三田国際

日々成長を実感できる授業 三田国際学園が実践する「世界標準の教育」

2015年に戸板女子中学校・高等学校を改名し男女共学化、三田国際学園としてはまだ3年目にもかかわらず、教育進学総合研究所による「グローバル教育に力を入れている中高一貫校ランキング」で堂々の一位、入試の競争率も高い。
その魅力を探るべく、大橋清貫(きよみち)学園長に、まずは同校が掲げる「英語力」「コミュニケーション力」「サイエンスリテラシー」「ICTリテラシー」という4つの柱について伺った。


収録は用賀にある校舎内で行われた。中央に広々とした中庭があり生徒がくつろいでいた。(左から、デイヴィット先生、楢島先生、キャタル三石代表、大橋学園長、キャタル笹原瑚都、田中教頭)
 

「中高一貫校ランキング一位」 4つの柱が育む、世界に貢献できる人材

「学校ですから教科書の内容を理解することはもちろんなのですが、そのずっと先の、社会に出たときに活躍できるために必要な資質や条件、その基礎力は中等教育の6年間に学ぶことが必要だ、と私たちは考えています。
世界共通語である英語を日本語と同じように使いこなし、世界中で思いを伝えあうコミュニケーション能力を持つ。21世紀に必須な科学的な思考力を身につけ、世界にあふれる情報を、ICTを駆使して取捨選択する。
そのような世界標準の教育を取り入れて、その結果、知識はもちろん、自分で考えるという力もつけていく、これまでそのような学校づくりを目指して取り組んできました。
開校3年目となり6学年すべて揃いまして、当時中1、高1だった生徒がそれぞれ3年生になりましたが、生徒たちは当時想像していた以上の進化を遂げていて、非常に手ごたえを感じています。」

中学2年生の宿泊語学研修Global Villageでの様子(同校HPより抜粋)

 

「相互通行型授業」 考える力はスキルではなく習慣で身につくもの

では具体的に、生徒たちに見られる進化とはどのようなものだろうか。
「中1の入学当初は、意見を聞いても、好きか嫌いか、良いか悪いかくらいしか答えられない状態です。それが中3レベルになると、自分の主張を述べる際に、論理、背景、それを証明する数値的データや一般論を示しながらプレゼンできるまで成長します」

教頭の田中先生によると、それは三田国際学園の「相互通行型」授業による成果だという。
「これまでの日本の学校教育は、一方通行型が大半でした。先生が知識を教え、生徒たちはそれを書き写し暗記し、覚えたことがテストで答えられれば良しとされました。
しかし本校では、知識をインプットするだけでなく、その背景や、なぜその知識が必要なのか、も考えます。さらにそれについて自分はどう考えるのか、という正解がない問いにも向き合います。自分たちで調べ、推論し、自分の主張を構築する中で、他の人のさまざまな意見も尊重できるようになります。
それは、社会に出て未知の問題に直面した時に、おそれずに向き合い解決する力となるのです」

 

「トリガークエスチョンから始まる授業」 なぜ?を追いかけ、考察し、議論する

三田国際学園の授業はすべて、教員が投げかける「トリガークエスチョン」から始まる。これは生徒たちの知りたい、学びたい、という知的好奇心をくすぐり、自ら考えることの動機となっている。
実際に出されたトリガークエスチョンの例を、田中教頭に挙げていただいた。
「これは中1の地理の授業ですが『エボラ出血熱が流行しました。あなただったら、これを抑制するためにどの地図を使いますか?』
メルカトル図法とかモルワイデ図法とか正距方位図法とか、普通の授業では、この地図はこんな特色です、で終わってしまう。でも、トリガークエスチョンにより、分布や拡散を明確に示すにはどの図法が適しているだろう?と、ただ覚えるだけではなくて、実際の社会の中でどう活用するのかという知識を学びます。
中3の公民になると『法律とか、宗教とか、道徳が全くなくなってしまったら、人間はどういう行動をとるのだろうか?』
これは近代の政治思想家が仮説している自然状態の勉強なのですが、生徒たちからは興味深い解答がたくさん出てきます。しっかり考えているな、とびっくりさせられることがたくさんあります」

