挑戦し続けることで自分を高めて、目指す姿を実現してきた 慶大 山下さん | バイリンガルへの道

挑戦し続けることで自分を高めて、目指す姿を実現してきた 慶大 山下さん

挑戦し続けることで自分を高めて、目指す姿を実現してきた 慶大 山下さん

山下さんの海外歴と学校歴

0歳〜4歳 イギリス ロンドン 幼稚園
4歳〜7歳 ドイツ ハンブルグ インターナショナルスクール
7歳〜12歳 アメリカ ニュージャージー州 Parkway Elementary School/Westbrook Middle School
12歳〜18歳 ドイツ ハンブルグ インターナショナルスクール IBコース
18歳〜現在 慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス 環境情報学部

英語の所持資格

英検1級 、 TOEFL iBT 106

野球がやりたいから辞書片手でもやり続けた

-語学の習得で苦労したことはありませんでしたか?

私は最初から英語の環境で生まれ育ったため、英語を聞く、話す、は日常でした。
しかし、家では日本語を使っていたので、幼い頃は日本語の方が使いやすく、英語の習得で苦労したことがありました。それは、小3の頃にアメリカで現地の野球チームに入部した時です。渡米した頃、ニュージャージー州は日本人が多く、補習校で出会った日本人の友達と仲良くしていたため、多少英語が不自由でも言語で苦労することはありませんでした。しかし、大好きな野球をするために、そして、新しいことに挑戦するため、友達が一人もいない野球チームに入部する事を決意しました。

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ニュージャージーでの野球オールスター戦。11歳の時。右から3番目の赤い服が山下さん。

-具体的にどのような方法で英語を上達させていきましたか?

入った当初は色んな問題にぶつかることだらけで、自分のやりたいポジションすらコーチに伝える事が出来ず、不満ばかりでした。しかも、当時は監督の英語が流暢で聞き取れなかったため、紙とペンを持参し、チームメイトに内容を書いてもらい、それを読んで理解をする、という作業を繰り返していました。小型の電子辞書も持参し、周りに「何それ!」と言われても、大事な事は自分で理解できるように様々な工夫をしました。周りのチームメイトのおかげで言語の壁を乗り越えられ、次第に耳が慣れ、野球に関する専門用語や知識も増え、チームの一員になることができました。それは、ドイツにいた時も同じで、野球という環境があったからこそ、ドイツ語を習得することにつながりました。

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ドイツで野球をしていた時の写真

-新しいことに挑戦したことは他にもありますか?

ドイツでも野球をしたかったのに学校には野球部がなく、他のチームに参加したことです。週に1、2度片道1時間かけて参加していたのですが、チームメイトはドイツ語しかしゃべれず、はじめはアメリカと同じように徐々にドイツ語を習得していきました。環境があったからこそ、ドイツ語を習得することができ、ドイツの野球の全国大会で優勝し、ヨーロッパの代表として戦うことができました。

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16歳でヨーロッパ代表として戦った時。前列一番右が山下さん。

毎週のライティングで語彙とクリエイティブライティングを習得

-英語を上達させる為に野球以外に挑戦したことは?

アメリカ人の家庭教師から毎週、「クリエイティブライティング」の指導を受けて書く力をつけました。好きなテーマを選びライティングを行うことで語彙力やエッセイのフォーマットを学ぶ事ができました。
紙の辞書を使って言葉を調べて書きました。書いては直され、また書き直しを繰り返しました。初めは辞書を引くのがつらかったのですが、辞書を引くことで同じページに書かれている単語を一緒に覚え、日常生活の会話にも役立っていると感じてからはやる気を保つことができました。慣れてくると辞書を使うのも早くなり、語彙力も格段に上がりました。小さいころから新しい挑戦をしないと自分を高められないという想いがあったので、野球と同じで勉強でも挑戦すると決めていました。

アクティブに参加することとプレゼン力を重視

-海外での教育はどんな感じでしたか?

海外での教育は日本と違い、「アクティブラーニング型」の授業が主体でした。幼稚園の時から “Show and Tell” などですでにプレゼンテーションの基本を学びます。”Show and Tell”では、週に1、2度自分の家にあるものを持参し、みんなの前でいつ買ったのか、なぜそれを持ってきたのかなどを発表しました。私の場合は野球が好きだったので、グローブを持参したのを覚えています。発表した後にほかの生徒から色々と質問を受けて、それがプレゼンテーションのいい練習になりました。

-海外と日本の教育の違いって何だと思いますか?

私が受けてきた海外の教育は、日本と比べてテストの点数を重要視していません。どれくらいディスカッションに参加しているか、プレゼンテーションのスキルはあるかが大切です。例えば、中学生の頃から授業にはパソコンを持参し、先生が話している際でもわからないことはパソコンで調べ、もっとアクティブに授業へ参加します。学年が上がるに従って難易度の高いレベルのものが要求されます。特にIB(International Baccalaureate) では「なぜこれを学び、その知識はどこで有効になるのか」 を “Learning Process” の一つとして学びます。暗記するだけではない授業というのが大きな違いかもしれません。

-IBプログラムではどうでしたか?

