真の意味で「楽しく生きる」ための、教育改革と入試改革


独立行政法人日本学術振興会理事長の安西祐一郎先生は、日本を代表する情報科学者及び認知科学者です。慶應義塾大学理工学部にて博士課程を修了し、カーネギーメロン大学客員助教授、北海道文学部助教授等を経て、1988年に慶應義塾大学理工学部教授へ就任しました。1993年には同大学理工学部長となり、2001年から2009年までの8年間、第17代慶應義塾長を務められました。2014年2月から2015年2月までは、第7期中央教育審議会会長に就任しています。著書「心と脳-認知科学入門」「問題解決の心理学」「教育が日本をひらく-グローバル世紀への提言」など、数々の執筆をされています。

 

教育改革について

小中高の各学校で養われるべきものと、その方法とは?

現在、2020年に向けて大きな教育改革が行われていますが、なぜ今このような改革が必要なのでしょうか?

第二次世界大戦後のアメリカとソ連の冷戦構造が崩壊し、これまで二極化していた社会が、1990年代の初め頃から多極化するようになっていきました。現在ではEUや中国、中東などといった力のある国々が世界中に溢れています。これからの時代に、日本がしっかりと発言力を持った国として生きていくためには、国民一人一人が自分で考え、主体的に行動しながら生きていく力を身につける必要があります。
日本は他の国と比べ、多様な人達とコミュニケーションを取ることや、一緒に暮らしていくということが非常に少ない島国です。しかしこれからの時代では、意識して多様性を持たなければいけません。自立し、多様な人々と共に生きていくことが求められる社会で必要な力を養うことが、この教育改革を行う目的となります。

 

教育改革が行われる中、小中高の各ステージにいる学生は、それぞれ何を身につけるべきなのでしょうか?

小学生の時は、人の気持ちが分かることや、いろいろな人と話しができるといった、他人との関わり合いを介して、自分の心の中に暖かい気持ちを作ることが大切です。
中学生になると、もう少しはっきりとした自分の考えを構造化できるようにすることが求められます。そのためのトレーニングを行うべきと考えます。
高校生では、今まで以上に自分を表現する力が重要となります。主体的に、自分の言葉で表現するというコミュニケーション力を養うことがポイントです。

 

小中高の各ステージで身につけるべきものに対し、学校が授業を通してできることはどういったものでしょうか?

学校においては、例えば英語の授業を挙げますと、小学校では体育や音楽などの時間と共同し、自分から歌を歌う、身体を動かすなどといった主体的な活動を通して、多様な人達との関わり合いを得ることができると思います。
中学校の英語の授業では、自分の考えを構造化できるようにするために、文法が重要となります。特に第二言語として英語を学ぶということであれば、きちんとした文法を教えるということが大切です。それがあって初めてしっかりとした文章を書くことができるようになり、また話すことも可能となります。
高等学校では、自分を表現するコミュニケーション力を養う方法として、他の人達に対し説得的に話しをする、また自分の考えを書くというトレーニングを行う必要があります。これは英語だけではなく、国語も同じことです。

 

入試改革について

大学入試では、書く・話す力=思考力という考えがベースとなる

教育改革に伴い、大学入試改革が行われますが、今後の入試はどのように変わり、何が求められるようになるのでしょうか?

入試に関しましては、記述式の問題が取り入れられるようになります。この記述式の問題というのは、国語の小論文のような長い文章を書くというものだけではなく、短い文章の中で論旨をはっきりと示すことを求める問題も含まれます。
入試ではこの記述式の問題を通して、思考力をはかることが目的とされています。思考というのは、いろいろな概念を系列化・構造化していくことを言い、書くという行為はまさにその思考を表す方法なのです。
これからの時代に求められるものは、この思考する能力です。日本語だけではなく、英語のライティングを含めて、自身の思考を構造化するトレーニングを行う必要があります。

 

記述式の問題が導入されるということですが、書く力というのはどのように伸ばしていくことができるのでしょうか?

