ノーベル賞受賞利根川進教授に直接聞いてみた!    第2回 成功する人と遺伝子の関係。なぜ人は教育をするのか。


利根川教授の経歴を見ると実は意外な一面があることを知る。名門日比谷高校を卒業してから、京都大学に入学されているのだが、実はその間に1年浪人をしているのである。後にノーベル賞を受賞するような頭脳なら、大学入試は軽々と超えそうだと思ってしまうが、そうではなかったようだ。今回は、利根川教授の考える、科学者として成功するタイプの人間の特徴はなにか。またそれは後天的に得られるものなのか、遺伝子で決まっているものなのかを、ノーベル賞受賞者の利根川進教授に直接聞いてみた。


-教授のように偉業を成し遂げられる科学者は一握りだと思います。ビジネスやスポーツなどでも同じだと思うのですが、大きな発見をして成功する科学者と、そうでない科学者はどのような違いあるのでしょうか。

Scienceっていうのは、実験の大部分はうまくいかない。あるとき閃いた仮説を長い時間かけて実験をして証明するわけだけど、1年かけて実験しても、面白い話にならないようなことがある。むしろそれが普通。失敗に失敗を重ねて、ずーとああでもないこうでもないと同じことを考えている。成功している人っていうのは、ちょっとCrazyなくらいにOptimisticだね。どんなに失敗しても一晩寝たらまたけろっとして、研究を続けているような人。こっちから見ると「お前そんなに大変なのに、よく頑張っていられるな」というようなぐらいの人だよ、大体。

Persistent(執着心がある)って言ったらいいか、1つのことに強く執着してやっている。例えばニュートンなんかも、もともと天才かもしれないけど、大変な努力もしている。大切なことは、本人は努力をしていると思っていないというところ。好きなことをしているからスイスイとやっていて、努力していないように見えるけれども、本当は大変な努力をしている。

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コールド・スプリング・ハーバー研究所のジェームズ・ワトソン(James Dewey Watson)所長と


 

-どうしたらそんなに楽天的に、研究に取り組める情熱を持てるのか?という質問をすべきであったが、当日この話を聞けなかったので、前述の「精神と物質」の中からの記述を追加したい。(『精神と物質』第4章 「サイエンティストの頭脳とは」より)

サイエンスでは、自分自身がConvince(確信)することが一番大切なんです。自分がConvinceしていることなら、いつかみんなをコンヴィンスさせられます。まず自分をコンヴィンスさせるというのが一番大変なんであって、人をコンヴィンスさせるなんて、そう大したことじゃない。ただ、人によってはね、簡単に何でもコンヴィンスしちゃう人がいるけど、あれはダメよ。そういう人は、間違ったことをすぐに正しいと思いこんでしまうからね。自分自身に何度も何度も、本当にそうなんだろうか、絶対間違いないんだろうか、と問いなおして、いやこれで絶対に間違いないと、時間をかけて、徹底的に問い詰めたうえでのコンヴィンスね。これができればいいわけです。

自分自身が絶対的に信じられるということ。そして、それに向かって楽天的に、Persistentであり続けることが、何かを成し遂げるために必要なのだということになるだろう。科学というものは、天才と言われるような人たちが集まって、人類がまだ発見できていない事実を発見するような取り組みなので、その中でどれだけ自分が信じることをやり続けるかが成功の鍵になるのだろう。

 

-楽天的なくらい一貫性を持って何かを続けられれば、誰でも成功できるのでしょうか。たとえば教授の研究テーマである遺伝子などは、その人の成功にはあまり関係ないのでしょうか。

いやいや、そんなのは全部遺伝子で決まってるんだよ。

そ、そうなんですか?(一同苦笑)

そう。人間みんな親からもらった遺伝子で、枠が決まっているの。いくら努力したって、その枠を出ることはできない。例えばあなたは100mを10秒では走れない。そういう遺伝子はもっていないから。