IBは世界で一番難しいプログラムといわれています。そのため、PRE-IBとして9年生からIBを受講する準備期間が設けられています。そこで、自分で興味あることなどから授業を選択し、アクティブラーニングの姿勢を身に着け、IBでの選択に活かすことになります。私はGeographyを選択し、日本の地理よりももっと世界で何が起きているか、どうして起こったか、どう解決していくのかを学ぶ授業を取っていました。IBになると徹底的に深く学ぶHigher Level3つとStandard 3つを自分で選択しなければならないので、その前段階で色々準備ができることもよかったです。基礎もしっかり身につけることができ、大学での授業も楽にこなせています。

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8年生の時のクラス写真。後ろから2列目、左から4番目が山下さん。

日本人として日本で挑戦したかった

-なぜ今の大学に進学を決意したのか?

慶應義塾大学への進学を希望したのは高校2年の頃、慶應に”GIGA Program” と言う英語のプログラムがあると聞いた時でした。始めは18年海外に住んでいて、英語の教育しか受けてこなかったので、海外の大学に行く事を決めていました。しかし自分は日本人なのに日本に関しての知識が全く無かったので「次は日本で挑戦してみよう!」と思いました。

-挑戦し続けることは大変だと感じませんか?

挑戦するということは、居心地のいいところから出ることでもありましたが、何度か挑戦すると、挑戦する前よりポジティブな結果が得られることがわかってきたので、挑戦することが苦に感じることはありませんでした。

-GIGA Programというのはどういうものですか?

慶應大学に2011年にできた英語で学ぶプログラムです。少人数で始まりましたが、私の学年では60名が在籍し、帰国子女が60%、留学生が40%ほどいます。海外経験がないと入部資格がないのですが、毎年大きくなって、生徒からの意見で変わっていくこところも良いところです。日本と同じシラバスを英語で学べるのでずっと英語で学んでいた私にとっては学びやすい環境です。日本の大学でありながらも少人数で授業が行われ、海外の大学のようにアクティブラーニングが主流でどんどん発言を行っていくところも利点だと思います。

語学力を維持するために積極的に読むことを忘れない

-日本に帰国後、英語力維持の方法は?

現在、大学の授業は、ほぼ英語で行われています。また、必然的に周りの友人達も帰国子女が多いので英語を使う機会が多く、英語力維持に苦労した事は特にありません。しかし、更に高度な英語力を身につける為、自ら英字新聞や英語のビジネス記事を読むことを心がけています。

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卒業式・高校時代の友達と。2列目左が山下さん。

複数の価値観を持ち、いろいろな刺激をうけることができる

-英語、日本語、ドイツ語を使えるトリリンガルでよかったと思えた瞬間とは?

日本に帰国してから、日本の色々な文化や価値観に関して学ぶ事が出来ました。トリリンガルである事で、3つの視点から考えられる価値観を持つ事ができたことが良かったと思っています。特に、日本語ができることで、育った環境が違う人と友達になれたり、一つのグループだけでなく様々なところで友達が作れ、毎日新しい刺激をもらっています。そして英語ができたからこそ、より多くの人々と仲良くなる事ができ、「ダイバーシティ」の重要性を感じる事が出来ました。

見かけは日本人でも中身は違う、だからグローバルな自分

-ご自身のアイデンティティは?

18歳で日本に来た時に初めて悩みました。ドイツでは日本人として見られていなかったですし、見かけは日本人でも中身が違うと周りも自分も感じていました。しかし、自分は様々な国に住む事ができ、色々な文化や背景を持っている人々と触れ合う事ができたので、グローバルな視点を持つ事ができました。いざ「あなたは何人ですか?」と聞かれたら、日本人とは答えますが過去の経験により、自分のアイデンティティはやはりグローバル化していると思います。

映画化されているのでリスリングも一緒に学べる

子どもの英語学習におすすめの洋書1冊

Kate DiCamillo “Because of Winn-Dixie”
牧師の父親と共にフロリダの田舎町に引っ越してきた10歳の少女と野良犬の話です。人との繋がり、仲間がいる大切さを改めて感じさせてくれる本です。映画化もされているのでストーリーを理解するのにも、リスニングのためにもなります。

使える英語で「挑戦」の一歩を踏み出して

-現在、英語を学ばれている方へのメッセージ

使える英語(読む聞く書く話す)を身につけることは自分の一生の糧になります。自分自身、英語が話せたからこそ様々な経験や一生の友達を作る事が出来ました。受験英語だけではなく、使える英語を学習する事は「挑戦」への第一歩となります。時には諦めかける事もあると思いますが、失敗を恐れずどんどん新しいことに挑戦し、英語を使ってみてください。その方が英語を楽しく継続的に学ぶ事が出来ると思います。もしキャタルで会う機会があれば是非、声をかけてみてください。一緒に頑張っていきましょう!

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プロムの全員集合写真。最後列左から3番目が山下さん。