【英語教育の未来:小学校編②】「英語教科化」がもたらす3つの影響とは?


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「英語教科化」が子供にもたらす3つの影響とは?

前回は、小学校での英語学習の「早期化」と「教科化」により、「小学校英語」は具体的にどう変わるのかを説明しました。 今回は「英語教科化」による子供達への影響を考えてみたいと思います。

 

指導教員の能力アップ=子供の英語力アップ

現在小学校での英語学習は、「学級担任」あるいは「担任+ALT(Assistant Language Teacher/外国語指導助手)」による指導が主となっています。
「英語学習の早期化」や「教科化」が実行されることで、指導時間が増え、指導内容も高度化されることになり、現場の教師の負担は増すばかりです。

そんな現状に対応するため、文部科学省は、2013年12月に公表した『グローバル化に対応した英語教育改革実施計画』の中で、指導体制の大幅な強化を提示しました。「英語教育推進リーダー」の養成、校内研修を担当する各校1名程度の「中核教員」の育成など、現教師の指導力向上へ向けてのバックアップ体制の充実を図るとともに、高度な英語指導力を備えた「専科教員」の確保の急務や、「外部人材」の積極的活用が謳われています。
国によるバックアップ体制の充実は、全体的な指導力の底上げにつながり、今後は「専科教員」「担任+ALT+外部人材」「担任+外部人材」などによる、より質の良い授業が期待できます。こうした指導力向上への取り組みが、子供達の英語力アップに貢献することは間違いないでしょう。
また、今まで実際おきていたような、英語ネイティブのALTと英語があまり話せない担任の先生が授業の打ち合わせをうまくできないといった事態も避けられるようになるでしょう。

ひとつだけ気になるのは地域格差の問題です。現在ALTなどの採用については、各地方自治体による自由裁量となっています。これが「教科化」後も継続すれば、地方自治体の予算の格差による英語教育の地域格差の問題も続いていくことになります。
例えば、2003年度に国から「英会話教育特区」の認定を受けた栃木県足利市では、全国に先駆けて小学校での英会話学習に取り組んできました。市内にある22校全ての公立小学校で学級担任と共に授業を担当するのは、第2外国語として英語を話す外国人も含まれる「英語活動協力員(EAA)」とネイティブスピーカーの(ALT)です。2013年度からは低学年を指導するEAAを10名から22名に増員し、各校専属の EAAを派遣しています。
一方、地域によっては、一人のALTが4・5校を掛け持ちして教えているところもあります。各自治体の予算格差は、そのまま英語教育の地域格差につながってしまうのです。

 

入試で高い英語力が求められる

入試への影響も見逃せません。小学校の「英語教科化」が実現すれば、英語が中学受験の入試科目になる可能性は大きいでしょう。そうなれば英語も関しても、他の受験科目と同様の「詰め込み学習」がなされるのではないかと危惧する声があります。

前出の『グローバル化に対応した英語教育改革実施計画』では、「高校卒業段階で英検2級から準1級、TOEFL iBT57点程度以上」の英語力を身に付けることや、大学入試においても4技能(読む・書く・聞く・話す)の測定を目指すことが掲げられています。今小学生のお子さんは、将来の大学入試にむけて「スピーキング力」向上を視野に入れた英語学習をされた方がいいかもしれませんね。

ところで、同実施計画に記載されている高校卒業時の目安TOEFL iBT 57点とはどの程度のレベルなのかご存知でしょうか?
下図をご覧下さい。TOEFL iBT(Internet-based test) は各スキル30点満点、総合120点満点、つまり57点というのは50%にも満たないレベルです。

<Skill Score Range>
[Reading 0–30]
・High (22–30)
・Intermediate (15–21)
・Low (0–14)

[Listening 0–30 ]
・High (22–30)
・Intermediate (15–21)
・Low (0–14)

[Speaking 0–30]
・Good (26–30)
・Fair (18–25)
・Limited (10–17)
・Weak (0–9)

[Writing 0–30]
・Good (24–30)
・Fair (17–23)
・Limited (1–16)

[Total Score 0–120]

(ETSサイトより抜粋)