だから、あとは遺伝子の枠のなかで、どれだけ持って生まれた能力が発揮されるか。もらった遺伝子の中で、どれだけ面白い、満足感が得られる人生を送ることができるか。そのために教育をするわけだ。

それぞれの動物は生きていくために、2つの種類の情報を活用している。一つは、遺伝子。もう一つはMemory。Memoryというのは言い換えると、経験ということ。経験からMemoryは作られるからね。その二種類の情報しかもっていない。生まれつきの遺伝子がNatureなのに対して、後天的な経験はNurture(育成する)だね。

そうすると遺伝子は変えられないから、どのようなMemoryを作っていくかしか努力の余地は残ってない。
どのような友だちに出会ったか、どのような先生に出会ったか、という経験が大切になって、その人たちから大きな影響を受ける。つまり誰とつきあい、どこにいたかという、教育によって残りの半分が決まることになる。
人とのInteraction。親とのInteraction。こういった教育そのものが、その人の能力にすごく影響を与えるわけ。

 

-では、小中高生にどのような教育を提供すればいいでしょうか。

例えば、どうやったら良い研究ができるかとよく聞かれるんだけどは、そんなことには答えはない。そんなものが分かったら、毎日大発見ができてしまう。大切なのは「これはオモロイな」と思うかどうか。面白いと思えばしめたもの。面白ければ追求できるから。教育もこれと同じで、面白いかどうかが大切。

だけど、中学生や高校生に科学の面白さを伝えるような授業をするのは、正直難しいと思うよ。既に知られている事実を教えるわけで、未知のことを発見するような面白みというのは正直無い。中高生に、アカデミックが面白いなんてことを教えるには、先生の相当な創意工夫が必要だから。

 

-ではどうやって子供たちに面白いことを教えればいいのでしょうか。

子供たちは「かっこいい」ことには集まってくるから、やっぱり「かっこ良さ」は重要だと思う。あの先生は、見た目が格好いい。Performanceが格好いい。言うことが格好いいとか。まずは「かっこいいな」というところから興味が始まる。みんなその人にあこがれて授業に出るわけだ。

そうすると先生はみんなかっこよくないと、子供たちは勉強してくれないですね。
それがただの見かけだけの格好よさで終わってしまったらダメだけど、まずはかっこいいと思ってもらえるように、努力しないと。子供たちが格好いいものに憧れる力というのは、パワフルだから。

 

-僕なんかは、海外に対しての憧れも強いので、MITなんかに来ると、かっこいいなぁって憧れちゃうんですけど、例えば日本の中高生はこのような世界があることを知らない子たちのほうが多いです。そうすると知らないものは目指せないですから、もっとこういうかっこいい世界があることを知らしめないといけないと思います。教授はこういった問題を解決するために何かしたいと思いますか。

いや、そうだね。知らないことは目指せないというのはその通りだね。子供たちは、格好いいところにあつまる。だから何が格好いいのかを、広く知らしめくてはいけない。ボストンには実にかっこいい学校があるよ。
僕自身はもう新しい問題を掲げてそれを解決するというのは、難しいな。英語で言うとMy plate is full. 自分が一番興味のある問題をすでに自分のお皿に持ってきちゃっているから、今の問題だけで精一杯だな。そういったことは誰かに解決してもらわないと。
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今回は利根川教授の、ユーモアに溢れて気取らない性格がにじみ出た回になった。一人の人間の能力は遺伝子で枠が決まっている。だからこそ教育をしなければいけない。そしてだから利根川教授は、メモリーの研究をしているんだ、という言葉が心強かった。自分のお皿は既にいっぱいだと言いながらも、このようなインタビューに答えていただけるのは、教授の優しさと日本の国際化に対して貢献したいという気持ちの現われなのだろうと思った。

最終回の次号は、英語教育の話に戻り、バイリンガル教育の是非や日本の教育改革などについてお話を聞いてみたので、楽しみにしていただきたい。


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