バイリンガル学習法セミナー

利根川教授インタビュー

ノーベル賞受賞利根川進教授に直接聞いてみた!    第3回 日本とアメリカの教育の違い。そして脳科学が行き着く先とは。

利根川教授は、1987年にノーベル賞を受賞するが、その前にスイスから再びアメリカに移り、現在でもMITで研究を続けている。ご家族もボストンで暮らしており、お子さんたちはアメリカで育っている。最終回は、日本とアメリカの教育の違いや、バイリンガル教育の是非、そして脳科学の行き着く先と教育の在り方などについて直接聞いてみた。


-最近日本では英語教育が加熱ぎみで、特に小さい頃からバイリンガルに育てようと、小学校に上る前からインターナショナルスクールなどに入れて、英語で子育てをしようとする両親が日本人のご家庭などもあります。利根川教授が、ボストンでお子さんを育てた経験からバイリンガル教育についてどのようにお考えでしょうか。

小さい頃から英語を学ばせることには、賛否両論あるわけで、特に母国語がしっかりとできるようになる前に英語を勉強しても、思考の基礎となる母語が出来なければ思考が広がらないという人もいるよね。実際に、バイリンガルの環境で育った子どもの方が、言葉を習得するのが遅くなるというレポートなんかもある。僕も子どもを育てるときに、両親がネイティブでないから、バイリンガルの環境では子供たちに悪影響があるんじゃないかと、相当悩んだ。でも、ある時子どもの行く学校の信頼できる先生と話をしていて、「この子たちがバイリンガルになることができれば、それは子供たちにとって大きなAsset(財産)になりますよ」と言われて、それはそうだろうと元気づけられた。CultureとLanguageは直結しているから、いろんなCultureの視点から物事を見れるようになったほうがいいというわけ。

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ノーベル賞授賞式で賞状とメダルをスウェーデンのグスタフ国王から受け取っているところ。

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ノーベル賞受賞利根川進教授に直接聞いてみた!    第2回 成功する人と遺伝子の関係。なぜ人は教育をするのか。

利根川教授の経歴を見ると実は意外な一面があることを知る。名門日比谷高校を卒業してから、京都大学に入学されているのだが、実はその間に1年浪人をしているのである。後にノーベル賞を受賞するような頭脳なら、大学入試は軽々と超えそうだと思ってしまうが、そうではなかったようだ。今回は、利根川教授の考える、科学者として成功するタイプの人間の特徴はなにか。またそれは後天的に得られるものなのか、遺伝子で決まっているものなのかを、ノーベル賞受賞者の利根川進教授に直接聞いてみた。


-教授のように偉業を成し遂げられる科学者は一握りだと思います。ビジネスやスポーツなどでも同じだと思うのですが、大きな発見をして成功する科学者と、そうでない科学者はどのような違いあるのでしょうか。

Scienceっていうのは、実験の大部分はうまくいかない。あるとき閃いた仮説を長い時間かけて実験をして証明するわけだけど、1年かけて実験しても、面白い話にならないようなことがある。むしろそれが普通。失敗に失敗を重ねて、ずーとああでもないこうでもないと同じことを考えている。成功している人っていうのは、ちょっとCrazyなくらいにOptimisticだね。どんなに失敗しても一晩寝たらまたけろっとして、研究を続けているような人。こっちから見ると「お前そんなに大変なのに、よく頑張っていられるな」というようなぐらいの人だよ、大体。

Persistent(執着心がある)って言ったらいいか、1つのことに強く執着してやっている。例えばニュートンなんかも、もともと天才かもしれないけど、大変な努力もしている。大切なことは、本人は努力をしていると思っていないというところ。好きなことをしているからスイスイとやっていて、努力していないように見えるけれども、本当は大変な努力をしている。

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コールド・スプリング・ハーバー研究所のジェームズ・ワトソン(James Dewey Watson)所長と

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ノーベル賞受賞利根川進教授に直接聞いてみた!    第1回 英語の話、留学の話。MITピカワ研究所所長が実践している英語学習法とは。

利根川進教授と三石郷史
(右:利根川進教授、左:インタビューアー三石郷史)

まっすぐな方である。自分も人も騙すことがない口調や視線は、真実を追い求めるサイエンティストの性分だと言えるかもしれない。きっと、この性格であったからこそ、科学者として成功されたのだろう。

利根川進マサチューセッツ工科大学教授。抗体遺伝子において遺伝子の組み換えが起こることを発見し、無数にある病原に対抗する抗体の多様性が、どのようにして生み出されるかを解明して、1987年にノーベル医学生理学賞を単独受賞する。

利根川教授が、ノーベル賞に至るまでの道筋は、立花隆氏との共著『精神と物質』や日経新聞に掲載された「私の履歴書」で読み知ることができる。京都大学を卒業後、カリフォルニア大学サンディエゴ校にて博士号を修得する。その後ビザの問題でアメリカで研究活動を続けることが難しくなり、職を日本かカナダかに求めていたところ、スイスのバーゼル免疫研究所から声がかかり、スイスに研究の場所を移すことになる。結果的にここでの研究が後のノーベル賞につながるのだが、実は利根川教授の博士号は分子生物学で、受賞の対象となった研究の免疫学は、スイスに移ってしばらくするまでは専門外であった。それでもスイスに移り、免疫の研究を始めるという大きな冒険が、大きな成果をもたらすことになった。

利根川教授の生きてこられた軌跡は、冒険心に満ちて人生を切り開いていこうと考えている若い世代には、大きな励みとなるだろう。そして海外にいながらも、母国を憂い、MITという科学の最先端の場所から、我々に檄を送るかのように研究に取り組まれている姿には、勇気をもらう。幸運にも利根川進教授に、彼の研究室があるMIT内のピカワ研究所でインタビューすることができた。今回から全3回にわたって、利根川教授へのインタビューを掲載したいと思う。利根川教授のインタビューとなると、普段は科学のことが中心だが、今回はキャタルのために、いつもは聞けない英語の勉強法や、脳と教育の関係などについて貴重な話を聞くことができた。

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