ちなみに北米の公立大学進学には、学部レベルでも、最近はTOEFLiBTスコア90前後が必要です。こうしてみると、高校卒業時の目標レベルが低いのではないかと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、現状をみると、一概にそうとも言えないようです。

TOEFLiBT受験者の2013年のデータから作成したアジアの国別平均スコアランキングで、日本人になじみのある20か国を比較してみました。

【総合点ランキング】

総合順位 国名 Reading Listening Speaking Writing Total
1 Singapore 24 25 24 25 98
2 India 22 23 23 23 91
3 Pakistan 21 22 24 23 90
4 Malaysia 22 23 22 23 89
4 Philippines 21 22 24 23 89
6 South Korea 22 21 21 22 85
6 Sri Lanka 20 21 22 21 85
8 Bangladesh 20 21 21 22 84
9 Hong Kong 19 21 21 22 83
9 Nepal 20 20 21 21 83
11 Indonesia 20 21 20 21 82
12 North Korea 20 20 20 21 81
13 Taiwan 20 20 20 20 80
14 Bhutan 17 18 22 21 79
15 Vietnam 19 19 19 21 78
16 China 20 18 19 20 77
17 Thailand 18 19 19 20 76
18 Japan 18 17 17 18 70
18 Mongolia 16 18 19 18 70
20 Cambodia 15 16 19 19 69

 

【スピーキングセクションランキング】

総合順位 国名 Reading Listening Speaking Writing Total
1 Singapore 24 25 24 25 98
1 Pakistan 21 22 24 23 90
1 Philippines 21 22 24 23 90
4 India 21 23 23 23 91
5 Malaysia 22 23 22 23 89
5 Sri Lanka 20 21 22 21 85
5 Bhutan 17 18 22 21 79
8 South Korea 22 21 21 22 85
8 Bangladesh 20 21 21 22 84
8 Hong Kong 19 21 21 22 83
8 Nepal 20 20 21 21 82
12 Indonesia 20 21 20 21 82
12 North Korea 20 20 20 21 81
12 Taiwan 20 20 20 20 80
15 Vietnam 19 19 19 21 78
15 China 20 18 19 20 77
15 Thailand 18 19 19 20 76
15 Mongolia 16 18 19 18 70
15 Cambodia 15 16 19 19 69
20 Japan 18 17 17 18 70

 

20か国中、日本は総合点では18位、スピーキングセクションに限ってはなんと最下位、リスニングも下から2番目です。
英語に興味があるであろうTOEFLを受けるような層でさえこうなのです。日本中の子供達全体の英語力を上げるのは、まさに国家を挙げての一大プロジェクトと言っても過言ではありません。

指導力の向上、人材の育成、過去の英語教育の問題点を徹底的に洗い出し、日本人の弱点でもある「リスニング・スピーキング」を強化する効果的、かつ実用的な教材作成など、問題は山積みですが、将来国際的な舞台で活躍できるような日本人を育てるための抜本的な教育改革が真摯に求められています。

 

国際人としての意識の高まり

文部科学省が基礎データとしてHPに掲載している情報によると、英語を使っている人口は5億人以上です。これは2005年のデータのため、現在そして未来はさらに英語を使う人口が増えていきます。英語はすでに、ある国の言語という存在を超えて、グローバルの共通言語になりつつあります。

小学校での英語学習の「早期化」と「教科化」も、その傾向を表しています。グローバル社会に生きる、これからの子供達は、日本語、そして日本の伝統的文化・慣習・価値観などを学ぶことはもちろん大切ですが、国際人として、外国人とも対等に渡り合えるコミュニケーションの道具として、英語を身につけていく必要があります。

英語を身につけることで、世界中の情報にアクセスできたり、直接、外国人とコミュニケーションが取れるようになることで、世界中の多種多様な文化や価値観を理解できるようになります。

小学校の英語教科化が進むことで、小さい頃から、日本という枠を超えて、世界を意識して学び、育つ子供が増えていく可能性があります。

 

参照元:
文部科学省『グローバル化に対応した英語教育改革実施計画』
10分でわかる小学校英語教科化議論!【第3回】受験英語でスピーキング力も問われる時代に!?
Test and Score Data Summary for TOEFL® Internet-based and Paper-based Tests2013
TOEFL® Score Scales
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