ケンブリッジ大学生ジュアスさん「女性がもっと自由に数学を学べる世の中にしたい!」 | バイリンガルへの道

ケンブリッジ大学生ジュアスさん「女性がもっと自由に数学を学べる世の中にしたい!」

ケンブリッジ大学生ジュアスさん「女性がもっと自由に数学を学べる世の中にしたい!」

ジュアスさんの海外歴と学校歴

0歳〜7歳 フランス 現地の小学校
7歳〜9歳 日本 八幡小学校
9歳~14歳 日本 Seisen International school
14歳〜16歳 ベルギー International School of Brussels
16歳〜19歳 イギリス Marymount International School London
19歳〜 イギリス Cambridge University

 

違う文化では非常識とみなされる

豊富な海外経験の中で苦労したことは何ですか?

住む場所ごとに使う言葉だけでなく常識も違ってしまうことです。フランスで生まれてから日本、ベルギー、イギリスと転々としました。新しい場所では、その土地の言語をキャッチアップしなければならず、どこに行っても、いつも周りの人より劣っていると感じて辛かったです。
また、常識も土地によって違います。例えば、日本では麺をすすって食べるのが当たり前ですが、他の国ですると下品だと言われショックを受けたことを覚えています。文化が違うことを知らなかっただけなのに非常識だと思われることがすごく嫌でした。

怖がらずに話すことが大事

日本でインターナショナルスクールに入った時に大変だったことはありますか?

入学当初はほとんど英語が話せなかったので学校では何も発言できず、ずっと自分だけ取り残されていました。初めはまったく英語が話せない私に同級生たちが日本語で話しかけてくれていたのですが、英語の勉強にならないから日本語は一切禁止になりました。それからは、同級生たちから話しかけてもらうこともなくなりました。授業がわからず恥ずかしいですし、誰とも話せず寂しかったです。

克服できるきっかけになる出来事はありますか?

恥ずかしさから一度拒否したプレゼンをやろうと思ったことです。小学4年生の時、詩を読んでその詩を解説して、クラスメイトの前でプレゼンする授業がありました。私はクラスメイトの前で話すのが嫌で「プレゼンはやりたくない」と拒否していたのですが、「ここでやらなきゃ私は成長できない!」と気づき、成長したいからやろうと決心し、みんなの前でプレゼンを行いました。すると、クラスメイトがすごく褒めてくれたのです。その時はとても嬉しくて、こんなに嬉しい気持ちになれるのなら下手でも話したほうがいいと気付きました。それがきっかけで人見知りも治り、話せるようになってくると英語で文章を書くことにも苦手意識がなくなり、少しずつですが挑戦し、できるようになっていきました。

自分に合ったレベルで無理なく学べるからこそ伸びる教育

インターナショナルスクールの教育はどんな感じでしたか?

インターナショナルスクールの教育はフランスや日本の現地校の教育と大きく違うように感じます。まず、日本と違い机の並びも先生に向かって並ぶのではなく、グループごとにまとまっていました。授業も先生の話をただ聞くのではなく、他の生徒と話し合うことを中心にしたものでした。

また、小学校の時から数学や英語の授業はレベルによって分けられています。私には日本の学校では数学は簡単すぎて、日本語は難しすぎてジレンマを感じていました。他の生徒との差が広がることでやる気を失い、学校に行かなくなりました。逆にインターナショナルスクールでは、4年生と5年生の時には英語は一番低いレベルにいましたが、恥ずかしいということはなく、一番自分のレベルに合った環境だということを理解していました。自分に合ったスピードで勉強できたことで成長もできました。

インターナショナルスクールでは、一人一人のレベルに合わせた教育をすることをとても大事にしています。周りの生徒より出来ることはどんどん上達させて、人より不得意なことは沢山サポートします。そのおかげで英語ができなかったけど数学が得意だった私も、イギリスの大学で勉強できる英語力を身につけ、世界最高峰のケンブリッジ大学で数学を学ぶことができています。


ホーリーというヒンドゥー教の春の訪れを祝うお祭りでの写真。色粉を塗り合ったり色水をかけ合います。右から2番目がジュアスさん

量で勝負!毎日の継続で英語力アップ

英語をどのように身につけましたか?

とにかく量をこなすことです。
インターナショナルスクールに入学してから、学校では一日中英語を聞き、話し、読み、書いていました。家では、大量の宿題をこなし、また大量に英語を書きました。英語のアニメや映画も見て毎日英語を聞きました。また、毎日最低20分は英語の本を読まないといけないという家の決まりがあったので、毎日英語の本を読みました。そして友達と遊ぶ時も英語で会話していました。
それらの中で私が一番やってよかったと感じることは、毎日の読書です。読めば読むほど英語は上達するし、どんどん面白い本が読めるようになるので、楽しくて仕方なかったです。一時期は本を読んでいるときに肘をつきすぎて肘が痛かったこともありました(笑)

日本にいる間は英語力を維持するためにどのようなことをしていますか?