MIF(学校祭)での様子。大勢の前でも堂々とプレゼンをすることができる(同校HPより抜粋)

 

インターナショナルティーチャーズとの連携で、本物の英語教育を提供

次に、英語学習についての取り組みを、英語担当の楢島(ならしま)先生に伺った。
「これまでの日本の英語教育で続いてきた、文法と長文読解を中心にしたテストのための授業では、大学まで勉強してきた私でも、英語を使いこなせるようにはならず悔しい思いをしました。本校では、あらゆる形で、あらゆる場所で、使いこなせるような英語力を、3年、6年で習得するような授業を展開しています」

読む、聞く、書く、話すという4技能の重要性はわかっていても、それを十分に教えられる人が少ないという現実が、従来の教育現場にはあるわけだが、その辺はどのように対処しているのだろうか。
「本校には、デイヴィット先生のようなネイティブスピーカーの教員による、インターナショナルティーチャーズという組織があり、授業はもちろん、課外活動などにも携わっています。彼らは母国で英語教授法も学んでいるので、日本の英語教員とうまく連携しながら、4技能全ての訓練ができる環境を作っています」

英語も他の教科同様、生徒たちが主役の相互通行型の授業が行われているということだが、具体的な取り組みを一つ挙げていただいた。
「例えば高1生の英会話では、自分が今まで出会った中で印象に残った本を友だちに紹介する、ブックレビューという活動があります。今まで読んだ本を振り返り、選ぶところから始まります。それを英語におこす作業ではライティング力が必要です。どうしたらこの本を読んでもらえるか、買ってもらえるか、セールスピッチの原稿を作りそれを発表する作業では、クリエイティブな力も養われます。またワークショップという形で、実際にその本を友だち同士で交換したり、評価しあったりもします」

自分で原稿を英作し、それを添削してもらうことは英語力向上にとても効果的ではあるが、生徒全員分をチェックするのは膨大な作業になるのではないか?
「そこはインターナショナルティーチャーズが力を発揮します。日本の教員がする何十分の1の時間で添削できて、しかも何度でも対応可能です。このことが生徒たちの英語力を上げるきっかけとなっています」
またレシテーション(暗唱)など、英語のリズムを感じ自ら表現することで、英語を体で習得できるカリキュラムもあり、こちらもネイティブスピーカー教員が大きな役割を果たしているようだ。


中学2年生の宿泊語学研修Global Villageでの様子(同校HPより抜粋)

最後に、「相互通行型」授業の推進のためのリーダーを担っている田中教頭に、もし時間や場所やお金の制限がないとしたらどんな授業をしたいか、夢の授業について伺ってみた

「生徒と一緒に会社を創りたいですね。起業して、どう資本金を調達して、どういう規制を乗り越えて、自分たちで何を売るのか、配当があって、人事や経理、そういったものをしっかりと考えさせたいです。今学んでいることや、考えていることが、社会と経済の中でどうなっていくのかを、学校の中だけじゃなくて、外でやってみたいですね」

この春、初の卒業生たちが大学へと進学する。大橋学園長は「三田で学んだ生徒は、先生が一方的に講義をするような従来型の大学には興味を示しません。むしろ三田と同じような相互通行型の学びのスタイルがあり、自分たちの知識への欲、自己の成長実感が得られるような大学を選択しています。そのような場でまた自ら学び、考え、将来を切り開いていってくれたらいいなと思います」と目を細めた。

入学時からすでに生徒たちの将来を見据え、そしてどういう人材を教育現場で育てていくべきか、大きく明確なビジョンを持ちそれを学校全体で実践していく。
三田国際学園の魅力は、先生も生徒も一緒に未来と世界を見て成長していく、その姿なのだろうと感じられた。

この記事は、2017年5月19日、ラジオ”In the Dreaming Class”の内容です。ラジオ全音声を聞かれたい方は→こちら

子どもの将来に強い学校の選び方(三田国際学園 大橋学園長)

