国際バカロレアの授業の特徴とはー分析とディスカッションー


前回の記事では、IB (国際バカロレア) の概要と科目の大まかな紹介をした。今回は、IBの授業形式や各科目グループの特徴について実体験を踏まえてお伝えしよう。

さて、突然だが次のテレビコマーシャルを見て欲しい。IBの英語の授業で扱った資料の一つだ。

これは、2011年に公開された日産リーフのコマーシャルである。これを見てあなたはどういう感想を抱くだろうか。おそらく「ドラマチックなCMだ」とか「印象に残るな」などと思ったのではないか。これらの感想は間違っていないし、このCMをみるほとんどの人がそう思うだろう。

しかし、これではIBの授業では不十分である。では何が足りないのか。IBでは、ひたすら「なんで?どのように?」と問い続ける必要があるのだ。つまり深く分析していく力が問われるのである。

例を挙げよう。前述の二つの感想であれば、次のように書き換えられる。

「このCMはユーモアと誇張という二つの手法を用いている。CMが誇張表現の連続で構成されており、電子機器が全てガスで動くという現実ではあり得ない、幾分ユーモラスな状況を描くことでCMにドラマ性を与えている。同時に、日常生活の様々なシーンを映し出すことにより、視聴者が近親感を覚え、またその状況に一種の恐怖を覚えやすくなるので、このCMを印象に残りやすくすることに成功している。」

即興で作った文なので、あまりいい評論とは言えないが、それでもだいぶ具体的になったことが分かるだろうか。そんなのなんとなく作れるよ、という人もいるだろう。しかし、なんとなくではダメなのだ。自分の意見に理由を付加し、例を使って論理的に説明できなくてはいけない。

面倒だ、と思うだろうか。確かに最初は難しいし、面倒な作業かもしれない。しかし、一度こう言う考え方を覚えることで、広告の見方が変わるし、「なんでそういう印象を受けるのか」という本質的な部分まで考えることができるようになる。このようなより深くまで踏み入った分析方法を先生やクラスメイトとのディスカッションで学び、極めていく。その過程で、考える力や違う価値観を受け入れる力などを養っていくのだ。また、考えた内容をプレゼンで発表することにもなるので、度胸やプレゼン力が養われることにもなる。

もちろん、こういった応用的な英語の授業だけではなく、日本の国語の授業のように名著を読んで分析する、といったような授業も行われる。例えば、アーネスト・ヘミングウェイの「老人と海」という本があるが、内容はキューバの老漁師が漁に出てカジキを釣り、帰ってくるまでにカジキをアオザメに食べられてしまう、という奇妙な話である。しかし、ヘミングウェイの生きた時代を踏まえて細かく分析してみると彼が伝えたかったメッセージがいろんな形で描写されており、非常に興味深い。このように、読解と分析を繰り返すことで理解が深まったり、新たな気づきがあったりするのだ。また、最初読んだ時にはどういう意味があるのかわからなかった部分があったとしてもディスカッションを通してああでもない、こうでもないと議論しているうちにふと理解できたりもする。IBに出会う前はディスカッションは互いの意見を否定するものだというネガティブなイメージを持っていたが、IBを通して、ディスカッションとは様々な意見をぶつけあって一つの結論にたどり着く、とても生産性の高いものなのだと認識を改めることができた。

一般的にIBの授業カリキュラムが日本の通常カリキュラムと大幅に異なるのが、「個性」と「積極性」が求められる、という点に総括される。というのも、IBの授業では多くの授業で上に挙げたようなディスカッションがメインとなってくるからだ。教授が板書した内容を学生がただひたすら書き写すという一方通行な授業ではなく、「なぜこの説が正しいのか」、「これに関してどう思うか」などと学生に意見を求め、発言を促す形式の授業が行われる。すなわち、両方向の意見や知識の交換となるわけだ。そのため、ディスカッションへの積極的な参加率は評価基準の一つとなってくるし、参加することで批判的な思考方法や物事の本質を考えるといったような、日本の義務教育では簡単に身に付かない貴重なスキルを身につけることができるといった利点もあると筆者は考えている。

日本の高等教育とはだいぶ異なっているのがわかって頂けただろうか。ただし、難易度が日本に比べて大幅に上がっているというわけではなく、授業に対する意識やアプローチの仕方を変えるだけで十分に対応していけるだろう。

忘れることなかれ、上記の科目のみで国際バカロレアは構成されるわけではない。TOK(Theory of Knowledge, 知の理論)やCAS(Creativity, Action, Service)など、ディプロマの核をなす科目にはまだ触れていないので、次回はこれらにもっと踏み込んでいこうと思う。

←前記事 海外大学への進学の突破口となる国際バカロレア


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