Brown University(ブラウン大学)
ブラウン大学の入学難易度(5段階):★★★★★
<ブラウン大学の概要>
プロビデンスという言葉は「神意」の意味で、これが土地の名になりそこに学舎が建てられれば、大方はキリスト教の流れであろうと思われるのは当然で、ロードアイランド州プロビデンス市に創設されたブラウン大学も、やはり前身はバプティスト系の「カレッジ・オブ・ロードアイランド」という教育機関だった。1764年、アメリカ建国12年前のことだ。これが、 1804年にニコラス・ブラウンからの寄付金により、現在地であるロードアイランド州プロビデンスに移転し、ブラウン大学と改称した。
<ブラウン大学の基本情報>
大学属性:私立
創立:1764年
校訓:In deo speramus(「我々は神のもとに希望を持つ」)
学生数:8,619人(学部生6,182人。大学院生1,974人(医学生.463人)
共学/別学:共学
専攻: 経済学、生物化学、国際関係
学期:セメスター制
学費:約$47,000/年 生活費約$12,000/年
学生/教員比:8/1
必要なTOEFL点:iBT-100/ PBT-600
特に重視されるもの: 高校の学業成績
重視されるもの:クラスランク・推薦状・SAT*、ACTなどのスコア・エッセイ
入学率:55.78%(合格者数:2,759人/入学者数:1,539人)
ノーベル賞受賞者数:8名
<ブラウン大学の特徴>
この大学はいわゆるアイビーリーグ8校のひとつで、2010年度のアメリカ学生満足度調査では、ハーバード大学を抑えて1位にランクされているのだ。出願者数は年々増えており、入学競争率はますます高くなっているという、まさに注目される大学なのだ。
ブラウン大学を語るとき、欠かせないことがひとつある。冒頭書いたように宗教性がある教育機関として発足したブラウン大学は、同じく宗教系のほかのアイビーリーグ校とは違い、その特徴として宗派的な壁を一切築かない姿勢が厳として守られていることだ。いま、標榜されるブラウン大学のリベラルな学風には、歴史的背景があるわけだ。
プロビデンス市は、ロードアイランド州の州都だ。東部の高台約60ヘクタールに大学のキャンパスが広がり、大学周辺はイーストサイドあるいはカレッジヒルと俗称され、高級住宅街となっている。自然との融合を重視したところは、他のアイビーリーグ校のキャンパスと変わらない。キャンパスは、メイン・グリーンと呼ばれる芝生公園をめぐる形でデザインされている。
クリスティーナ・パクソン現学長は前代を引き継いで女性で、それもアイビーリーグは勿論、主要総合大学として初めての黒人女性だ。そのあたりからも、ブラウン大学の進歩的な政治姿勢がうかがえる。
リベラルな学風といえば、ブラウン大学の人気のもうひとつの理由に独自のカリキュラムと前衛的な研究、さらにそれを支える教授の質の高さがある。さらに、物理学の泰斗、レオン・クーパー教授のようにノーベル賞受賞者ながら研究の傍ら、初学年のセミナーに出講するなど、ブラウン大学の学生は世界的な研究者の謦咳に触れることができる。前述のように2002年にアイビーリーグは勿論、主要総合大学として初めて黒人女性を大学総長として迎えるなど、保守的なイメージが強い他のアイビーリーグ校と好対照を見せている。学生は世界62カ国以上から集まっており、おのずと国際色が強い。
さて、さらに具体的な分析を試みるとしよう。前述の通り、ブラウン大学は毎年受験倍率が上昇している。直近のデータでは12倍程度にも達する最難関大学の一つになっている。大学が発表する公式情報では、2009年度には入学志願者数が大学創設以来過去最高を記録し、倍率はなんと17倍以上に達している。レベルの高さを示すデータとして、2009年入学組の合格者の約半分、47%は高校では首席か次席だった生徒で、入学者の約40%が高校では首席、94%がトップ10%に入っていた生徒だ。煎じ詰めれば、ブラウン大学は掛け値なしの超難関大学なのだ。
注目していいのは、純粋な学問と研究の場を提供することを目標としているブラウン大学は、メディカル・スクールのほかは、ビジネス・スクールやロー・スクールあるいは教員養成大学院などの専門職大学院の設置を大学創設以来一貫して避け続けていることだ。2010年からエグゼクティブ用のEMBAプログラムを開始しはしたが、この方針は、ブラウン大学が他のアイビーリーグ校とは歴然と対照的だ。それがために、コロンビア大学やハーバード大学が、戦後の日本で企業や官庁との提携を通じて知名度を高めることになったと対照的に、ブラウン大学は日本ではさして知られることはなかった。同じ理由で、ブラウン大学は企業等からの献金が他の主要大学に比べて非常に少ない。従ってこの大学は、アイビーリーグ校では経済基盤が最も脆弱で、それが施設の規模や教員数に影響している。
閑話休題。
ブラウン大学は日本ととても近しい関係がある。開国の英雄、ジョン万次郎の勧めで、 慶應義塾大学の創設者である福澤諭吉がブラウン大学で西洋高等教育を学んだのがきっかけで、1868年に慶應義塾が創設された、とされている。諭吉に多大な影響を与えた経済学者は当時の学長フランシス・ウェーランド(Francis Wayland )であり、「戊辰戦争の最中でもウェーランドの英書経済の講釈をしていた」と福翁自伝(王政維新)にある。慶應義塾が、5月15日を「福澤先生ウェーランド経済書講述記念日」としている所以だ。
まとめ
ブラウン大学は異色かつ魅力的な大学だ。6歳で米国に渡り、少年時代はIQ180の天才児として「TIME」誌の表紙に登場したマシ・オカ、本名は岡 政偉(おか・まさより)は、ハーバードとMITを去ってブラウンにきた。故ケネディー大統領も同じくハーバードからブラウンへ移っている。直近では女優のエマ・ワトソンがイェール大学・コロンビア大学・ケンブリッジ大学を蹴ってブラウン大学で学び文学士を得た。最高学府、大学にも味わいの違いあるのだ。