20150324

英語塾キャタル代表の三石郷史によるラジオ番組
《In The Dreaming Class》

今回のゲストは、中高一貫の「インターナショナルコース」を作り、英語に強い三田国際学園の大橋学園長です。
三田国際学園は、英語で通常教科も教えるイマージョン教育を導入するなど、今、大きく注目を集めている学校です。
グローバル社会で活躍できる人材を育てることを目的とした三田国際学園の取り組みとは?
これからの時代を見据えた教育改革に迫ります。

英語塾キャタル代表の三石郷史によるラジオ番組《In The Dreaming Class》、今回は三田国際学園 学園長 大橋清貫先生にお話を伺った。

塾経営から学校教育に入ったきっかけ

三石:「まず三田国際学園の紹介をしてください。」
大橋:「前身は戸板女子中学校・高等学校という名前だったのですが、この4月から校名を変更し三田国際学園となりました。女子校の教育を長くやってきましたが、創立から数えてちょうど100年になりました。次の100年をさらに活躍する学校にするために世界標準の教育をしようということで再スタートしました。」
三石:「先生は塾の経営をご自身で始められてそれから学校に転身されましたが、塾の経営を始める前は一般企業でサラリーマンだったわけですね。一般企業で働いていた方が教育にどんな問題意識をもっていたのですか。」
大橋:「チャンスとそれにふさわしい環境さえあればどんな子でも伸びるという信念がありましたので、機会があれば塾を作りたいとずっと考えていたのですが、いよいよその時が来たという気持ちが勝って学習塾を開きました。」
三石:「塾を離れて学校教育に向かわれたそのパッションの移り変わりはどこにあったのですか。」
大橋:「中学生や高校生が学校教育でどうしてもっと能力が伸びないのだろうと常々思っていました。学習塾の側からはもっと学校でこうやってくれればこの子たちはもっと伸びるのにと思っていました。自分がもし学校を作ったときにはこういう教育をやってみたい。そうすれば学習塾とコラボしてもっともっと子どもたちは伸びるのにとずっと思っていました。機会があれば学校教育に入ってみたいなというのが目標の一つでした。」
三石:「実際に学校教育をやられてみて塾と学校の共通点が何かありますか。」
大橋:「似ている点は先生になる人は子供たちがみな好きで、子供たちの笑顔が見たいから教壇に立っていることだと思います。学校と塾とが違うところは、塾は民間ですから塾間競争が激しくて月単位でやめてしまうことも可能です。学校は入学したら普通は卒業までずっといますよね。中には結果を出そうと頑張っている先生もいますが、学校では競争原理は入ってきません。」

 

三田国際学園でのアクティブラーニングの授業の実際

三石:「今の三田国際の中では塾の学習法を学校の中に取り入れているのですか。それとも全く違うやり方をしているのですか。」
大橋:「学習塾ではほとんどの先生が生徒の学習意欲を引き出すことに力を入れていました。学校教育は長いこと一方通行的な授業をやってきました。残念ながら大学入試が知識を問う問題が圧倒的に多いので、生徒にたくさんの知識を覚えさせることに力を割いていたのが現実です。」
三石:「三田国際では一方通行ではないやる気を引き出す授業をどのように行っていますか。」
大橋:「いま教育界ではアクティブラーニング(相互通行型授業)という言葉が流行っています。一方通行型の授業では生徒は常に受け身になって教えられたことしかできなくて「習っていないのでできません」という答えが返ってきます。これでは社会に出たときに困ります。企業の第一線で活躍される方が「最近の学生は習ってないことはできないと簡単に言うがそれでは困る」とよく言われます。学校教育では答えのある分野に対してはトレーニングしてものすごく優秀な人間にするのですが、自分で問題を解決しようという教育はほとんどしていないのです。」
三石:「今アクティブラーニングに対して学校教育に取り入れるのは簡単ではなく、国を挙げて取り組む課題だと思うのですが。」
大橋:「学校では研修がないと無理だと思います。いま2年目が終わったところですが、1年間はアクティブラーニングの研修を繰返しやっていました。先生方は実践を通してその効果に驚いています。」
三石:「先生方はどう学んでいるのですか。」
大橋:「先生方は自分からは話さないでむしろ生徒に考える時間をたくさん与えます。考えるきっかけとして、最初の5分ぐらいで先生が「今日の授業はこういうことをみんなで考えよう」とトリガークエスチョンを投げます。あとはグループで自分の考えをお互いに言い合っていく中で思考が研ぎ澄まされていくのです。いままで恥ずかしいとか自分の意見を言うのがいやだとかで発表をしなかった生徒も参加するようになります。」
三石:「評価はどうするのですか。」
大橋:「いままでのように記憶力や計算のスピードや正確さを問う問題はあまり適切でありません。思考力を問う問題として例えば英語のエッセイの途中まで示して続きを作れという問題を出していくのです。もちろん英語の知識は必要ですが、前半の英文をどうやって展開していくかを自分で考える必要があるわけですね。」