書く力を養うということは、思考力を養うということです。例えば英語を使った方法を挙げますと、和文を英文にするというトレーニング方法があります。昔話や新聞などでも良いのですが、日本語の文章を英語に直そうとした時に、どのようにしたら英語でしっかりとした文章を書くことができるか、自分の言いたいことを表現できるかということを考えながら取り組むことで、思考力が養われていきます。
また学校の授業においては、理科や数学でも同じですが、ものの考え方をできるだけ明晰にするようなトレーニングを行うべきであると考えます。結果から原因を探る推論の仕方を身につけることで、書く力も一緒に養うことができます。

 

英語の試験に関しましては、ライティングだけではなく、4技能全てが導入されるようになるのでしょうか?

その方向に向かっています。これからの英語の試験は、4技能でなくてはいけません。これまで行われてきたリスニング・リーディングの2技能と、これから追加されるライティング・スピーキングの2技能の違いは、「アクティブ」であるかどうかということです。
英語だけではなく、国語や数学でも同じなのですが、文章を書く、あるいはきちんとした言葉で話すという行為は、聞く・読むといった技能とは異なるものであり、これまでの日本の教育で最も弱い部分である「主体的に思考を表現する力」なのです。この力を養うことがこれからの教育には求められます。
入試は中学校、高等学校の教育にとても大きな影響を与えますので、もし英語の試験が2技能のままであるということになれば、日本の英語教育、あるいは英語だけではなく言語能力を養成する教育、そして「アクティブラーニング」という主体的に学ぶ姿勢を育む取り組みに、多大な遅れが生じるようになってしまうでしょう。

 

人生を主体的に生きる楽しさ

主体性を育むことで、人間らしく生きる力を養う

これからの時代では、一人一人が主体的に行動することが大切であるということですが、主体性を育む方法とはどういったものなのでしょうか?

主体性というのは、まず自分が好きなことを見つけるところから始まります。誰かにやらされるのではなく、自分で好きなことを見つけ、それをある期間継続して取り組むという経験から主体性は養われていきます。子どもの場合、「自分の好きなことが見つからない」ということもあるかもしれませんが、そういう時は周りの大人が参考になるものを示唆してあげても良いと思います。それを掴むかどうかは子ども次第なので、そういった意味では、小さい頃から様々なものにふれるということは大切です。

 

小さい頃に様々な経験をしてこなかった場合、主体性を育むことは難しいのでしょうか?

そんなことは決してありません。小さい頃から自分の好きなことが見つかっている子どもはとても良いと思いますが、そうでなくてはいけないということは全くありません。自分が本当にやりたいと思うことが見つかるタイミングは、いつであっても良いのです。
大切なことは、それを見つけた時に、周りにつぶされず自分の力を信じて続けるということ、そして「辛くても楽しい」という経験を通して、人生において本当の楽しさを知るということなのです。

 

楽しいと思えることを見つけ、それを続けることが主体性を育むポイントとなるということですが、これは学習においても同じことが言えるのでしょうか?

学習においても同じことです。主体的に学ぶ姿勢の中には、いつでもその学問を楽しむ気持ちが備わっています。これからの教育では、生涯をかけて主体的に学び続ける力を育てることが必要となります。これを学習継続力と呼びますが、この力を身につける上で、主体性は必要不可欠です。主体性を持って、思考力を養う学習を楽しむことこそが、これからの社会で求められる人材へと成長する鍵となります。

楽しみながら学習することが、これからの時代を生きる力となるのでしょうか?

人生を真の意味で楽しく生きるということは、自分が本当にやりたいと思うことに対し思考を巡らせ、主体的に行動するということです。思考力と主体性を兼ね備えた、これからの時代に求められる人材になるということは、同時に、人間として生きる人生の真の楽しさを得るということなのです。技術革新のため、人間はかつて必要であった記憶力や計算力などを利用する情報処理の能力を養うことから解放され、より人間らしく好奇心を持ち、意図を持って主体的に行動することが可能となりました。そして社会が、人間のそのような在り方を求めるようにもなりました。
2020年へ向けて行われる教育改革や入試改革は、これからの時代を生きていく上で必要な力を養うものでありながら、人間が真の意味で人生を楽しく生きていくことを可能とする改革でもあるのです。

この記事は、2017年6月23日、ラジオ”In the Dreaming Class”の内容です。ラジオ全音声を聞かれたい方は→こちら


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