学生が国連大使に!バイリンガルだから経験できた国際社会の舞台とは? 慶應大 磯崎さん | バイリンガルへの道

学生が国連大使に!バイリンガルだから経験できた国際社会の舞台とは? 慶應大 磯崎さん

学生が国連大使に!バイリンガルだから経験できた国際社会の舞台とは? 慶應大 磯崎さん

磯崎さんの海外歴と学校歴

0歳〜2歳 東京
2歳〜6歳 アメリカ合衆国ミシガン州 モンテソーリー幼稚園
6歳〜9歳 アメリカ合衆国インディアナ州 Woodbrook Elementary School
9歳〜12歳 世田谷区立千歳小学校
12歳〜18歳 洗足学園中学高等学校
18歳〜現在 慶應義塾大学法学部政治学科

英語の所持資格

TOEIC 955点

小学生ではアカデミックな英語についていけずに苦しんだ

-アメリカに移住した時に、どんな苦労がありましたか?

アメリカで一番苦労したのは、インディアナ州の小学校に進学した時です。ミシガン州のモンテソーリー幼稚園はインターナショナルな環境で様々な国籍の生徒がいて、文化交流や遊びの中で仲を深めていたのですが、インディアナ州の小学校に進学すると、田舎の公立校で日本人は私一人という状態でした。幼稚園生の英語レベルでは、入学した頃は、英語で話す友人たちの会話についていけず、授業もアカデミックで最初の1年はついていくのが大変でした。
家では日本語で暮らしていたので、専門的な言葉もわからず、理科など普段使わない単語が理解できずに、母と辞書を使って勉強していました。また、本を読むリーディングの授業も始めは難しく、経験を積むまでは大変で、授業についてゆくまで2、3年かかってしまいました。

低学年からアウトプット重視で表現力や発言力が磨かれた

-アメリカの授業はどんな特徴がありましたか?

小学1、2年生から自分たちで話し合ったり、思ったことを作品にしたり、アウトプットすることが多かったです。例えば、歴史の授業でThanksgivingに関して学んで、そのあとでその内容に対して思うがまま絵に描いたり、リーディングの授業で本を読んだら少人数のグループに分かれディスカッションをしたりと、アウトプットが中心の授業が多かったです。低学年から自分で表現したり、発言することを大切にした授業が積極性やワークショップの際に役立ちました。

ごほうびがモチベーションになり、英語を好きに変えてくれた

-磯崎さんの英語力を飛躍させた英語学習法は?

英語力を向上させるきっかけになったのは、小学校での読書の授業です。小学校では、読解力を高めるために本をたくさん読むよう勧められます。一定数本を読み、パソコンを使って20問程度の読解力テストに合格すると、ポイントが貯まり、ピザパーティーに参加できるごほうびがありました。小学1年生からレベル分けがされていました。
また、読解力テストは、キャタルのアクティビティやサマリーワークシートに似ていて、内容に関する質問に答えたり、本に書いてあるボキャブラリーの意味や類義語・反対語などの質問もありました。それが読解力だけなく、ボキャブラリーの幅も広げてくれました。
理解度が目に見え、成果が教室の壁に貼られ、最終的にはピザパーティーに参加できることがモチベーションになり、それを目標に頑張っていくうちに本が好きになりました。

世界へと大きく視野を広げてくれた模擬国連

-中学、高校時代、模擬国連でどんな体験をされましたか?

模擬国連というのは、それぞれの学生が別の国の大使になり、その国の代表として1週間弱かけて実際の国連が行っていることを疑似体験する場です。国際的な問題に関する3つほどのトピックについてディベートやディスカッションなどを行う世界中の学生が集まる会議です。
高校生がメインですが、大学生用のものもあり、私は中学3年生と高校の1、2年生の時に、ソウル、ハーバード、オーストラリアで行った会議に参加しました。最初の会議では、一生懸命勉強していったのにも関わらず、周りに圧倒され話せない日もありましたが、知らないことがたくさんある国際社会や国際政治って面白いと心から感じました。特に日本人より日本のことを知っている外国人がいたり、自分が別の国の大使となって話し合うので、日本にいたら知らなかった国の主張や立場、さまざまな思想に思いを馳せることができました。

-模擬国連で一番印象的だったエピソードとは?

模擬国連で一番印象的だったのが、国連機関の国際連合経済社会理事会(Economic and Social council)の設定で、100年後の人口問題についての会議を行った時です。日本では少子高齢化ばかり取りざたされているのに対し、アフリカでは人口爆発が問題になっているという現状があり、人口問題であっても全く違う立場にあり、それぞれの立場があって、一つの解決策に結び付けるのはいかに難しいかということを感じました。解決策も見出すのが難しいからこそ、もっと勉強したいと思いました。

国際政治を深く学ぶため、慶應義塾大学法学部政治学科に進学

-慶應義塾大学の法学部政治学科はどんな特徴がありますか?

中学、高校で模擬国連というものに参加したことをきっかけに国際政治を勉強したいとの思いから慶應義塾大学の法学部政治学科を選びました。国際社会で活躍したいという漠然とした夢があり、大学で政治に関する科目に加え経済、法律など将来必要となる教養を幅広く身に付けられることが魅力的でした。英語学習においては、政治学科は帰国子女が多く、中でも外国語特殊という私がいたクラスでは高校生まで海外で過ごしていた学生と共に授業を受けるので、私も頑張らなければいけないと刺激を受けました。現在では西洋外交史・国際政治のゼミに所属しており、高校生の頃から興味のあった国際政治について歴史的な観点から現代の国際政治について理解を深めています。

バイリンガルだからこそ海外で活躍できるチャンスをもらえた

-「バイリンガルでよかった!」と実感したエピソードは?

