笹原さんの海外歴と学校歴
0歳〜10歳 | 日本 |
10歳〜18歳 | シンガポール 日本人小学校(一学期間のみ) その後ISS International Singapore |
18歳〜19歳 | 中国 上海 复旦(フーダン)大学 |
19歳〜23歳 | カナダ バンクーバー University of British Columbia(UBC) |
23歳〜 | 日本 ヨガインストラクター、通訳・翻訳、英語教師 |
語学力
【ネイティブレベル】 英語、日本語 【日常会話レベル】 中国語、スペイン語 |
心から何かを伝えたいという気持ちが言葉の壁を壊してくれた
-10歳でシンガポールに移住して、どんな苦労がありましたか?
移住した時、言葉が通じないこと、言いたい事が伝わらないこと、友達がなかなかできないこと、それは辛かったです。
インターナショナルスクールへ通い始めた頃、近所に友達になりたい子がいたのですが、うまく自分の言いたい事が伝わらなくて挙動不審だったのか、その子のお母さんが私とは遊ぶなと言ったみたいで、子供ながらにショックで言葉の壁は厚さを感じました。
インターナショナルスクールで一年程過ぎたあたりから、初めは喋ることよりもジェスチャーが大きくなって、英語の単語よりもコミュニケーション能力がついてきました。「心から何かを伝えたいという気持ち」が湧いてきて、リアクションをオーバーにして、毎日パントマイムのような感じでコミュニケーションを取っていましたね。
-なぜ日本人学校からインターナショナルスクールに移ったのですか?
シンガポールに移住して最初に入った日本人学校でよく馴染めませんでした。そこで母が、せっかく英語圏にいるのだからインターナショナルスクールに入れましょうと、父を説得してくれました。
でも、最初はいじめがありましたね。物を隠されたり、わからない時に助けてくれなかったり、辛かった時期もありました。最初はESL(English as a Second Language)に入り、英語塾キャタルのメソッドと似ていて、辞書を使ったり、絵本を読んだり、ボキャブラリーを増やすことを中心に勉強していました。
-ISS International Singaporeとは?
創立は1981年。シンガポール教育省の認可を受けているシンガポールで最も伝統あるインターナショナルスクールとして、駐在員の子供たちのために国際色豊かな教育を提供している学校です。在籍生徒の出身国は世界50カ国以上で、世界中から集まる生徒たちが共に学ぶ国際教育の場になっています。小規模な学校なので、生徒一人一人に先生が関わってくれました。
-英語を身につける最大のモチベーションになったものは?
ネイティブレベルのクラスにいたスウェーデン人の男子生徒に憧れて、彼と話したいと思うようになったことがモチベーションになって、自分から覚えた言葉を使うようにしてだんだん喋れるようになっていきました。
ヨーロッパ、アジアなど世界中から集まっているESLクラスの友達は、英語が母国語ではない分、同じような苦労をしてきていたので私の英語の間違いを直してくれたりもしました。少しでも早くESLクラスを抜け出したいと思って、一年半ほどでESLを終えて、ネイティブスピーカーがいるメインストリームのクラスに移ることができました。
-なぜ読書が好きになったのですか?
両親が読書好きで、本や楽器が家にたくさんあって、本はいくらでも買ってくれたから、それが大きいです。読書は想像力や自分の世界が広がる時間だから、両親も同じように読書を楽しんでいて、自分も恵まれた環境にいました。両親も英語の勉強が好きで、小学生のころから母は英語を勉強したし、父も語学大学へ行っていたので、その影響はすごくあります。
-IB(国際バカロレア)教育はどんなものでしたか?
IBとは、「世界共通の大学入学資格と、それにつながる小・中・高校生の教育プログラム」のことです。1968年スイスのジュネーブに設立されたインターナショナル・バカロレア機構(IBO)によって提供される国際的な教育プログラムで、その認定証書(ディプロマ)が世界各国の多くの大学で正規の入学資格や受験資格として認められています。グローバルで活躍できる力を身につけるため、3つのポイントで授業を行っています。
1つ目は、教科の枠にとらわれない学びです。2つ目は、物事を深く多角的に見て、自分で考え、自分の判断で行動することです。3つ目は、生徒の学びを深め、進めるために、テストだけでなく総合的に評価するところです。論理的思考力や批判的思考力(クリティカル・シンキング)、コミュニケーション能力などを養うための授業もあります。「正解のない問題」に対応していく力を身に付けることを大切にしていて、毎回行うディスカッションの中で生徒たちは思考力を高められます。
IBの2年間は大学の授業のように好きな教科をとって、掘り下げていくので、自分の興味を探ることができたし、カナダの大学に入ってからも全然困らなかったです。
好奇心と伝えたい思いで中国語やスペイン語も習得した
-ギャップイヤーとは?
