今回ご紹介する本は、1949年にイギリスの作家によって生み出された小説です。この小説は、戦争が終わった4年後に出版されました。
Nineteen Eighty Four(1984年)
著者:George Orwell(ジョージ・オーウェル)
本では、全体主義国家によって分割統治された近未来世界の恐怖が描かれています。書かれている内容がまるで現実世界を描写したかのように的確に表現されているため、どの時代においても大人や子どもに関係なく、多くの人々に読まれている一冊です。
核戦争を経た1950年代、世界はオセアニア、ユーラシア、イースタシアという3つの超大国によって分割統治されています。この世界では至る所で紛争が勃発し、常に戦争が繰り返されています。
この作品のメインの舞台であるオセアニアでは、思想、言語、結婚など、全てにおいて統制されており、物資は欠乏し、さらに市民は常にテレビとマイクによって全ての行動を監視されています。
小説の中に、こちらの一文が書かれています。皆さんはどのような意味か分かりますか?
“A peace that was truly permanent would be the same as permanent war.”
「永遠に続く平和とは、永遠に続く戦争と同じである」
この世界では、言語も全てコントロールされており、毎日のように言葉の意味が交換されたり、新しい言葉が作られたり、言葉が元々持っている意味とは逆の意味を持たせたりすることによって人間の思想を狂わせ、人々をコントロールしやすいようにしています。このような世界で起こっている紛争ですが、実はこの3大国には戦争をする理由はないのです。しかし、戦争をすることで市民は戦争に没頭し、常に生死の境をさまよっていると、毎日を生き抜くことと相手国を憎むことだけに全てのエネルギーを注ぐようになります。すると市民は、この状況は永遠に続くものだと考え、自分達の置かれている世界に慣れてしまい、政府がなぜ戦争をしているかといった疑問を持たなくなります。そして、常に戦争をしているということは、逆にそれ以外の暴動は何も起きないということから「平和」であるという哲学を、コントロールしている側の政府が作ってしまったのです。
現代社会において、戦争が自分達の身近で起こっているものであると考えることは難しいかもしれませんが、他国で起こっている脅威を情報として知ることで、日本に住む人々は自分の国がいかに平和であるかということを認識します。しかし、実はそれが平和ボケの感覚を強め、自国の税金がある程度何に使われていようとも気にならないという「マインドコントロール」を促進しているのかもしれません。
この小説はどの時代においても、その時代の社会に潜んでいる問題を示唆しているのです。
物語を読むことを通して英語に興味を持つきっかけになると嬉しいです。
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