【英語教育の未来:小学校編③】英語教科化に取り組んでいる学校の生徒はどう変わったか?


photo07前回は、小学校での英語学習の「早期化」と「教科化」がもたらす影響を説明しました。今回は、小学校において、 「英語の早期学習」や、「英語の教科化」を実施している小学校や自治体を取り上げ、小学校での英語学習の「早期化」と「教科」を、子どもたち自身がどのように捉えているのかを検証します。

 

児童からも好評価を受けている、瑞穂市立生津小学校での英語学習

岐阜県瑞穂市立生津小学校は、英語教科化における先駆的な存在です。同校は、1994(平成6)年に文部省(当時)より「小学校における外国語学習に関する研究開発学校」に指定されて以来、英語教育に注力してきました。現在は、全学年において年間35時間の英語学習を実施。HRT(学級担任)、ALT(外国人指導助手)、JTE(日本人英語担当教員)によるチーム体制で指導に当たっています。同校の英語指導で特徴的な点は、児童に対する各教員ごとの評価領域を明確に区分していること。HRTは授業へ取り組む姿勢、ALTは発音、JTEは応答時の工夫などを、それぞれ分担して評価しています。また、中学校入学後の英語授業も見据えて、”filler”を身につけさせることにも注力しています。Fillerとは、「I mean/you know/really?/」といった、つなぎ言葉のこと。中学校において、英語授業のすべてが英語のみで展開されることも念頭に、より実践的な英語力を養成していると言えます。また、同校による6年次児童に対する調査では、9割以上が「英語活動の時間は楽しい」という前向きな回答をしています。

 

”多読”を中心に授業を展開する、府中市立府中第一小学校

公立小学校における英語活動といえば、英会話が中心となるケースがほとんど。しかし、東京都府中市立府中第一小学校は、”多読”に重きを置くという独特な方針で注目を集めている小学校です。同校において、全学年で英語活動での英文多読が開始されたのは、2014(平成26)年。同校校長である小島茂氏と、同じく東京都府中市にある私立校、明星中学高等学校教諭の鬼丸晴美氏の主導で導入されました。しかし、多読とはいえ、児童がただ黙々と英文を読み進めるような授業ではなく、先生と対話をしながら英文を読み進めることが中心。中学年では、シャドーイングも行いつつ、授業時間の半分程度は、児童一人ひとりが英文を読み進めるような授業構成になります。そして、高学年ではさらに児童自身が英文を読み進める時間が長くなる一方で、ALTも授業を担当するようになります。同校の取り組みは、開始されてからまだ1年ほどしか経過していませんが、すでに高学年を中心に、英検5級や4級に合格する児童も多くなりつつあります。
中学以降の英語学習では、どうしてもリーディングが中心となり、学校の成績評価や、高校入試、大学入試においてもリーディングの評価比重が高くなります。したがって、低学年から中学年にかけては英語に親しんでもらうことを優先し、高学年からは”多読”を重視する同行の方針は、小学校における英語教科化の価値あるモデルケースと言えるのではないでしょうか?

 

大阪府による「使える英語プロジェクト」事業から見る、英語教科化の課題

大阪府教育委員会は、2011(平成23)年度より「使える英語プロジェクト」を始動させました。同プロジェクトは3か年計画となっており、小・中・高等学校を対象に、子どもたちの英語力を育成し、教員の指導力向上を目的としたものでした。大阪府の取り組みにおけるポイントは、プロジェクト名にもある通り、「使える英語」に特化したこと。英語によるインタビュー、スキット、ALTとの英語によるコミュニケーションなど、より実践的なカリキュラムが特徴的でした。
本プロジェクトに関して2011年から2012年に行われた調査では、小学校での英語活動が楽しいと答えた児童が7割を超えている一方で、「中学校で英語の勉強をすることが楽しみ」と答えた児童は、5割ほどにとどまっています。また、授業をよりよく理解するために「先生にたずねる」という質問項目についても、肯定的な回答をした小学生は、4割台となっています。
大阪府におけるプロジェクトに関する調査結果からも、より学習内容が高度化する中学入学以後に備えて、小学校における英語教育では、英語学習に対する児童の関心をこれまでよりも高め、児童自身が自発的に学習できるような環境を整える必要があると言えます。そういった意味では、今このタイミングで小学校における英語教育を見直し、小学校での英語学習を教科化することで、従来よりも密度の濃い学習環境の構築を目指すことは、意味ある試みであると思われます。
一方で、英語教科化を実行した後においても、その効果や子どもたちに与えている影響を、しっかりと検証できる体制づくりを進めることも欠かせません。小学校教育の与える影響は、長期的な視点で調査をしなければ、正確な効果は検証できないはずです。その上で、英語教科化を開始して以降の数年は、生津小学校や府中第一小学校で導入されているような事例を参考に、各小学校が地域制や自校に通う児童の特性を加味した上で、最適な指導方法を展開できるような柔軟性を保つことが重要であると感じます。

 

参照元:
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/102/102_1/
http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20150222/201502220858_24369.shtml
http://ja.wikipedia.org/wiki/瑞穂市立生津小学校
http://www.gifu-net.ed.jp/kyoka/eigo/shougakkougaikokugo/Namazu21.pdf
http://www.mirai.ne.jp/~catfish/global/english/module.pdf
http://www.mirai.ne.jp/~catfish/
http://www.cosmopier.com/samplebooks/magazine201409/_SWF_Window.html?pagecode=16
http://miraikk.jp/cat-01/1177
http://opac.kansaigaidai.ac.jp/cgi-bin/retrieve/sr_bookview.cgi/U_CHARSET.UTF-8/DB00000433/Body/r095_14.pdf

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