これからは「自分の考えを英語で表現できる力」が評価される。そのために必要な英語教育とは 上智大学言語教育研究センター教授 吉田研作先生


吉田先生は英語教育、バイリンガリズム、異文化間コミュニケーション教育の第一人者で、 文科省などの外国語教育に関する各委員会にも携わり、英語が使える日本人の育成に関する研究、活動をされている。大学入試にも活用される4技能テスト「TEAP」の開発者でもある。

 
 
吉田先生は小学生時代をアメリカとカナダで過ごした帰国子女でいらっしゃいますが、純ジャパと呼ばれる、いわゆる「日本でしか英語教育を受けていない人」に英語を教えてこられた経験から、理想の英語の勉強方法とはどのようなものだとお考えですか?

自分にとって意味のあることを英語にしていくこと、です。
よく日本の英語教育の中で見られる、形式だけ練習したり、文法の規則だけ覚えていく手法では、なかなか英語が身につきません。
一方で、自分はこれを言いたいんだけどどう言えばいいのかな、という時に、それにはこんな表現でこんな単語を使うのか、と知り、使ってみて言いたかったことが実際に言えると、それは自然に頭に入って、記憶に残ります。

 
先生の著書「起きてから寝るまでシリーズ」にも書かれているように、自分の生活のシーンに英語をはめ込んでいく、ということが、人間の記憶のメカニズムから考えても、最適な学習方法と言えるのでしょうね。

生活というのは人それぞれで、自分の生活に必要な英語も人それぞれなんです。自分の生活のシチュエーションに合わせた英語を、体で覚えていくことが有効です。英語を単に文字で覚えていくのではなく、身振り手振りを付けたり口に出すことによって音や体で覚えていくと、スーッと自分のものになっていきます。

 
上智大学ではどのような英語の勉強方法を取り入れているのですか?

上智大学の英語の授業は初級クラスから上級クラスまで全て英語で授業をやっています。
文法の規則を教えるような伝統的なことはほとんどせず、英語で授業をやりながら、生徒同士がディスカッションしたり、英語を実践的に使っていくことによって、最終的に英語を身につけていくという方法を取っています。
上智大学は帰国子女が多いから、なんて言われますが、全学年の全学部が対象ですので、必ずしも全員が英語力が高いわけではありません。それでもオールイングリッシュでの授業は十分に可能です。

上智大学1号館(上智大学Facebookより抜粋)

 
2020年から大学入試が大きく変わり、英語では4技能試験が導入されることになりました。まずは、どういう問題意識があって4技能化へ進むことになったのでしょうか?

英語に限らず、語学は一つの技能に偏っていては身につけることができません。聞いて話して読んで書く、これは日本語で私たちが日常的にやっていることです。
従来の英語教育では、英文を読んで理解して終わり、とか、CDを聴いて理解して終わり、という「読む」「聞く」の2技能だけの学習になってしまっていました。これでは語学として成り立ちません。
実際に外国の人たちとコミュニケーションするためには、自分の考えを「話す」「書く」ことも含めた、4技能を統合して身につけていく必要があります。つまり私たちが日本語で普段やっているようなことを英語でもできなければ、本当に使えるようにはならないのです。

 
よく「英語がペラペラになりたい」と言いますが、単にハンバーガーを注文できてもペラペラに見えますね。そうではなくて、意見を行ったり議論をしたり、自分がどう思考しているかを示すことまでが、今後の4技能試験では求められるのですね。

そのとおり、必要なのは「自分が考えていることを表現していく力」です。
今回の学習指導要領には、重視するべき三要素として「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体的に学習に取り組む態度」が挙げられており、これらをベースにして人間性を高め、社会と関わっていくことを目指しています。
カッコの中に適語を入れるような文法的な問題は「知識・技能」で、今まではこれだけをやってきたわけですが、これからは「思考して、判断して、その考えを書いたり話すことによって表現する」ということを、英語だけではなくすべての教科においてできるようになることが重要視されるのです。

 
それでは学校の英語教育は大きく変わる必要があるのですね。

従来のような、文法の知識があるかどうかや、訳ができるかどうかではなく、自分の言いたいことを言えているか、書けているか、つまり思考して判断して表現できているかどうかを評価していくことになります。ということは、授業の中でも個々の生徒が自分の思っていることを表現できるようなディスカッションの場面を多く設けなければなりません。

 
センター試験に替わる新テストには民間の4技能試験が採用されますが、現在の英語教育が抱えている課題についてお伺いします。まずは高校での英語教育の課題は何でしょうか。

今までの課題は入試ですよね。4技能の重要性はわかっているし、授業にオーラルコミュニケーションを取り入れてもいますが、ゴールである大学入試が2技能なので、結局、先生も生徒も、入試に関係がない「話す」「書く」の技能はまあいいや、となってしまっていました。しかもリーディングが200点でリスニングが50点ですから、ほとんど「読む」の1技能と言ってもいい状態でした。
しかし入試が4技能になることによって、学校でも学習指導要領に沿って4つの能力をバランスよく学習していくことになりますから、得られる成果は良い方向に向かうでしょう。

 
「書く」と「話す」技能は、質の高いフィードバックを提供しなければ伸びていきません。今の高校の先生は英検準1級レベルですら60%程しか持っていない状況ですが、指導者の英語力も課題の一つではないでしょうか。

今までのフィードバックの仕方を変える必要がありますね。
これまでは「間違いを直す」という指摘でしたが、これからは「より良い表現に言い直す」ことで学習者に気づかせる、というフィードバックにすべきです。間違いを指摘されるとイヤな気持ちになりモチベーションも下がります。しかしもっといいモデルを示してあげることは、今度使ってみよう、と思えるポジティブなフィードバックです。
これは必ずしも先生方の英語力だけの問題ではなく、訓練でできるようになると思います。

 
小学校3年生から英語教育が導入され、5年生からは教科として評価の対象となります。中学校への接続も含め、どのような課題があるとお考えですか?

今まで中学校でやってきたような、文法や形式を教えてそのあとに使う練習をするやり方を、小学校でもやってしまうと失敗します。
小学校5・6年の英語はせいぜい週2時間程度で、規則を覚えて活用もするという時間はありません。ですから文法を独立して教えることはせず、文脈の中で紹介していく、例えば文法として過去形を教えるのではなくて、昨日のことを言いたい時は went なんだ、という学び方の方が、定着しやすいということです。

 
ただ、小学生に「自分の考えを書く」ことをさせるのは日本語でも難しいですよね。

そこで絵本が重要視されています。小学生の英語教育では「音で慣れ親しんだものを読み書きさせる」ことがポイントです。まだ音で入っていない文字を読ませたり書かせたりすると、とたんにイヤになってしまいますが、物語を何度も何度も音で聞いて、聞いたものを文字として認識させると、子どもたちは自然に読めてしまうものなのです。
音でしっかりと慣れ親しんだ英文を、今度は書き写してみる。書き写していくうちに、その英文がだんだん自分のものになっていきます。

 

 

インタビューを終えて、今、日本の英語教育が大きく変わろうとしているなか、従来のような先生が生徒に一方的に知識を与える学習ではなく、自ら考えていることを、どのように言葉にするべきかに気づき、それを体を使って表現することによって定着させていくことが、理想的かつ効率的な学習方法であると改めて感じた。

吉田先生は、現場の先生たちの負担を軽減するためにもさまざまな提言をされている。
「教育というのは未来の日本を背負っていく子どもたちを育てていくこと」と強い意志を持って改革にご尽力されている姿が印象的だった。


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