未来の当たり前を作る 東京大学 i.school のイノベーション教育 東京大学 堀井秀之先生


2009年に始まった i.school からはすでにたくさんの人材が輩出され、様々な分野で活躍している。
i.schoolとコラボレーションして未来フォーラムを開催した雑誌AERAの編集部は、i.school に関心を持った理由について「若くして活躍している方々にかたっぱしからインタビューしたところ、かなりの比率で i.school の修了生だったから」と語ったそうだ。
新しさを生み出す人材を育成するというイノベーション教育について、東京大学 i.school のエグゼクティブディレクター堀井秀之先生に詳しいお話を伺った。

写真中央が東京大学 i.school のエグゼクティブディレクター堀井秀之先生右のキャタル教師の飯田麻衣さんは、実は2014年に i.school に参加していて、大学院時代で一番の有意義な経験だったと語っている。

 

まず、i.school とはどんな学校なのか、教えてください。

i.school の i はイノベーション(変革)の i です。
新しい製品、新しいサービス、新しいビジネスモデル、新しい社会システムなどを生み出せる人材を育てようという教育プログラムです。東京大学の中にあり、学部や学科に関係なく全ての学生が応募でき、今は他大学の学生も受け入れて、異なるバックグラウンドを持った学生たちが共同作業をしながら学んでいくのが特徴です。それによって、世の中には多種多様な考え方があり、目的や課題は人によって違うという多様性に向き合うことができます。

一年に7回くらいワークショップを行っています。
短いものは2泊3日の合宿形式から、学期間中は週に一度夜の7時から10時までの3時間を10週間、という長いものまであります。そのうち夏休みに行うTISP(東大イノベーションサマープログラム)は、海外の学生も加わり、2週間のうち前半は東京で、後半は地方に移動して地元の高校生と一緒に毎日ワークショップをし、意見交換やアイデアの共有をしています。

 

ワークショップではどのようなことが行われているのですか?

人が新しいアイデアを生み出すメカニズムを「アナロジー思考」と呼び、それができるようになるトレーニングをしています。
アナロジー思考とは、例えばある領域でとてもうまくいっている物事があったら、それを違う領域に持っていくことによって、その違う領域では非常に新しいことに生まれ変わる、という考えです。

具体的な例をひとつ挙げると、アマゾンです。
アマゾンには、それぞれの顧客が過去にどういうものを買ったのかを分析して、その顧客にとって最適と思われる商品を提案するという、とてもうまくいっているサービスがあります。このアマゾンの仕組みを、回転寿司に適用してみます。お寿司が乗っているお皿にQRコードという2次元バーコードを付けて、どういう客がどういう順番で何を食べたかというデータを蓄積して分析すると、例えばシニアのカップルが来たらこのようなネタを、子連れのファミリーが来たらこのようなネタをこの順番で、と需要に適したお皿を提供できます。お客さんからすると、いつも自分の食べたい寿司が回ってきてくれますし、お店からすると、誰も取らずに回転し続ける皿が少なくなるので衛生面でもいいし、廃棄するものが減りますから経営面でもいい、ということになります。アマゾンと回転寿司は全然違う業種ですが、データを蓄積して個別の顧客に最適なサービスを提案するという仕組みは同じです。これがアナロジー思考なんです。


i.school ウェブサイト https://ischool.or.jp/ より抜粋

 

イノベーションの理想のあり方は、どのようなものだとお考えですか?

イノベーションとは、人間の未来の当たり前を作ることです。
ですから、人間を中心にデザインされるべきと考えます。人々の生活や考え方を洞察することによって生み出す「人間中心イノベーション」という考え方です。科学技術を使うことで新しい手段を生み出すことができますが、手段というのは何らかの目的を果たして初めて機能します。その目的とは、人が幸せになるとか、便利になるとか、困ったことから解放されるなど様々です。目的を深く調べることによって、新しい手段を生み出そうという考えです。

この典型的な例がSONYのウォークマンです。
ウォークマンが発売されたのは1979年ですが、決して技術的に新しいものが導入されたわけではありません。むしろ、録音するという機能を取り除いてしまったんですね。それまではテープレコーダーと言って音を録音する装置だったものを、音楽を楽しむためのデバイスにした。今では音楽を持ち歩いてどこでも楽しむのは当たり前ですが、当時はそれは当たり前ではなかったわけです。未来の当たり前を作った、まさにイノベーションといえるでしょう。

 

イノベーション教育とは具体的に何を教えているのですか?

