活だし、痴漢や事件がいつも起こっている町で、気を引き締めていないといけない状況でした。
プライバシーもないっていうのもあり、自分の時間やスペースを大切にするようになりました。「暗黙の了解」はないので、自分の意見をきちんと伝えないといけないと学びましたね。
自分の芯をしっかりしていないとすぐ流されてしまう場所でもあったので、人の意見は意見として聞くけど深く考えこまないでスルーする術を身に着けました。
-メンタル面で乗り越えられたことが大きいと思いますが、何かこれからそういう場面に直面するかもしれない人にアドバイスありますか。
メンタル的に落ち込んでいる人には自分の状況を自覚することが大事ですね。嫌なことやしたくないことを明確して、自分の声に正直になることです。
ちょっとずつでも前進している自分をほめてあげて、変えられることは変えて、変えられないことはコントロールしないと区切りをつける。
ヨガを大学一年から始めて、”すべてを受け入れる”っていうことを初めて理解して、よりそのようなことが大切だと思いました。
-NY大学の授業はどうでしたか。
NY大学だからといって授業はあまり面白いものはなかったけど、その中で自分の意志が大切で、面白いものを自分で見つけに行くようにして、人と同じようなことはしないことで変えていきました。
競争率が厳しくて、成績アップに関してみんなすごく押しが強い感じでしたよ。
-NY時代によかったことはありますか。
NYで得られたことが今の私を突き動かしているんです。
NYUでは東アジア学を勉強していて、教授に推薦してもらい香港政府が主催した大学生の中国語のスピーチ大会に出ました。最終的にトップ10に入れたのは中国語していてとてもよかったことです。
海外で日本の歴史や文化がどう見られているか学ぶことで、日本のことを伝えたいという思いも生まれました。
あと、日本アパレル企業が立ち上げでNYにきた時に、インターンができて、身近にどう海外に進出するのかを見られて面白かったです。
この二つが自分で何かを取りに行った成功例ですね。
自分の力を試したい、スキルを身につけたい、面白いことをやりたいからやった感じではあります。
留学をして学んだこと
留学先(海外在住中)で受けた英語の授業で印象的なものはありますか?
本をたくさん読んでいたことが印象に残っています。小学校でも、英語の授業はみんなで同じ本を読み、ディスカッションをしていました。様々な意見が発せられて、受け入られていることも印象的でした。実は、英文学は私の好きな授業のうちの一つで、高校ではIB で英文学を専攻しました。私は読んでいる本や、キャラクターの関係を分析するのが大好きなので、分析した結果を議論する英文学のディスカッションや、プレゼンテーションは非常に楽しく思いました。
一番印象的な授業は IB必須科目の「Theory of Knowledge (知の理論)」の授業です。ディスカッションをベースとしたクラスで、個々の学問分野を「知」というレンズを通して多面的に分析して、客観的精神を養う授業でした。今まで自分が「普通」として受け入れていた固定観念や、善悪と言った主観的に見える観念を覆すようなディスカッションができて、多感的な思春期にこういった柔軟な考え方の形成トレーニングを受けられて貴重な体験ができたと思えます。
留学(海外)経験をした上で日本との英語教育の違いは?
ディスカッションベースのクラスが多いことだと思います。生徒はみんな発言することを要求されるに加えて、正しい答えは一つだけではないという考えが根底にありました。生徒の探究心や、客観的な考え方、多面的な考え方を養う授業が多かったです。
英語力を上げるための勉強法
英語を極めるためにどんな工夫をしましたか?
ひたすら本を読みました。音楽もテレビも英語に変えました。けれどもこう言った努力は自分を強制したのではなく、ただ知識に飢えていて、好奇心にあふれていたからです。もっと英語を学びたい、英語を話す人たちのことを知りたい、と思っていたから、自然と英語の情報を吸収していたのだと思います。
日本にいる間、英語力維持の方法は?
ニュースや世界情勢はほとんど英語の情報源(Al Jazeera, BBC, New York Timesなど)から入手しています。ドラマや映画もほとんど英語で見ています。
バイリンガルとしての自分を形成したもの
バイリンガルでよかったと思えた瞬間とは?
ニューヨーク大学に行けたことと、世界中に友達ができたことです。日本に帰ってきても、外国で作った友人が旅行に来て、再会できる時は非常に嬉しい瞬間です。
自分のアイデンティティは?
地球人です。もちろん国籍は日本人でありますが、人類は大きな家族だと思っています。
将来の夢は?
将来の夢は世界平和と環境保存の手助けをすることです。
現在英語とヨガを教えていますが、いずれはヨガ、芸術、代替医療、自然農法の教育を提供する複合施設を開きたいと思っています。
地球への汚染を最小限にして、心から満ち足りて幸せに生きるライフスタイルを構築するにはどうしたらいいか、心身を通じてみんなで学べる場所を提供したいと思います。
笹原さんのオススメの洋書
The Never Ending Story
The Little Prince
Little House on the Prairie
Narnia
Charlotte’s Web
英語を学んでいる子どもたちへアドバイス
諦めずに、夢を目指して頑張って下さい!
間違いを恐れず、英語はコミュニケーションのツールだと想い、何よりも伝える想いを大事にしてください。
より多くの人と心を通わせるために、英語の本を手にとってみたり、外国人の方と話してみたり、海外旅行にでるなど、いいと思います。
英語のおかげで広がる人生を楽しんでください。