渋谷教育学園渋谷中学高等学校は、国内難関大学への優れた合格実績を誇る名門進学校としてたいへん人気がある学校です。生徒を信頼して任せることから始まる「自調自考」の精神の養成、英語で理解する能力・議論する能力・発信する能力をバランスよく鍛える「Academic Skillsの育成」など、大学進学実績以上に、国際人としての視野の広さを身につけることを目的としている渋谷教育学園渋谷中学高等学校について解説します。
渋谷教育学園渋谷中学高等学校の概要
渋谷教育学園渋谷中学高等学校は、東京都渋谷区にある中高完全一貫制の共学校です。1924年に設立された中央女学校を1996年に改組し、現在の名称と組織体制となりました。渋谷駅から徒歩7分という立地の良さもあり、首都圏でも帰国生に人気の高い学校として有名です。
外国語教育には特に力を入れており、少人数制を重視した英語教育や豊富な国際体験プログラムを通して、国内の難関大学への高い合格率を実現しつつ毎年多数の海外大学進学実績も上げており、名門進学校としての地位を確立しています。
入学試験は中高完全一貫制のため中学入学時のみ実施され、募集人数は、一般生が3回に分けられた試験で計163名、帰国生が12名となっています(2020年度)。
渋谷教育学園渋谷中学高等学校の基本情報
学校属性:私立 中学校・普通科高等学校
教育目標:自調自考
系列校:渋谷教育学園幕張中学高等学校など
教育体制:完全中高一貫校
生徒数:中学校:男子298名 女子307名、高等学校:男子289名 女子357名(2019年5月時点)
共学/別学:男女共学
学期:3学期制
初年度納入金:111万0,000円(中学初年度)(2019年度)
帰国子女の受入:有
国内大学進学実績:東京大学19名、京都大学9名、医学部医学科53名、早慶109名など(2019年度)
海外大学進学実績:University of British Columbia 2名、University of California, Berkeley 1名など計55名(2019年度
渋谷教育学園渋谷中学高等学校の特徴
「自調自考」の精神の養成 ~生徒を信頼して任せることから始まる
同校の教育目標の主幹となるのが、「自調自考」の精神の養成です。「自らの手で調べ、自らの頭で考える」姿勢は、国際化や情報化が進み、変化が激しく将来の予測が難しいこれからの時代に世に出ていく生徒たちにとって最も必要なものであると考えています。
生徒の自主性と自己管理能力を高めるための取り組みは、勉学・行事など学内のあらゆる場面で生徒を信頼して任せている点にも表れています。
独自の学習計画図「シラバス」を活用して、生徒にあらかじめ授業進行計画を示していることもそのひとつです。この取り組みでは、中高6年間の課程のどの辺りを学んでいるのかを生徒自身が把握し、自ら目標を設定して授業に積極的に参加していくという主体性を身につけることが期待されています。また、修学旅行を現地集合で行っているのも目的は同じです。自ら考え、計画を立て、主体的に行動することを通して、「自調自考」の精神を養うねらいがあります。
「Academic Skillsの育成」 ~中高一貫のメリットを活かしたきめ細やかな教育
特に英語教育において際立った定評のある同校ですが、授業では「Academic Skillsの育成」を目指して、英語で理解する能力・議論する能力・発信する能力をバランスよく鍛えます。
カリキュラムは、多読やネイティブ教員によるエッセイ・ライティング指導などさまざまな活動を取り入れています。「英語を学ぶ」、つまり文法などの知識習得に終始せず、身につけた知識を活用して「英語で学ぶ」ことを強く意識したカリキュラム設定は、国際舞台に出ていったときに要求される実践的な英語力の養成を想定しています。
また、カリキュラムは、学習計画図「シラバス」に則って中高一貫の6年間を2年間ずつの3ブロックに分けて実施し、第1段階の中学2年までに中学の英語課程を修了し、同時に英検3級取得を目指します。
さらに、外国人講師による少人数制のクラス編成のもとで英会話力の向上を図っています。6年という長期間の継続的な学習計画の設定が可能である中高一貫のメリットを活かし、少人数制によるきめ細やかな教育を実現できるシステムを構築できていることが、同校の優れた英語教育実践の基礎になっています。
万全の帰国生受け入れシステム ~多様性と自発性の尊重
同校では、毎年入学してくる10数名の帰国生の受け入れシステムにも万全を期しています。これからのグローバル社会で活躍する人材に求められるものは、単なる技術としての英語力だけでは足りず、違いを認めて多様性を尊重することができる価値観を身につけることだと考えています。同校では、そのような価値観醸成を目的として帰国生受け入れを行い、中高6年間をかけて多様性を尊重する価値観を大きく育てていこうと考えているのです。また、この取り組みに生徒自身が積極的に参加して身につけていくことを期待し、その自発性を尊重することで、「自調自考」の精神を養成することも目指しています。
英語の授業では帰国生のみ参加の取り出し授業が用意されており、主にネイティブ教員が担当します。ここでは、語学としての英語の教授にとどまらず、文学や歴史を含んだ横断的なテーマを深掘りしていく学び方をしていきます。リサーチにディスカッションやプレゼンの機会を採り入れた欧米流の授業スタイルによって、グローバル人材に必須の素養とされるCritical Thinkingの向上と英語以外の科目の学力を合わせて向上させることを目指しています。カキュラムを6年間続けることで、多くの帰国生がハーバード大学やスタンフォード大学をはじめとする海外の名門大学に進学しています。
このような帰国生の存在は、クラスや英語ディベート部・ESSといった英語系のクラブで一緒に学ぶ一般生にも良い刺激を与えています。多くの一般生がTOEFL iBTでの100点超えを達成し、海外大学への進学を自ら選択し実現させています。
国際理解教育の取り組み ~広く多様な世界を感じるために
同校では、生徒を「国際的視野を持つ人間」を育てることを教育目標の1つとして掲げ、広く多様な世界を感じるための国際理解教育に取り組んでいます。
海外研修は、希望者を対象に、中学でオーストラリア、高校ではアメリカ・イギリス・シンガポール・ベトナムで実施されています。生徒たちは、語学力向上はもちろん、現地の同世代の若者との交流などさまざまな経験を通して異文化理解を深めて帰国します。また、希望者を対象とした高校時の1年間の海外留学では、取得した単位を留学単位として認めています。
同校は、このような取り組みを通して国際人としての視野の広さを身につけるとともに、生徒たちにさまざまな背景・価値観を持つ人々と協働していくうえで欠かせない、「約束を守る」「思いやりを持って接する」といった倫理観を備えることの大切さを知ってほしいと考えています。
まとめ
同校はいま、国内難関大学への優れた合格実績を誇る名門進学校としてたいへん人気がある学校です。その教育方針は、6年間の学習計画を明示したうえで、生徒の自主性・自律性を尊重し、主体的に学んでいく姿勢を身につけさせることを柱に据えています。中でも特に定評のある英語教育は、過去にはSGHの指定を受けたことからも明らかなように、中高一貫のメリットを活かした長期的できめ細やかなカリキュラムの設定と充実した帰国生向けの授業が行われています。そして、取り組みは、国内難関大学はもちろん数多くの海外の名門大学への進学という形で結実しています。
また、海外研修や海外留学制度をはじめとする豊富な海外体験プログラムを通して、国際人としての視野の広さを身につけさせる取り組みも行っています。海外で働くうえで特に求められる高い倫理観の重要性を認識させることにも積極的であり、今後グローバルリーダーを数多く輩出することが確実視されている将来性豊かな学校です。