イノベーションを生み出す人材になるために必要な3つの要素を教えています。
その3つとは、スキルセット、マインドセット、モチベーションです。

スキルセットは、ワークショップのプロセスを重視して、プロセスに従って作業を進め、デザインができるようになることです。それによって、新しくて有効性の高いアイデアが生み出される確率が高まります。

マインドセットは、新しいことにチャレンジして自分のアイデアを生み出すことは楽しいことだ、反対する人がたくさんいても、自分が正しいと思ったら最後までやってみよう、と思う心構えを持つことです。

モチベーションは、あなたは何のためにイノベーションを起こすのかと聞かれたら、より良い社会にするためとか、世の中を自分がいいと思ったもので埋め尽くしたいと思うとか、明確な答えが語れるようになることです。

マインドセットとモチベーションが最も重要ですが、そこから入ると空回りしてしまうので、まずはスキルセットから入って、できるようになってからマインドセット、モチベーションを育てていきます。

 
イノベータ―と聞くと、スティーブジョブズのような天才を想像して、とても難しそうに感じるかもしれませんが、i.school は決してそんな天才を育てようとしているのではありません。
もともと人間には、新しいものを生み出す能力が備わっているんですね。それをどうやって引き出すか、をこの3つの要素に沿ってトレーニングする教育プログラムです。

 

こういった教育をぜひ小中高でも取り入れてみたい、と思う方も多いと思います。 i.school に入らなくても、教室でできるイノベーション教育はありますか?

 
もちろんあります。人工知能の研究の中で、人間の創造性は3タイプに分類されています。

①物と物との組み合わせで生まれる創造性
②探索して今までやっていないことをやってみる創造性
③法則を変えたり、前提を変えたり、常識を覆して生まれる創造性

このうち①の組み合わせかたはとても簡単です。
例えば、バナナとボートを組み合わせるとバナナボートですね。ただし何でも組み合わせればいいというわけではなく、バナナの持つ特性と、ボートの持つ特性を組み合わせるからうまくいっているんですね。こういう例を他にも作ってみよう、というのは小学生でもできます。

②は、例を挙げると陶芸家が作っては壊し作っては壊しを繰り返すようなものです。試して、失敗してという試行錯誤ののちにできるものです。

③は、社会通念やしきたりなど、これが当たり前だと思っていたことの中に、実はみんながそう思っているだけで実際はそうでもないことがあるかもしれない、それを見つけ出して新しいものを生み出すことです。

 
知識量の多い大人しか新しいものを生み出せないわけではありません。
もちろん知識や理論も大切ですが、人間は膨大な記憶の中から何かを思い出したり、目的を果たすために何かを思いついたりすることができます。学校の授業の中でも、先生が黒板に書いて教えるだけではなく、生徒が自ら調べたくなるような、そういう学びを導入していくことが、イノベーション教育へとつながっていきます。


堀井先生は、高校にもイノベーション教育を普及するために、OECDのエデュケーション2030という、2030年頃に必要となるスキルを教えるカリキュラムを考案する活動に参画されています。

 

もし時間や場所やお金の制限がないとしたらどんな授業をしたいですか、堀井先生にとっての夢の授業を聞かせてください。

将来例えば「日本を変えた100人」とか「世界を変えた100人」なんていうのをリストアップした時に、i.school の修了生がたくさんランクインしてくれたらいいな、というのが私の夢なのですが、その実現のためには今やっていることを着実に積み重ねていくことでしかないと思っています。

イノベーション教育で最も大切な学びは何かというと、多様性の価値を理解するということなんですね。グループワークを通して、人はみんな違うんだ、他人は自分と違うから自分のできないことができるし、違うからこそ他人ができないことを自分ができたりするんだ、ということに気付いてほしい。日本社会は同一であることが求められる部分が多いのですが、イノベーション教育がもっと普及して多くの人がその多様性の価値に気づき、理想的な社会にしていきたい。そのためには、先生方に対する教育プログラムも構築して、i.school でやっているようなことを教えられる学校の先生を増やしていきたいですね。


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