名門NYUアブダビ校_4回留学した現役学生が見るリベラルアーツ教育とは | バイリンガルへの道

名門NYUアブダビ校_4回留学した現役学生が見るリベラルアーツ教育とは

生徒は80国籍!4回留学した現役学生が見る名門NYUアブダビ校

世界大学ランキングで東京大学に10位以上の差をつけるNYU(ニューヨーク大学)は、アラブ首長国連邦、アブダビにもキャンパスを構えています。2010年に開校したNYUアブダビ校は、NYUが提供する教育プログラムを実践する、世界に11ある校舎のうちの一つで、ニューヨークと上海キャンパスに加えて、NYUの卒業証書がもらえる3つ目のキャンパスです。NYUの中でも、世界各国から選び抜かれた優秀な学生が肩を並べる素晴らしい環境で、アブダビ校ならではのいくつかの特色もあります。

アラブ首長国連邦にあるNYU(ニューヨーク大学)アブダビ校に在学中のキャタル教師、黒田真梨子先生に、NYUアブダビ校について興味深いお話を伺いました。

フィレンツェ、プラハ、ロンドン、ニューヨーク…11か国のどこへでも4年間で4回も留学できる

NYUアブダビ校にはどんな特徴がありますか?

一つ目の特徴は、とても多様性に富んでいることです。例えばニューヨーク校は1学年に約4,000人いますが、アブダビ校は、私の学年ですと150人程しかいません。その150人が、世界80カ国から来ています。2人に1人は別の国の生徒ということです。
そのため授業が少人数制で、私も15人以上での授業は受けたことがありません。最も少なかった授業では、先生1人に対して生徒が4人、というのが2回ありました。とても贅沢な環境で、じっくりと濃い授業を受けることができました。

もう一つの特徴は、留学制度が充実していることです。NYUが持っている11カ国のキャンパスに自由に行くことができ、しかも4年間で4回も留学ができます。
私は、フィレンツェ、プラハ、ロンドン、ニューヨークに留学しました。どれも素晴らしく楽しい経験でした。

私(笹原)もNYU時代にフィレンツェ校に留学しました。とても美しいですよね。

大学とは思えない、絵画のようなキャンパスでした。街並みも美しくて、歴史をタイムトリップしてルネッサンス時代に住んでいるようでした。
フィレンツェで受けた授業もロマンチックで、ガリレオガリレイについての授業の時は、毎日の課題が「朝5時に起きて、自作の望遠鏡で月を見て、その月を描く」というものでした。このように体験型の授業がほとんどで、テキストを使ったり、パワーポイントを見てノートをとったり、という授業は全くありませんでした。

The Falcons at a dragonboat competition.(NYUアブダビ校のウェブサイトより)

The Falcons at a dragonboat competition.(NYUアブダビ校のウェブサイトより)

グローバルな人材を育むリベラルアーツ教育 専攻を決めるのは2年生の終わり

アブダビ校では何を専攻されましたか?

私は美術専攻で、その中でも好きな美術を選ぶことができるので、グラフィックデザインを専攻しました。
グラフィックデザインとは、簡単に言うとポスターのデザインや雑誌のレイアウトのようなもので、色や線、タイポグラフィなどを使って、デザインからどのように情報を伝えるかという、一種のコミュニケーションでもあります。

なぜグラフィックデザインを選んだのですか?

NYUの教育はリベラルアーツといって、自分の好きな専攻に加えて他の分野の勉強もできるのが特徴です。最初の1・2年次は専攻を決めずに必須科目を勉強して、2年の春学期に選考を決めます。
私は入学する前、ジャーナリズムに興味があってNYUに進学したのですが、1年生の時にグラフィックデザインの授業を受けてとてもおもしろくて、こちらを専攻しました。

Lots and lots of homework. (NYUアブダビ校のウェブサイトより)

Lots and lots of homework. (NYUアブダビ校のウェブサイトより)

ヘルスデザインは薬では治せない医療の形 子どもたちの感情コントロールのためのパズルを研究中

現在、大学院ではヘルスデザインを研究されているそうですね。
ヘルスデザインと聞くと、医療とデザインの融合のようなものを想像しますが、実際はどのようなものですか?

今年、バンクーバーにある学習障害を持つ生徒さんだけが通う学校で仕事をさせていただきました。そこの生徒さんたちは感情のコントロールがとても難しく、学習がうまくできません。やる気がなさすぎて勉強できないとか、逆に多動すぎて勉強できないとかです。日本だと「静かにしなさい」「ちゃんと座りなさい」と言ってしまいそうですが、彼らにはそれがとても難しいのです。
そのような子どもたちのために、いろんなアクティビティが描かれたカードを作りました。やる気のない子には、トランポリンでピョンピョン跳んでエネルギーを出すカード、騒ぎすぎてしまう子には、自分をぎゅっと抱きしめて気持ちを落ち着かせるカード、というように、その生徒に合ったアクティビティを提案するようなカードをデザインして、今も実際に教室で使われています。
ヘルスデザインとは、薬では治せない医療の形だと思っています。デザイナーというのは人のニーズを考えることが一番の仕事ですので、一人一人が何を必要としているかを考え、それを作り出すのがヘルスデザインです。

学生生活はあと1年残っていますが、何をされるのでしょうか?

自分の卒論です。英語で8,000ワードくらいの量を書く必要があります。。
私の研究では、子どもたちの感情コントロールにマインドフルネスを使うためのパズルを作っています。
マインドフルネスとは、全身全霊を今に集中するこということです。普段私たちは、過去のことを考えているか次のことを考えているかで、現在のこと、つまり今自分がどんな感情を感じているのかを考えることってあまりないですよね。
私は自分のマインドフルネスの訓練で、自分の気持ちを絵に描く、ということをしていました。同じ経験を子どもたちにも教えたかったのですが、まだ小さい子どもたちに絵を描かせるのは時間がかかってしまうので、いろんな形のピースを含めたパズルをデザインして、そのパズルで自分の気持ちを表現することができないかと考えました。
来月、向こうに帰ったらそのパズルを試験導入することになっています。子どもたちが受け入れてくれるか少し不安ですが楽しみです。

黒田先生の夢を教えてください。

アブダビに戻って、ヘルスデザインの研究所を開きたいです。今デザインにはコクリエーション(共創クリエーション)というフレーズが入ってきています。今まではデザイナーがユーザーのために物を作っていましたが、コクリエーションは、ユーザーとデザイナーが一緒に考えて新しいものを作り出していく、という考えです。それを是非ヘルスデザインに取り入れて研究を続けていきたいです。

右が黒田真梨子先生、インタビュアーである左のキャタル笹原瑚都も実はNYUの卒業生

右が黒田真梨子先生、インタビュアーである左のキャタル笹原瑚都も実はNYUの卒業生

「高校までずっと日本で学生生活をしていたので、アブダビへ進学するのはとても勇気がいりました」

NYUに在籍しながら、現在はカナダのエミリー・カー美術大学の大学院に留学中の黒田先生。世界を舞台に学業に励む姿はとても度胸がある国際的なイメージがありますが、小さい頃の夢はパン屋さんで、高校までずっと普通に日本の学校で過ごしてきたそうです。
「不安もいっぱいありましたが、それでも、自分の将来のためだと信じていたので、怖くても得るものは大きいと思って、それをモチベーションに変えて挑戦しました。」
黒田先生が留学で得た学びについては、こちらでご紹介しています。

英語を勉強するための留学は不要!ニューヨーク大卒生が語る留学と英語学習の関係英語を勉強するための留学は不要!ニューヨーク大卒生が語る留学と英語学習の関係