バイリンガルでよかったと感じたのは、中学、高校、大学と国際的な場で活躍できる機会を得ることが多かった時です。中学校と高校では計3回模擬国連会議に参加することができ、大学ではフィリピンとボストンで開催されたHarvard Project for Asian and International Relations(HPAIR,ハーバードアジア学生会議)に計2回参加することができました。日本を代表しながら世界中のヤングリーダー達と英語で議論をすることができ、非常に刺激的で貴重な経験ができました。また、英語を使うことで海外と接する機会が増え、海外の理解を深めることで自国の理解も深め、アイデンティティを確立することができました。

HPAIR(ハーバードアジア学生会議)は貴重な講義と国際的ワークショップの場

-世界中から優秀な学生が集まるHPAIRとはどんな国際会議なのですか?

HPAIRは世界最大規模の学生の国際会議で、アジアの問題を中心に5日間行われます。まず参加するためには、7つのテーマからなるパネルの一つを選び、3つエッセイを提出し、スカイプで面接を受けて、それで合格しなければなりません。3つのエッセイではなぜこのパネルを選んだか、なぜこの会議に参加したいのか、自分の生い立ちについて書きました。
会ごとに参加人数は異なりますが、40ヶ国から主に大学生が200~500名参加し、アジアの外交・人権・経済問題について専門家から話を聞いてワークショップを行います。会議は参加者全員で講義を聴くものとパネルごとに分かれて行うものがあります。まず参加者全員で、グーグルで初めて働いたアジア人の方やアフガニスタンの難民の方などから講義を聴きました。そして、自分は「人権」のパネルを選んだので、人権にかかわるNPOのスタッフの方からLGBTや人身売買、子どもの労働などの講義を受けました。そのあとで、グループごとでワークショップを行いました。私たちのグループは「子どもの労働」について架空の設定が渡されてどう解決するのかを4日間かけて話し合い、最後に専門家の前で発表しました。

-HPAIRで特に印象的だった「難民の現状」と「LGBTの人権問題」とは?

HPAIRで印象に残ったことが2つあります。1つは講義の中で難民の現状を知ったことです。全体講義で初めてアフガニスタンの難民でニュージーランドに渡った方の話を聴きました。難民や移民の流入によって起こる問題などマイナスのイメージが大きかったのですが、実際彼らが求めているのは私たちが当たり前に持っている普通の生活だという話がとても印象的でした。紛争地域に生まれただけで邪魔もの扱いされるなど問題の深刻さも感じ、メディアからではわからなかったことを生で聞けてとてもよかったです。

また、2つ目は日本と海外でのLGBTの立場の差を感じたことです。自分の国の立場でLGBTの人権について話し合ったとき、アメリカでもまだ同性婚が合法化されておらず、日本ではオカマやオネエなど少し笑われる存在だったのに対して、オーストラリアの子の中では普通に自分の友達にもLGBTの子がいて、当たり前の存在だったことが衝撃的でした。日本での扱いの悪さなど、日本にいるだけでは気付けなかったことを学べて、もっと視野を広げたいと感じました。

偏見のない世界を作る手助けをするのが大きな目標

思い込みや偏見で成り立ってしまう社会なので、学校教育などで偏見がなくなる機会が増えればいいと思います。会議に参加して自分の考えが変わる出来事が多くありました。例えば、イスラム教に対しメディアがネガティブな報道ばかりをしていて得る情報が偏っていたけれど、それが一部でしかないと実感しました。
きちんと自分で現状や現実を知るツールとして、英語ができればそういう会議などに参加でき、世界を知ることができるのだと思います。そのために教育の場から変えていけたらと思います。

子どもの英語学習におすすめの洋書3冊

1, Ramonaシリーズ (Beverly Clearly)

2, Matilda (Rohald Dahl)
小学生向け。主人公が小学生で、実際自分もアメリカにいた時読んでいたお話しで、同年代の日常などが書いてあり共感し読みやすい内容です。

3, Animal Farm (George Orwell) 動物農場
リーディングの授業でこの作品を読んだのですが、動物が擬人化されていて、読んだ後でその背景にあるスターリン批判当時の歴史を学ぶことができました。ただの物語ではなく、牧場内が一つの社会になっていて、動物が主人公なので入りやすく、社会の構図や歴史などわかりやすくなっています。

英語はあなたの可能性を広げてくれる!

-英語を学んでいる方へのメッセージをお願いします。

英語を学習することは自分にとってプラスになることばかりです。その言語が話せるようになるだけではなく、自分の可能性が広がります。私自身、英語学習をしていたからこそ模擬国連やHPAIR学生会議への参加ができ、そこでの刺激的な出会いには今でも感謝しています。日本人でありながらアメリカで生活をし、本場の英語を学び、日米の価値観を知り、現在では英語を使って世界の価値観にも触れることができています。英語学習はチャレンジも大きいかもしれませんが、それ以上に得られるものが大きいです。