 

海外移住の準備として三田国際学園で行っている英語教育

三石:「三田国際に生徒を送り込む家庭はどんな方なのですか。」
大橋:「三田国際を選んでくれるご家庭は、わが子が厳しい社会に出たとき活躍できる人材を育ててくれるかどうかという視点で見てくれています。なかなかそういう学校が中等教育には見られないのです。最近は教育のため海外に移住するというご家庭が増えているのですが、そういうご家庭が私どものような教育をする学校があれば考え直してくれるのではないかと思っています。」
三石:「そういったご家庭の子息は高校卒業後どういった進路を選ばれるのですか。」
大橋:「最近は国内の大学よりもむしろ海外の大学に入られる方が増えてきていますね。」
三石:「その準備期間としてしっかりと英語教育をやってくれるところが必要ですが、三田国際ではどういった英語教育をやっていくつもりですか。」
大橋:「三田国際では英語は本科で8コマ、インターナショナルクラスで10コマです。原則はOEで、ネイティブの先生が授業を行っています。文法の授業も必要なので、週2コマは日本人の先生が行っています。」
三石:「8コマではそれほど多くありませんが、それだけで十分ですか。」
大橋:「他の教科、社会や数学や理科の授業も英語でするということです。インターナショナルクラスでは帰国子女や国内のインターナショナル小学校に通っていた生徒たちを中心にある程度英語で授業はできるのです。そこまでの英語力はないけれど、英語以外の教科も徐々に英語で指導する時間を増やしていくことで英語力がかなり上がっていくと思います。社会の先生は英語の発音があまりうまくないのですが、しかしそれでも自身が授業で使う文献、例えば独立宣言を日本語でなく原文で読むなどしています。」

 

こんな教育を行える環境作りが理想

三石:「大学を卒業して教育ビジネスに入っていこうと考えている次世代の人に対するメッセージをお願いします。」
大橋:「今まで教育学部以外の他の学部の学生が先生にならなかったのですが、これからは違います。先生たちがやりたいと思っていることを教育の現場で実現しやすい時代に入ってきています。教職課程を取られたら学生の間に教育ビジネスのチャンスがありますから、一度体験してみてください。アルバイトなどで体験していただければ教育は面白いなと分かっていただけるのではと思います。」
三石:「もし時間・場所・お金の制限が全くなければ、こんな人に向けてこんな授業をやってみたいという夢の授業を教えてください。」
大橋:「子供たちが自由に考えられる空間を作ってみたいと思います。教室だと机に向かって先生が話すのを聞くことが中心になりがちですが、自由に語り合うのなら何も教室でなくてもソファに横になっても芝生に寝転がってもいいですね。そこで語り合うことの大事さ、そこから学ぶことの大事さ、人の意見を聞くことの大事さ、自分と違う意見を受け容れる子供たちができやすい環境作りをして、できるだけ多くの国の人に来ていただきたいと思っています。」
三石:「ありがとうございました。」