■はじめに
前回の記事では、国際バカロレア(IB)のカリキュラムについてご説明しました。この記事では、国際バカロレアが重視される理由について考えていきます。
■世界各国で採用されている資格
国際バカロレアは国際的な基準と資格であり、世界で同じ水準の教育を受けられることから、関心が高まっています。
地域別に導入校数を見ると、アメリカ、オーストラリア、イギリス、インド、スペインが多く、2014年3月現在のDP導入学校数は、順に801校、152校、149校、94校、72校となっていて、広い地域で普及しています。
また、日本の企業においても海外との取引が増え、英語力やディスカッション・プレゼンテーションのスキルをもち、国際問題について理解する人材のニーズが高まっています。そうした流れを受け、教育においても国際的な基準が求められているといえます。
国際バカロレアの目的は、「異文化理解と尊重の精神を通じて、より良いより平和な世界の実現のために貢献する、探究心、知識、思いやりのある若者を育てること」なので、グローバルに活躍できる人材を育てることができるプログラムといえます。
■探求、考える、コミュニケーションが重視される
現在、日本の学校教育・受験において考える力が重視される傾向にあり、思考、コミュニケーション、プレゼンテーションなどの力をつけるための授業が増えています。
国際バカロレアの学習者像には、「探究する人」、「考える人」、「コミュニケーションができる人」などが含まれていて、各プログラムでそうした力を育成するカリキュラムを実施します。
たとえば、ディプロマ・プログラムの指導と学習は、生徒が 探究する人・考える人として関わるようにするものでなければなりません。また、国際バカロレアの試験問題は、「~について論ぜよ」といった設問が多く、考える力を評価する仕組みになっています。
■日本の大学入試における導入が増えている
2000年度には推薦入試が31.7%で、AO入試が1.4%であったものが、2014年度には推薦入試で34.4%、AO入試が8.6%と増加しています。東京大学や京都大学も、平成28年度入試からAO入試・推薦入試を実施する予定です。
さらに、2020年にセンター試験が廃止されて新しい学力評価テストが導入され、大学の個別試験では小論文、面接、記述式試験など、思考力や主体性を評価する仕組みになります。
そうした影響もあり、日本の大学入試において、国際バカロレアの資格を出願要件とする選抜方法や、国際バカロレアのスコアを合否判定に考慮する選抜方法が増えています。
たとえば、2015年春から、岡山大学や筑波大学がIB資格取得者を対象とする入試を実施しました。さらに、鹿児島大学が2016年春から、法文学部情報経済学科と教育学部を除き、IB資格の取得者限定入試を実施する予定です。そして、東京大学の教養学部と法学部では、2016年度の推薦入試から、推薦書類の一例としてIB資格が盛り込まれました。
この他、慶応義塾大学、早稲田大学、上智大学、大阪大学、国際基督教大学、東京外国語大学、横浜市立大学などが国際バカロレアを入試に取り入れています。
そして、今後導入を予定している大学は、他に東京医科歯科大学、東京工業大学、北海道大学、東北大学、千葉大学、明治大学、法政大学、お茶の水女子大学、名古屋大学、広島大学、九州大学などです。
■海外大学の入試で広く活用されている
国際バカロレア資格は、有名な海外大学で入試の基準として採用されているほか、大学で単位認定される科目があることや、奨学金をもらいやすくなることもあります。ハーバード大学、コロンビア大学、カリフォルニア大学ロサンゼルス校では、HLで一定以上のスコアを修めていれば、単位を認定される制度があります。このようにして早く卒業できることもあります。
海外大学の入試で有利になるIBスコアは、学部やコースによって様々ですが、大学ランキング25位以上の大学ではスコア38以上が目安になり、42以上が望ましいとされています。
ハーバード大学やペンシルバニア州立大学では、国際バカロレアやアドバンストプレイスメントといった大学進学予備プログラムの習得を推奨しています。そして、ボストン大学やブラウン大学では、大学進学予備プログラムの成績が最重要とされています。
■DP取得者は海外難関大学への進学率が高い
入試におけるIBスコア目安は、ケンブリッジ(Cambridge)大学40~42点で、オックスフォード(Oxford)大学38~40点、キングス・カレッジ・ロンドン36~38点と言われています。
ガーディアン大学ガイド2011によると、イギリスにおけるIB取得者の進学先はトップ20大学への進学割合が44.2%と、比較対象群の2倍以上という結果でした。
また、2011年の調査では、DP取得者の米国アイビー・リーグ合格率は、全体の合格率より3~13%高いという結果でした。DP取得者の合格率(括弧内は全体 の合格率)は、ハーバード大学10%(7%)、ブラウン大学18%(9%)、コーネル大学31%(18%)となっています。
■終わりに
以上のように、国際バカロレアは、国内外での大学で評価され、学習過程において考える力をつけることができます。特に海外大学への進学や推薦入試・AO入試を視野に入れている方は、ディプロマ・プログラムに挑戦してみてみましょう。
参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/ib/「国際バカロレア日本アドバイザリー委員会 報告書 参考資料集(2014年4月)」


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