繰り返しますがとにかく量をこなすことです。私は、英語を身につけた時と同様に沢山英語に触れています。
また、学んできた英語・フランス語、日本語、を全てキープしていこうと、家族間でコミュニケーション言語を変えて毎日触れ続けるようにしています。父がフランス人なので父とはフランス語、母は日本人なので母とは日本語、そしてインターナショナルスクールで学んでいたので兄弟間では英語で会話しています。

数学の問題がユニークで魅力的な大学

なぜケンブリッジ大学に進学を決意したのですか?

数学を楽しく学び、深めることができると思ったからです。私は、難しい数学が学びたいがために高校の時にイギリスに留学した経験もあるほど数学が大好きです。幼い頃から、大学では必ず数学を学ぼうと決めていました。そして、やるならばトップの大学を目指したいと思い、ケンブリッジ大学を選びました。

ケンブリッジ大学の入試はIB(国際バカロレア)の成績だけでなく数学のテストがあります。難しい試験に合格しないと入学できません。そのテストが他の大学と比べるととてもユニークで、ただ正解に点数を与えるのではなく、問題を解く工程に対しても点数をつけてくれました。ここでなら授業もきっと楽しく、もっと数学を学べると思い、入学を決めました。


ケンブリッジ大学内の「ニューナムのお庭」。すごく綺麗で、天気がいい日はピクニックをします。

数学は世界共通言語

どうして数学が好きなのですか?

数学は世界共通言語だからです。住む国が変わる度に言葉は常にキャッチアップしなければならず、新しい土地に行くたびに新しい友だちをゼロからつくる必要がありました。人間関係がうまくいくときもあればそうでないこともありました。引っ越す度に周りと比べて常に何かが劣っていると感じていた私にとっては、言語や文化に関係なくどの国でも通じる数学が大好きでした。

しかも、例えば、科学は新しい発見があると日々進化し、その度に答えが変わるものですが、数学は一回証明したことは変わらないという性質を持っています。古代ギリシアで生まれた公式を現代の私達が使えるという普遍的なものであるというところにも魅力を感じます。

ちょっと悲しい感じになってしまいますが、フランス人と日本人のハーフの私は日本にもフランスにも帰属している感覚がないので、いずれは日本に戻る、というようなビジョンもありません。
アイデンティティが分かりやすくないから余計に、普遍的な数学に魅力を感じているようにも思います。


“数学橋(Mathematical Bridge)”数学的にデザインされたこの橋は釘などなしで使えるらしいです。※万が一の時のためにちゃんと釘は使っているそうです。

数学を学ぶ女性を増やしたい

将来実現したい夢はなんですか?

女性が数学をもっと自由に学ぶことができる世の中にしたいと考えています。数学のおもしろさをもっと多くの人に知ってもらいたいという気持ちもありますが、私は何よりも女性が数学を学ぶ環境づくりをしたいと思っています。
ケンブリッジ大学の数学部の8割は男性です。教授も男性がほとんどで数学や理系のものは男性の学問という既成概念があるように感じ、私はそれが好きではありません。もっと数学を勉強したいと思っている女性は絶対にいると思うのですが、数学を学びたいと思っている女性に「数学は女性の学問でない」と言ったり、小さい頃から”女性は文系”というレッテルを貼り、数学に興味を持てるはずの女性の芽を摘んでしまっているのではないかと感じています。私のように数学が好きな女性のために教育によってその偏見を変えていきたいです。今はまだテレビに出ている数学者は男性ばかりですし、周りの理系の先生も男性が多いです。その中で、女性である自分が数学を学ぶ女性のロールモデルになり、もっと女性が数学を学びやすい環境にし、多くの女性に数学に興味をもってもらいたいです。そのために女子数学高校のような学校を経営することや、もっと女性の学び方に合う数学のカリキュラムを作りたいと考えています。

子どもの英語学習におすすめの洋書2冊

“The Giver”私が初めて自分1人で読めた本格的な本です。

“Calvin and Hobbes”内容は簡単ですが英語のレベルが高い本です。

沢山本を読むことをお勧めします。
私は本を読めば読むほど、英語ができるようになるし、知らなかったことを知ることができるのでどんどん面白くなってきました。キャラクターの設定が既にわかっているシリーズ物であれば、登場人物にもなじみがあり入り込みやすいのでオススメです。私が初めて自分で読めた本格的な本はThe Giver でした。もう少し簡単なレベルであれば、Calvin and Hobbesがおすすめです。四コマに似たような漫画の作りなので好きな量だけ読めますし、内容は簡単なのに英語のレベルが高いので、楽しみながら難しい英語が学べる良い本だと思います。

現在、英語を学んでいる方へのメッセージ

人付き合いもおしゃべりも今は大好きな私ですが、英語を学ぶ前はとても人見知りで内気で自分に自信がありませんでした。英語が私を変えてくれたのです。”英語を学ぶ”ということは新しい自分を発見するチャンスなので、難しくても大変でも、また、面白くないと感じる時期があっても、英語を学ぶことで新たな自分を見つけることができるのでがんばって下さい。
また、急に伸ばすことはできないので、毎日を大事にして、毎日学習を続けて下さい。スポーツと一緒で、毎日欠かさずトレーニングすることが大事です。がんばってください!


マトリキュレーション、いわゆる入学式での写真。真ん中の青いドレスがジュアスさん。