カナダのUBC(University of British Columbia)に合格していたのですが、もともとギャップイヤー(入学を1年遅らせることができるシステム)を取ることを決めていたので、家族みんなでまた一緒に住みたいと思い、父が赴任している上海に家族で移り住みました。
高校でも第二カ国語として中国語を取っていたので、本当の中国を見てみたいという好奇心もあり、中国の大学に語学留学しました。
-复旦(フーダン)大学ではどのような生活でしたか。
家の目の前にも交通大学という大学があって、どちらも上海ではトップクラスの大学だったのですが、騒がしい上海の町中よりも少し離れたところに行きたいと片道1時間の复旦大学を選びました。それが運命の選択で、最初の1日で親友に出会ったのです。
高校時代の友達に似ていた、エクアドル人の彼を一目見てこの人と友達になると思い、声をかけました。それからは個性が強くて自分のやりたいことをしっかりわかっている彼から毎日インスピレーションをもらっていました。夢を一緒に話し合う友達です。
彼のおかげでいろんな人とつながれて、上海生活は楽しすぎるくらいでした。
-スペイン語も話せるようですが、どのように勉強したのですか?
上海にいた時、エクアドル人の親友の故郷に1ヶ月遊びにいって、彼の家族や友達と過ごして、スペイン語でしか話してくれないので、もどかしくて、感謝の気持ちを表したいと思って、カナダの大学でスペイン語を学びました。
英語を身につけた時と同じで、“あの人と話したい”という想いが原動力になって話せるようになったと思います。
専門分野の勉強で卒業の大変さを感じる
-なぜ大学に入る前からやりたいことが決まっていたのですか?
IBのカリキュラム自体が、自分の専門性を深めていく要素があり、16歳くらいで自分の進路を考えていました。私は体が弱かったので、キネシオロジー(運動解剖生理学)に関心を持って、それを専攻しました。
-海外の大学は卒業するのが大変だと言われますが、いかがでしたか?
実際とても大変でしたね。どんどん専門的になっていき、リサーチする必要があったので、毎日膨大な量の本を読みました。ちなみにカナダの大学は、4年で卒業できるのですが、たいていの人は5年いて、じっくりと学びを深めていました。課題活動や仕事と両立しながら、自分のペースで単位を取っていくので、留年というネガティブなイメージは全然ありません。学費も取った科目分払う形なので、生活費以外は追加で払うこともありません。逆に、寝ても覚めても勉強!という人もいて、彼らはできるだけ速く多くの単位を取得して、3年で卒業していきましたね。
ヨガでありのままの自分を受け入れられた
-海外で自信を失ったとき、どう自分を確立していきましたか?
大学1年のときに、アイデンティティクライシスがあって、思春期を終えてから親と離れて自分について考える時間が多くなって、自分に自信がなくなってしまいました。
それを見かねた母が、私が上海に行った時にヨガを紹介してくれました。そこで、「ありのままの自分でいい」というヨガのメッセージに感銘を受けました。
ヨガの瞑想によって、ネガティブな思考を自然とポジティブに変えていけるんですね。今では、自分の存在そのものに確信を持っています。
-日本にいる間、英語力をどうやって維持していますか?
基本的に妹や友達とは英語で話をしたり、メールをしたりしています。インターナショナルスクールの時から人と離れることが多かったので、国が変わっても、つながりを大切にしてきたので、今でも世界中の友達と連絡を取り合っています。それから、本を読み続け、好きな洋楽を聴いたり、字幕なしで映画を見ていますね。
-バイリンガルでよかったと思えた瞬間とは?
世界中に友達がいて、旅先、仕事先の選択肢が多くあることはもちろん嬉しいです。そして、英語教師として、英語を学ぶお手伝いができて、生徒の成長や夢が実現する瞬間に立ち会えることが本当に嬉しいです。自分が経験したバイリンガルの世界を生徒にも味わってもらいたいので、生徒が成長していく姿に毎回喜びを感じています。
-将来の夢は?
東京のような大都会に、自然と芸術を取り戻すことです。
もっと身近に自然と芸術に触れられる都市をつくるお手伝いがしたいです。ヨガのライフスタイルを提案することがそれに繋がっていると思っています。
子どもの英語学習におすすめの洋書
The Lion, the Witch and the Wardrobe (full color) (Chronicles of Narnia)
初めてこの本を手に取った時、母が小さい頃お小遣いをためて買ったと聞かされました。そしてその古い本を大事に扱うように言われました。簡単な文法で書いてあり、ファンタジーが好きな人には想像しやすい描写を使っているので楽しく読めます。
The Neverending Story
実世界の子供がファンタジーの世界に旅するストーリーです。動きがある文法で、過去形や現在進行形を使って過去や現代に飛ぶ感じです。ネイティブスピーカー(とくにラテン語を起源とするもの)はムードや気持ちによって時制が変わることがあって、過去の話でも現在形で話すことがあるのですが、そういう感覚をつかむことができます。
英語を学んでいる子どもたちへメッセージ
英語をあきらめないでください。
夢を叶えるのに、スタートするのはいつだって遅いことはありません。なぜならその夢への旅路が宝物になるからです。プロセスや経験が糧になり、結果よりも過程がとても重要なのです。諦めなければ、必ず英語を身につけることができます。